Stories of fate


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業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

業火 kazoku 46

「基」思わず、基の部屋の扉の前で声を掛けてしまう。闇の一番深い時間帯。起きている筈などなかったのに、彼の部屋の扉は音もなくすうっと開いた。

「何か用?」

 寝ぼけた顔ではなかった。瞳にはしっかりとした光を湛え、きっちりと部屋着を着込んでいた。それでも部屋の中は寒々としていて、起きて勉強をしていたとかそういう様子ではなかった。

「あの…ごめんなさい。起きてると思わなくって」

 用がないなら、と扉を閉められるかと思って俯いていたが、基の気配はまったく動かなかった。

「葵、もう、俺に構うな。そう言っただろ?」

 声が恐ろしく低く静かだった。いや、弱々しいといった方が近い。驚いて顔をあげて、その瞳と出会い、葵は心臓を鷲摑みされた気がした。

 基の瞳の奥に、深い傷が見えた。必死に覆い隠そうとして、誰にも気付かれまいと幾重にも鎧を纏った生のままの傷口。そこから絶え間なく流れ落ちているのは血と膿と―涙、だと葵は思った。

「お願い、基。私は―」
「姉さん」と基は冷たい笑みを浮かべた。「センター試験が終わったら、俺はここを出るよ。別に大学へ行きたい訳じゃない。もう、俺はここに用はない」
「待って、どうして?」
「本気で、俺に孕ませられたいのか? 俺はご免だよ」
「…ど、どういう意味?」
「俺の子どもなんてゾッとする」

 言葉と裏腹に、基の目が泣きそうに見えた。

「もし、赤ん坊が出来ていたら、俺が間違いなく殺してやるよ」
「基、そんな話をしてるんじゃないよ」
「姉さん、言っただろ? もう、俺はここに用はない。君にも、だ」
「…用はない?」
「ないね」

 葵には何を言って良いのか、どうして良いのか、さっぱり分からなかった。その傷に触れたりしたら、きっと基は悲鳴を上げるに違いない。その逆鱗に触れる勇気はなかった。これ以上、彼の心が離れてしまうのが怖かった。

「じゃ…」

 葵が言葉を探して彷徨っている僅かの間、基はじっと彼女を見つめていた。そして、葵が何も言わないのを確かめると、そのまま扉を閉めた。

「基!」

 葵はゾッとした。今、何かを外してしまった。取り返しがつかないくらい、大事な瞬間を―。
「基、…基、基…っ!」
 何度、彼の名を呼んでも、もう扉が開くことはなかった。

 センター試験が終わり、葵の入試も終了した頃、基が家を出る支度をしている気配を葵は感じていた。通りすがりにちらりと覗くと、部屋の中は綺麗に片付けられ、それまで無造作に置かれてあった彼の私物はほとんど見当たらなかった。

 基が、いなくなってしまう。言いようのない寂しさを感じて葵は身体の芯が冷えたような寒さに耐えていた。

 行かないで、と瞳で訴える葵に彼は視線を合わせようとはしない。冷然とした目で見返されるよりマシだろうか。基が今何を考えて、どこを彷徨っているのか、何を決めて何を捨てて、何を選んだのか、葵には分からなかった。

「どこへ行くの?」

 固く閉ざされた扉の前で、葵は中へそっと声を掛ける。

「ねぇ、基。お願い、教えて。これからどうするつもりなの?」

 返事はない。今まで何度も、何度も、こうやって扉の向こうの基に必死に話しかけてきた。しかし、大抵中はしんと静かで、ほとんど物音は聞こえない。そして返事が返ってくることもなかった。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛:エロス:官能小説

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