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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (魂の叫び) 60

「小枝子、俺の子どもを生んでくれるよね?」

 小枝子は、半分夢の中で聖凛の声を聞いていた。彼の腕の中で、小枝子はゆらゆらとまどろむ。

 ぐったりと指先一本動かすことも億劫な小枝子の身体を抱き寄せ、聖凛は全身で絡みつくようにその細い肢体を包み込む。

「君が、・・・欲しい。」

 搾り出すような切ない声に、小枝子は胸の奥が疼いた。

 どうしたの?と彼女は思った。いつも、支配者然として、冷徹に私の身体を抱くくせに・・・?私の意志など、初めから一切考慮に入れてないくせに・・・?

 小枝子は、そう考えながら、では、自分はそれに対してどんな抵抗を示し、どんな手を考え、対処しようとしてきただろう?と斜め上から自分を眺める。

 それを、受け入れてしまっていたのは、自分じゃないのか・・・?
 もう、とっくに私はあなたの腕に堕ちているのに・・・。

「もう、俺を捨てないで。」

 ぎゅっと心臓をつかまれた気が、した。
 母親にすがりつく子どものような、悲しい声。

 小枝子の胸に顔を伏せた聖凛の気配を感じる。思わず、重い腕を引き剥がすように持ち上げて、その頭をそっと抱いてしまった。

 どうしたの?聖凛・・・?
 腕に抱く温かい人のぬくもり。

 生まれたばかりの赤ん坊をそっと抱く感触に似ていた。
 どうして、そんなことを・・・?



 翌朝、目覚めると、いつもの通り、聖凛の気配は消えていた。

 ブルッと寒気を感じて窓を見ると、朝日が差し込む窓のカーテンの隙間から、すうっと風が舞い込み、窓が少し開いていたことを知った。

 ああ、そうか・・・。小枝子はようやく知った。
 昨夜、誰かに呼ばれた気がした、んじゃない。呼ばれた声を、実際に聞いたのだ。

 明け方近くまで聖凛と抱き合っていた身体が、まだ温かかった。そして、あの深い絶頂の余韻が身体の奥に残っている気がした。

 その熱い余韻と共に、聖凛の切ない声が耳に響く。

 ‘もう、俺を捨てないで・・・’

 初めて、彼の声を聞いた、気がした。

 どういう意味だろう?と思うよりも。それがすべての原点、すべての始まりだったのだ、と直感した。
 聖凛が執拗に小枝子に固執し、初めから逃げ場をすべてふさいで支配しようとしたことも。


 
 まだ、散らされた紅い花は薄くなって全身に残っている。

 昨夜の自分の姿を思い返すと、小枝子は全身が真っ赤に染まるほど、羞恥を感じる。あのままじらされ続けていたら、間違いなく小枝子は自分から「イカせて欲しい」と聖凛にすがりついていただろう。

 ‘それで、君はどうしたいの?いわれのない‘恨み’から逃れたい?それとも、その人の心をなんとか救ってあげたい?’

 加賀見の言葉が不意に過ぎった。



(※最初から読む:アダムの息子たち 1
 


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

~ Comment ~


こんにちは

ここまで読んできて、やっぱりさらに、聖凛が哀れで、
そして、小枝子にちょっとムッ。

何でかなぁ・・・と思ったんですが。
小枝子の「被害者意識」にあるんだろうと。
自分は聖凛の愛撫に溶けている癖に、つねに怯えてうわべで拒んで、自分を憐れむ。
う~ん、そして、ちょっと小枝子に嫉妬かな^^
きっと、男性が読んだら全く別の見方ができるんでしょうね。

fateさんの目論見とは違う感情を持ってしまったかもしれませんが、そんな感じで、楽しんで読ませてもらっています^^
聖凛らぶです。
#442[2011/11/09 13:37]  lime  URL  [Edit]

Re: こんにちは

limeさん、おお! なんだか感動的な感想コメントをありがとうざいます!

実は、一部の女性読者さまには聖凛は人気ありました。
(同じように、『永遠の刹那』の静は男性読者に嫌われます・・・(^^;)
fateは「ええ???」とちょっとびっくりしましたが、すんげー嬉しかったです。
limeさんのコメント、感じ方は、恐らくいつもfateと一緒かも知れません。『虚空の~』にいただいたコメントにも実はものすごく新鮮に驚き、感動しておりました。

今後、「その理由」が明かされます。
珍しく、これは、けっこういろいろあるんです。…う~ん、そうでもないか?
どっちだよ!!! って感じですが、まぁ、結局はfateはぬるいので、あ、それだけ? で終わる可能性も・・・(^^;

#452[2011/11/09 19:09]  fate  URL 














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