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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (休息) 73

 昼過ぎにすっきり目覚めた小枝子は、食事の支度をしている、ここ一週間見慣れた聖凛の後ろ姿に、どこかほっとする。

「起きた?」

 聖凛は振り返らずに声を掛けた。
 彼の、気配を感じ取る敏感さにはいつも驚かされる。小枝子は、うん、と頷いてゆっくりと身体を起こす。いつの間にか、ガウンを着せ掛けられていた。

 ひりひりと焼け付くように喉が渇いていた。小枝子は、なんとかベッドからおりて、ふらふらと冷蔵庫へ向かう。聖凛の調理している台の手前にテーブルがあり、その脇に冷蔵庫があるのだが、小枝子は一歩一歩が辛く、壁に寄りかかりながらの移動だ。

「飲み物なら、テーブルの上にあるよ。」

 聖凛はふらつく彼女の身体を抱きとめて、テーブルに手を伸ばし、グラスに入ったスポーツドリンクを差し出す。重い手を持ち上げて、それを受け取ろうとした小枝子の目の前からグラスをさっと引いて、彼は不敵な笑みを浮かべる。

「口移しで飲ませてあげようか?」

 ぼんやりと聖凛を見上げて、小枝子は、もう、何も考えが浮かばずにこくりと頷く。

 聖凛はくすくす笑いながら、冗談だよ、とグラスを彼女の口元に持っていった。彼にグラスを支えてもらいながら、小枝子はグラスの液体を飲み干す。

「食事、出来る?」

 小枝子の身体をふわりと抱き上げて、聖凛は微笑む。昨夜のぞっと冷たい笑みとは違う、手の中に在る者への労わりの微笑だ。

「・・・うん、ありがとう・・・。」

 どこか曖昧な、不思議そうな表情で聖凛を見上げる小枝子を一旦ベッドへ戻して、聖凛は笑って言った。

「バカだね、小枝子。本当に君を壊す気だったら、イカせてなんてあげないよ。あんなに追い立てたら、あっという間に気を失ってしまうことくらい分かってる。もっとたっぷり時間をかえて、狂いそうなほどじらして、自分から壊して欲しいって言わせるまで執拗に追い詰めるよ。・・・今度、ゆっくり実践してあげるから、楽しみに待ってな。」

 本気とも冗談ともつかないねっとりとした笑みで、聖凛は小枝子の唇に軽いキスを落とす。

 今すぐガウンを剥ぎ取られ、昨夜の続きだと抱かれても、小枝子はもう抵抗する気力もなかった。この後に及んで、誰かに助けを求める気も、逃げ出す気にもならない。

 むしろ、これ以上誰にも関わってきて欲しくはなかった。
 何故、そんな風に感じるのか?
 自分以外の誰かの意思に操られているようだった。

「小枝子、起きて。食事はベッドまでは運んであげるから。」

 ぼうっと聖凛の立ち働く姿を眺めている内に、彼は数種類の皿をお盆に乗せて彼女の方へと運んできた。小枝子ははっとして身体を起こし、彼が簡易的に整えてくれたテーブル代わりの椅子の上のディッシュに視線を落とす。

 相変わらず見事な出来栄えだ。
 色とりどりの野菜、白身魚の煮物、そして根菜の鶏がらスープ。

「・・・すごいね。」

 小枝子の感嘆の呟きに、聖凛は笑う。

「外で食べた食事の味を覚えていれば、なんとか見よう見真似で出来るもんだよ。」

 そういえば、聖凛は、ああいう高級レストランで食べ慣れているようだったな、と小枝子は思う。

 ゆっくりと、食べ物を口へ運びながら、小枝子は、次第に自分が考えることを諦めていることを知る。すでに、心まで捕らわれ始めているのか?自分で判断をしようとしなくなり、言われるまま、彼の命令通りに動いているに過ぎない。

 こうやって、時折見せる優しさは、支配者側の気まぐれなのだ。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

~ Comment ~


しっと。

いいなあ。支配者の気まぐれ。
fateさん、どうしましょ。小枝子に嫉妬中です^^
(私と言う人間は、登場人物を好きになって初めて、その物語に熱中するのだと、最近気付きました)
一作品読むごとに、恋をするのです。
だから・・・怖い人ばかりが出てくる『悪人』という映画を、最後まで見ることができませんでした^^;

隆一くんが動き出しましたね。嫌な予感・・・。
「本来は存在しない人間だ」ってことばが、やけに悲しいですねえ。
まだまだ、何の予想も立ってはいませんが、ゆっくり追っていきます♪
#481[2011/11/11 21:10]  lime  URL  [Edit]

Re: しっと。

limeさん、コメントありがとうございます。
っていうか、危ない! 危ないですよ、limeさん! 聖凛はヤバいですって!
なんて(^^;
何気に、聖凛って、fateも憧れかも。 いや、むしろ、fateの場合は‘聖凛’になりたい、方ですが。(←そっちの方がヤバいだろ(--;)

でも、物語に恋するって分かります。
fateも景色にさえ恋しますから。圧倒的な自然の前に立ったときなど!
『ターミネーター』のサラ・コナーとか『ダイ・ハード』のマクレーン刑事役のブルース・ウィリスとか、『猫の恩返し』のバロンとか。(性別も種別もバラバラって…fateってやはり人間ではないんでは…)

『アダム~』については、語ると要らんことまでしゃべくる可能性があるので、黙しておきます(^^;
いつも、素敵なコメントありがとうございます!

#485[2011/11/12 06:49]  fate  URL 

小枝子は生命力みたいなものが抜け落ちている、と感じました。
もしや聖凛に生気を奪いとられてるんじゃないか!?
あ、いや、そうか。忘れてました。
「聖凛が小枝子に施した呪術的な縛り」があることを。

>もう、俺を捨てないで

というこれは、聖凛の孤独から出てきている叫びでしょうか?
長い時間、年をとらずに一人で生きてきた孤独の?
小枝子が生まれる以前に、小枝子に関係あるなんらかの存在と、聖凛はデキていたんでしょうかねぇ。

うーむ、これはまた新しい展開になってきましたね!
小枝子、母性に目覚めたか!?
今までのヒロインにはない反応…。

↑ここらへんから小枝子へのイライラがなくなってきた!!

うーん、どうもまだ聖凛がどういう男なのか見えてこない…

おおぉぉぉ!
『ターミネーター』のサラ・コナー、西幻も大好きです!
『2』のほうが好きですけど…
ああ、あの肉体美(はぁと
#944[2011/12/16 04:28]  西幻響子  URL  [Edit]

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#945[2011/12/16 04:30]     

西幻響子さまへ

西幻響子さん、

> >もう、俺を捨てないで

↑↑↑良いですなぁ、ここに着目するとは!
ふふふふふ。
これは、いずれ分かります。

> おおぉぉぉ!
> 『ターミネーター』のサラ・コナー、西幻も大好きです!
> 『2』のほうが好きですけど…
> ああ、あの肉体美(はぁと

↑↑↑そっちかい!(^^;
いやぁ、しかし、あれは衝撃的な輪廻のstoryでしたね。
正直、fateは2以降の作は蛇足~(-"-* だと思ってました。
が、何故か家に「ターミネーター2」の英語版があり、冒頭の数ページだけ読んで挫折した記憶があります…。

この世界『アダム~』に関しては、何気に語ると余計なことをしゃべくるので、黙しておきます(--

#952[2011/12/16 09:07]  fate  URL 

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#955[2011/12/16 13:02]     














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