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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (年越し) 53

 実家で迎える年越し。

 除夜の鐘も初日の出も、今年は何も参加せず、小枝子は家でじっとして過ごすことにした。両親と姉は毎年の習慣通り、大晦日の夜中近く、いつもの神社へ向かった。そして、そのまま初詣を済ませ、初日の出のスポットで乾杯をして帰ってくる。それが、二人が生まれる前からの家族の習慣だった。

 年明けすぐに試験があるし、レポートの期限が迫っているから、と小枝子はちょっと残念そうに断ったのだが、彼女自身、何故、家族に心配を掛けてまで一人家に残ろうと思ったのか、実はよく分からなかった。

 出かけることに対して不安があったのか。
 精神的にも体力的にも、疲労がたまっていたせいなのか。

 いずれ、小枝子は、家族が出かけたあと、一人でゆっくりお風呂に浸かり、パジャマに着替えて一人部屋でテレビを観ていた。星の瞬きがうるさいくらいの、澄んだ夜だった。

 不意に、玄関の呼び鈴が鳴り、小枝子はぎくりと身体が強張る。
 こんな夜中に・・・?

 しかし、泥棒の類がわざわざ呼び鈴を鳴らしたりはしないだろう、と小枝子はどきどきしながらもそっと二階の部屋の窓から外を見下ろす。

 見慣れない車が一台、ライトを点けたまま家の前に停車している。

「・・・誰?」

 呟いて身を乗り出すと、それに気付いたのか、玄関先の人物は窓を見上げて手を振った。

「恭子・・・?」

 それは、同じ年の幼なじみだった。
 小枝子は嬉しくなって、階段を駆け下りる。
 扉を開けると、懐かしい顔が微笑んでいた。

「さっき、おじさん達に会って、あれ?小枝子は一緒じゃないの?って聞いたら、家で一人寂しく勉強してるって言うから。」

 恭子は、差し入れ、と言ってスーパーの袋を差し出す。中にはペットボトルの飲み物と、甘いお菓子が数種類入っていた。

「わあ、ありがとう!あがって行って?」
「え?でも、勉強中なんでしょ?」
「・・・うん、まあ。でも、久しぶりだし。」

 心細かった小枝子は、久しぶりに親しかった友人の顔を見てほっとする。恭子は、しっかりピンクのコートを着込んで、マフラーもふわふわと襟元に踊っている。今からどこかへ出かけるといういでたちだ。

「休み、いつまで?また改めて来るよ。」

 恭子は少し申し訳なさそうに目を伏せ、そして、小枝子を見つめるとにこっと微笑む。

「あたしも、これから神社へ初詣なんだ。」

 そう言って、振り返った車の運転席には人の姿があり、小枝子は、ああ、そうか、と思う。

「彼氏?」
「うん。」

 はにかむように頬を染めて微笑んだ友人を小枝子は少し羨ましそうに見つめる。

「そっか。混んでるだろうから、気をつけて。私は3日頃までいるよ。遊びに来て?」
「うん、必ず。」

 恭子はそう言って、手を振って去っていく。そして、彼女が車の助手席に乗り込み、その車が軽くクラクションを鳴らして去っていく様子を小枝子は玄関先に佇んだまま見送った。

 明かりがすっかり遠ざかり、闇に戻った空を見上げると、瞬く星が賑やかに煌いている。

 ブルッと寒さに身を震わせ、玄関の扉を閉めようとしたとき、不意に闇の中から人影が現れ、小枝子は息を呑む。その、真っ黒な姿に、はっとした。

「・・・聖・・・凛?」

 彼は、驚く小枝子を一緒に扉の中に押し込め、玄関の鍵をかちゃりと閉める。

「ど・・・どこ、から?・・・どうして、ここが・・・」

 あまりに驚いて、小枝子は恐怖を忘れてただ彼を見上げた。
 



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

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