実家で過ごした最後の日、小枝子は、遊びに来た恭子と久しぶりに他愛ないおしゃべりをして過ごした。
「小枝子、少し雰囲気変わったね。」
「ええ???・・・どういう風に?」
「う~ん、何て言うのか・・・昔からしっとりしてたけど、今度はもっと人間離れしてきたというか。」
「・・・どういう意味?」
小枝子は幾分唖然として幼なじみの顔を見つめる。彼女は、女ばかりの4人姉妹の3番目の子だ。彼女ら姉妹は揃って丸く幼い顔立ちをしている。色白の小枝子と並ぶと日本人形の展示会のようだ。
「なんか、神々しいというのかな。オーラの色がどんどん透明になっている気がする。」
「見えるの?」
「ううん、見えない。」
恭子は笑った。
「小枝子、何か、あったでしょう?」
ビスケットをつまみながら、恭子は幼なじみの顔を覗き込む。くるくるの黒い瞳は不躾に小枝子の視線を捕えて離さない。
「・・・な・・・何か、って?」
「不倫の恋をしてるとか、三角関係に悩んでいるとか、処女を失ったとか、そういう類のこと。」
「な・・・っ、ななな、なんで?」
「やっぱり。」
恭子は赤くなってうろたえる小枝子の様子を見て微笑んだ。小枝子自身、何故、自分がどぎまぎしているのか分からない。昨夜の情事を思い出してしまったからなのか、聖凛がほんの時たま小枝子にだけ見せる甘い笑顔が浮かんだからなのか。
こ、これじゃ、まるで私が聖凛に恋でもしてるみたいじゃない・・・。
「なんか、あまり順調じゃない‘恋’なのね。」
少し神妙な表情になって、恭子は心配そうに言う。
「だ、だからっ・・・どうしてそうなるの?違うよ。」
「良いのよ、小枝子。私は別にあなたが犯罪的な恋をしてたって、応援する心積もりはあるんだから。」
「・・・犯罪的な恋ってどんなの?」
「殺人犯と恋をしてるとか、伯爵夫人の婿養子を寝取って、命を狙われているとか・・・。」
小枝子は恭子の言葉に笑い出す。
「どうしてそんなことが思いつくの?」
二人でひとしきり笑い、なんとなく、話がそれた。しかし、小枝子の心には恭子に言われたことが少し残って引っ掛かり続けた。
雰囲気が変わったね、と彼女は言った。
そして、それは聖凛との関わりが彼女にもたらしたものに違いないのだ。
それは、何だろう?
‘恋’だとは、小枝子は思っていない。身体の変化?処女を失ったことの?そんなものが何か目に見えるのだろうか?
違う。心の変化、の方だ。新たに何かの要素が加わったというよりも、小枝子の奥底に眠っていたものが目覚め始めている。そういう気がした。
「小枝子、少し雰囲気変わったね。」
「ええ???・・・どういう風に?」
「う~ん、何て言うのか・・・昔からしっとりしてたけど、今度はもっと人間離れしてきたというか。」
「・・・どういう意味?」
小枝子は幾分唖然として幼なじみの顔を見つめる。彼女は、女ばかりの4人姉妹の3番目の子だ。彼女ら姉妹は揃って丸く幼い顔立ちをしている。色白の小枝子と並ぶと日本人形の展示会のようだ。
「なんか、神々しいというのかな。オーラの色がどんどん透明になっている気がする。」
「見えるの?」
「ううん、見えない。」
恭子は笑った。
「小枝子、何か、あったでしょう?」
ビスケットをつまみながら、恭子は幼なじみの顔を覗き込む。くるくるの黒い瞳は不躾に小枝子の視線を捕えて離さない。
「・・・な・・・何か、って?」
「不倫の恋をしてるとか、三角関係に悩んでいるとか、処女を失ったとか、そういう類のこと。」
「な・・・っ、ななな、なんで?」
「やっぱり。」
恭子は赤くなってうろたえる小枝子の様子を見て微笑んだ。小枝子自身、何故、自分がどぎまぎしているのか分からない。昨夜の情事を思い出してしまったからなのか、聖凛がほんの時たま小枝子にだけ見せる甘い笑顔が浮かんだからなのか。
こ、これじゃ、まるで私が聖凛に恋でもしてるみたいじゃない・・・。
「なんか、あまり順調じゃない‘恋’なのね。」
少し神妙な表情になって、恭子は心配そうに言う。
「だ、だからっ・・・どうしてそうなるの?違うよ。」
「良いのよ、小枝子。私は別にあなたが犯罪的な恋をしてたって、応援する心積もりはあるんだから。」
「・・・犯罪的な恋ってどんなの?」
「殺人犯と恋をしてるとか、伯爵夫人の婿養子を寝取って、命を狙われているとか・・・。」
小枝子は恭子の言葉に笑い出す。
「どうしてそんなことが思いつくの?」
二人でひとしきり笑い、なんとなく、話がそれた。しかし、小枝子の心には恭子に言われたことが少し残って引っ掛かり続けた。
雰囲気が変わったね、と彼女は言った。
そして、それは聖凛との関わりが彼女にもたらしたものに違いないのだ。
それは、何だろう?
‘恋’だとは、小枝子は思っていない。身体の変化?処女を失ったことの?そんなものが何か目に見えるのだろうか?
違う。心の変化、の方だ。新たに何かの要素が加わったというよりも、小枝子の奥底に眠っていたものが目覚め始めている。そういう気がした。
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