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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (桜) 83

 どうやって、ホテルに戻ったのか、小枝子には記憶がなかった。

 睡魔も手伝って、ほとんど意識がなく、ぼんやりと、聖凛に支えられて歩いたような気がするだけだ。或いはほとんどの行程をタクシーを使ったのかもしれない。

 小枝子は、聖凛の腕の中にいることに安心し切っていたのだろう。
 ただ、彼が耳元でささやく言葉だけで動いていた。

「小枝子、そこ、段差があるから気をつけて。」
「ほら、降りるよ、身体を起こして。」

 そういう言葉を僅かに覚えている。

 部屋に戻って、自分で脱いだのか脱がせてもらったのか、下着姿でベッドにもぐりこんでいたことを、翌朝知った。



 その朝はしっとりと静かな春雨が朝からしとしとと降り続いていた。

 となりに人の気配がないことに不安になって、小枝子は目を覚ました。そして、はっと身体を起こして見ると、聖凛のいたはずの場所は、まだ温かいくぼみが残っていて、ほんの今しがたまで横になっていたことを物語っている。

 よく耳を澄ませば、シャワーの音が聞こえていた。
 それにほっとして、そして、そういう自分の感情に小枝子は多少、茫然とする。

「そうか。・・・私、聖凛がそばにいることが、当たり前になっていたんだ・・・。」

 いつから?
 小枝子は思う。

 恋人というよりは愛玩動物(ペット)に近い扱いに、言うことを聞けばご褒美がもらえると躾けられた仔猫さながらに、ご主人が恋しいのだろうか。

 なんとなく、他人事のように考えながら、何か引っ掛かり続けていることを否応無しに感じる。
 そんなことじゃない、もっと奥に大事なことがある。
 それがあるから、小枝子は、聖凛にどうしても逆らえない。どうしても、逃げられない。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

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