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Stories of fate


アダムの息子たち(R-18)

アダムの息子たち (新月) 9

 6月の半ばが過ぎ、その夜はうんざりするような梅雨の蒸し暑い雨だった。その日は土曜日だったのに、朝からしとしとと雨が降り続き、小枝子は外へ出かける気も起こらなかった。夕方から益々強くなった雨。その激しい雨の音は、テレビの音声すらかき消してしまうほどで、小枝子は、もう諦めてテレビのスイッチを切った。

 真夜中になっても雨は少しも止む様子はなかった。なんだか、その音の憂鬱さに、小枝子はなかなか寝付かれずにいた。もうすぐ午前零時という頃だった。

 不意に玄関の鍵ががちゃり、と音を立てた気がした。
 ぎょっとして、玄関の扉を凝視する。

 気のせいではなかった。扉は、そのまますうっと開いて、闇の中に人影が見えたのだ。
 小枝子は悲鳴をあげた。しかし、その声すら雨の音に吸い込まれ、どこにも届かないようだ。

 その真っ黒な人影は、玄関に立ち、そして、後ろ手で中から鍵を閉めなおした。
 小枝子は、再び叫び声をあげ、ベッドから転げ落ちそうになりながら、窓の方へとじりじりと後退する。

 闇をまとった人影は、音もなく近づいてくる。そして、暗い輪郭の中に目だけが光って見え、その鋭い視線に撃たれたように、小枝子は硬直した。

 誰?と叫ぼうにも、助けを求めようにも、もう身体が動かず、そして声も出なかった。

「約束だよ、小枝子。」

 その低い声に聞き覚えがあった。そして、上着を脱いだ相手の顔がうっすらと確認できた瞬間、小枝子はすべてを思い出していた。

「・・・聖凛・・・。」

 彼は、冷たい笑顔を浮かべた。まるで死人のような、墓の中から蘇ってきた人のような、暗い顔色で、紫の唇で。

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[ファンタジー小説

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