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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (デート) 46

 その日、それは幾度目かの新月の夕刻。
 それが新月の日だと、彼女には意識はなかった。ただ、月の満ち欠けは女性の生理と関連があるのか、小枝子には月の‘気’がとても弱くなっていることを感じることが出来た。日ごとに形を変える月を、小枝子は幼い頃からよく見上げている子だったと母は言っていた。

 講義が終わって、講堂を最後に一人出てきた小枝子が、人影に気づいてふと顔をあげると、出入口の壁に背を預けて聖凛が立っていた。

 小枝子ははっとして身がすくむ。構内で彼が小枝子に近づくのは大抵警告を伝えるときだ。
 いつもは思い当たることがあったが、今日は身に覚えはない。それでも知らずに知らずの内に、何か彼を怒らせたのだろうか?と小枝子は怯える。

 知らなかったのだと言って、許されることなのだろうか?
 彼は小枝子の姿を認めると、ついておいで、という風に手を動かしてくるりと向きを変えて歩き始めた。

「・・・え・・・?」

 彼女はさっさと歩きはじめる聖凛を茫然と見つめ、そして慌てて後を追う。もう、それはほぼ無意識の反射行動だ。聖凛は背が高い。つまりは足が早い。小枝子はともかく見失わないように必死に後をついていく。

 その二人の様子を、周りの女性とが怪訝そうに見つめているのに、小枝子は気付かない。
 彼は校門を出るとすっと小枝子を振り返った。
 突然立ち止まって自分を見つめる彼に、びくりと身体が硬直し、小枝子は青ざめる。

「あ、あの・・・」

 立ち止まった彼をそうっと見上げながら、小枝子は自分のそれまでの行動を一生懸命思い出そうとする。一体何が彼の誤解を招いたのだろうか?

 泣きそうな表情をしている小枝子の手を不意に握り、聖凛は、今度はゆっくりと歩き始める。手を引かれるままに彼の歩調にあわせる小枝子は、どこかぽかんとしたまま彼を見上げた。その呆けた顔を見下ろして、聖凛は初めて笑った。

「そんなに怯えなくても今ここで何もしやしないよ。食事に行くだけ。」

 聖凛の柔らかい笑顔を初めて間近で見て、小枝子は不意に心臓が音を立てた。

「・・・え?あの・・・」

 笑顔に見とれている内に小枝子は彼の言葉を聞き逃していた。
 彼は小枝子の手を握ったまま、それまでよりずっとゆっくり、しかしどんどん歩を進める。

 大学の周辺は比較的静かな住宅街が広がっていて、そこを抜けると駅の繁華街が見えてくる。彼はどうも駅の方面へ向かっているようだった。

 彼とつないでいる手が、温かかった。小枝子の白い小さい手は、彼の大きな手の平にすっぽりと包まれ、背が高くて綺麗な顔立ちをしている彼はとても目立つようで、道行く人が時に振り返る。

 小枝子はどきどきしてきた。心臓の音が外から聞こえるのではないかと思うほどだ。
 どこへ行くのか聞こうかと彼の横顔を恐る恐る見上げると、聖凛はその気配に気づいて小枝子を見る。

「小枝子は何か食べられないもの、あったっけ?」

 食べられないもの?
 その意味がよく分からずに、何かアレルギーとか、或いは宗教的な話しをしてるんだろうか?と小枝子はぼんやりと彼を見上げたままだ。

「好き嫌いある?」

 言葉を変えて聖凛は聞く。

「・・・え?」

 咄嗟に何も浮かばずに小枝子は慌てる。

「あの・・・」

 聖凛が彼女にそんな風に何かを聞いたことが今までなかったので、小枝子は彼に対してあまり自分を説明する言葉が浮かばない。

 そもそも、彼女は友人関係に於いても、相手の話を聞いている方が多い。しかも、現在、特に親しい友人がいないのでおしゃべりの類をほとんどしない。

 聖凛は小枝子から答えが返ってこないことを特に気にした風はなかった。
 駅前の大きなビルが立ち並ぶ中心街までたどり着くと、不意に彼女の肩を抱いた。
 人混みに押されて手を離してしまいそうになるからだ。

 小枝子は、そんな風に誰かと歩いたことがない。驚いて、そして、なんだか恥ずかしい気がして顔がほてってくる。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

~ Comment ~


ふむ…
聖凛は作戦を変更したんでしょうか…

少なくとも、付き合ってる的な形になれば構内に波風は立たないでしょうし…

逆に小枝子に「愛されている」という錯覚を与えてしまえば、色んな意味で聖凛にとっても都合がよい…


きっと考えすぎですねw
#2442[2012/09/24 02:19]  blackout  URL 

blackoutさまへ

blackoutさん、

・・・ええと、「9999」ってのは、普通付けなくて良いんでしょうか。
まぁ、blackoutさんの方が語呂として呼び易いですが(^^;

聖凛の行動って、実は、用意周到に計算されているようでいて、意外に感情に左右されているんだと思います。
彼に課せられているのは・・・。

あああ、あんまりしゃべくらんでおきますっ(^^;
#2444[2012/09/24 07:14]  fate  URL 

そうですね

ご指摘のように「9999」はなくてもOkですw

というか、なぜ自分でもこの「9999」を付けたのか謎w

そんなわけで「9999」外しましたw
#2446[2012/09/24 14:22]  blackout  URL 

blackoutさまへ

blackoutさん、

> というか、なぜ自分でもこの「9999」を付けたのか謎w
>
> そんなわけで「9999」外しましたw

↑↑↑えっ??
謎だったんですねっ!(^^;
笑いました~
#2453[2012/09/24 21:31]  fate  URL 

あ、思い出しましたw

確か、某格ゲーのキャラについてたコードネームでしたw

異形キャラだった気が…(汗)
#2459[2012/09/24 23:14]  blackout  URL 

blackoutさまへ

blackoutさん、

ゲーム世界。
あれも一種の異空間っすねぇ。

異形は好きです。
聖凛もある意味、異形ですからね。
#2461[2012/09/26 07:12]  fate  URL 














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