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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (嫉妬) 69

 電話の相手の声は聖凛には聞こえていないはずなのに、彼は何もかも知っているような瞳をして、ただ小枝子を見つめている。言葉を失って、小枝子はそのまま動けずにいた。

「おいで、小枝子。まだ、途中だったよ?」

 聖凛の静かな声からは、その胸中は量れない。だけど、彼が心中穏やかざることだけは、小枝子には分かった。彼を取り巻くオーラが不穏な色を宿していることを。

「桜庭は、ここに俺がいるって気づいてるんじゃないかな?」

 ぐい、と小枝子を腕に抱き、聖凛は笑う。その瞬間、彼の腕から伝わる冷気に小枝子は全身が凍りつく。

「・・・そ、そんなことは・・・」
「そんなことは?」
「・・・あの・・・」

 ざわざわと背筋に寒気が走る。頭の奥で警鐘が鳴る。小枝子は本能的な恐怖に僅かに逃れようともがく。その途端、聖凛はどさりと小枝子の身体をベッドに押し付け、組み敷いて自由を奪う。

 悲鳴をあげかけた小枝子の口を強引にふさぎ、つかんだ両腕に力をこめていく。
 腕の痛みと、深すぎるキスに、小枝子はもがく。

「何をそんなに怯えてるの?小枝子?」

 唇を離して、聖凛はぞっとするような低い声でささやく。

「当ててみせようか?君が何を考えていたのか・・・?」
「な・・・何も・・・」

 小枝子の声は細く苦しげだ。一切の救いは絶たれているのが分かっても、僅かの可能性を求めて水面の藁をつかもうとする。

「壊してあげても良いよ?小枝子。その方がむしろ君は楽になるんじゃないかなあ?俺も、こうやって毎日見張る必要がなくなるし?・・・そうだね、丸一日もあれば、充分じゃないかな?」

 これ以上ないくらいの、柔らかな優しい笑顔で、聖凛はそれ以上ないおぞましくも残酷なことをさらりと言葉にする。

「っ!・・・イヤ・・・!」

 今にも消えそうな憐れな声で小枝子は精一杯の許しを請う。

「許して・・・、聖凛。お願い・・・。お願い、します。・・・いやぁ・・・っ」

 聖凛は答えない。つかんでいた手首から、するすると手の平までを撫で、指を絡める形で小枝子の小さな手を彼の手の中に収める。触れ合う手の平が熱かった。

「怖がることはないよ、小枝子。どうせ、君は俺の手の中だ。今さら・・・だろ?」

 もう、言葉もなく、小枝子は涙の浮かぶ瞳で必死に首を振り続ける。

「意識のカケラも残らないくらい、綺麗に壊してやるから心配しなくて良いよ。・・・そう、俺の命令でだけ動けるように、この身体も隅々に刻み込んであげる。俺の支配の痕をね・・・。」

 舌なめずりをするライオンさながらに、聖凛は唇をぺろりと舐める。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

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