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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (守護) 75

 その年、9月で小枝子は20歳になる。成人だ。
 聖凛の封印の力も、そして、小枝子の曾祖母の最後の術、守護の力もそこで潰える。



 その、意味するもの。



 隆一は、聖凛の過去を辿り、伝承を辿り、彼を破滅させるべく動いていた。しかし、意図的に抹消された記録がその行く手を阻む。どんなに古い伝承を辿っても、あるところでぷっつりとその糸口は絶たれてしまうのだ。

 それでも隆一は諦めなかった。真実に辿り着くことが小枝子を救うことだと信じて。
 何故、こんなにも彼女に惹かれたのか、隆一には分からない。
 小枝子の、どこか神秘性を漂わせる空気に、懐かしい匂いを感じたのだろうか。
 何か使命のようなものを感じて、彼は突き進む。



 あれ以来、月の半分くらいを聖凛は小枝子の部屋で過ごすことが多くなった。

 小枝子は、聖凛の存在はもうさほど違和感なく受け入れてしまい、滞在する間、彼はよく食事の支度を手伝ってくれた。時々、隣の奈々子が訪ねてきて一緒に夕食を取ることがある。彼女は、料理を作ってくれる彼氏が羨ましい、とよくこぼしていくのだ。

 二人の中に何も知らない他人が入ると、その場の空気は一段、緩む。小枝子にとっての緊張感、のようなものは変わらないのだが、聖凛の態度が、学内で見せるようなどこか柔らかい、それでいてクールに他人と距離を取るスタンスに入るのだ。

 小枝子は、聖凛と奈々子のいかにも親しい友人同士という会話に微笑む。
 なんだか、そうやって、良い時間を三人で共有する。

「そういえば、旅行へ行こうって約束してたね。」

 ある夜、シャワーを浴びた髪の毛を拭きながら、聖凛は窓の外の細い月を眺めて言った。

「旅行・・・?」

 そういえば、そうだった、と小枝子も思い出す。年が明けたらどこかへ行こう、と言ってくれたことを。
 彼女は、キッチンのテーブルで、課題の資料を調べていた。

「もすぐ春休みに入るし、出かけて来ようか。」

 レポートの課題がまだいくつか残っているけど・・・、と小枝子はちょっと首を傾げたが、聖凛に対して異議を申し立てる勇気もない彼女は、結局、頷いた。

「3月の終わりから4月にかけては、桜の開花はどの辺まで進むかな。」
「東京くらいまでは、もう咲くんじゃ・・・。」
「桜の名所巡りでもする?」

 振り返った聖凛の柔らかい笑顔に、小枝子の心臓はどきりと音を立てる。彼の本性を知っているはずなのに、どうしてか、その笑顔も彼の本当の姿だと、小枝子は思いたいのかもしれない。

「・・・うん。」




(※最初から読む:アダムの息子たち 1
(※50に戻る:アダムの息子たち 50



 
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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

~ Comment ~


奈々子の天然な感じが良いですね。
三人でいると小枝子もちょいほっとできるのかな。

隆一が影で動いているようですが、何を掴むのかに少しだけ期待。
まあ、何かを掴んだからといって、聖凛は全く動じないでしょうが。

二人で旅行。どちらへ?

#2070[2012/04/29 11:00]  けい  URL 

けいさまへ

けいさん、

> 奈々子の天然な感じが良いですね。
> 三人でいると小枝子もちょいほっとできるのかな。

↑↑↑おお、奈々子さんい言及いただいたのは初めて・・・ ですかね。
けっこう好きです、彼女。
どっか保護者役っぽくて(^^)

> 隆一が影で動いているようですが、何を掴むのかに少しだけ期待。
> まあ、何かを掴んだからといって、聖凛は全く動じないでしょうが。

↑↑↑その読み、当たっている気がします。
はははは。

> 二人で旅行。どちらへ?

↑↑↑はい、さっさと出かけりゃ良いのに、まだ少しモタモタしてます(ーー;
#2071[2012/04/30 06:58]  fate  URL 














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