Stories of fate


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業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

業火 kazoku 45

 葵は、ひとつ決心をしていた。

 基の両親と話してみたい。そしてどうしようという明確なものはなかった。ただ、話しをしてみたいと思った。基を、知りたかった。

「お母さん、基の…ううん、私の本当のお父さんの連絡先、分かる?」

 父がまだ帰宅する前、由美にも基にも気付かれないように、葵はキッチンに立つ母にそっと聞いてみる。え、と振り返った母の表情にどこか傷ついたような複雑な色が浮かんだが、葵はひるまなかった。

「分かるけど…どうして?」
「ちょっと話してみたいだけ」
「どうして今?」
「基のことが知りたい」

 誤魔化すことなく、真っ直ぐに母を見上げた娘の目を見つめて、母はゆっくりと息を吐いた。

「…分かった。電話番号を教えるから」
「ありがとう」

 海外にいるとい基の両親。時差のことなどを細かく聞き、葵は手渡されたメモを持って部屋へ戻った。



 その夜、時差を計算し、葵は父親が起きている筈の時間帯、未明の闇の中で明かりもつけずに受話器を取った。国際電話なので、少し気は引けるが、母に了解は取ってある。

 電話番号をまわして、無音の数秒の後、普通に呼び出し音が鳴った。義母が出たらどうしようと一瞬考えたが、いや、義母にこそ、本当は話しを聞きたいのだ、と覚悟を決めた。

 受話器を取ったのは、男性だった。他に男性はいない。父で間違いないだろう。

「もしもし。あの―日本の…」

 葵が名乗っても彼は全然気付いてくれなかった。基の双子の姉です、あなたの娘です、と告げると、「ああ」と父は間延びした声で答えた。「葵…か。どうしたんだ?」
 もう寝る寸前だったようで、父の声は疲れ切っていた。

「お父さん、は、…私のことを覚えてましたか?」

 なんだか、声が震えそうだった。何を聞きたかった訳ではない。ただ、どうしても話しをしなければ、と思ったのだ。

「覚えてるよ、当たり前じゃないか」

 想像していたより、父の声は優しかった。

「あの、…お父さん―」
「…金か?」

 思ってもみなかった言葉を聞いて、葵は一瞬、それを現金のお金だとは認識出来なかった。

「いくら必要なんだ?」
「え、違う。違います」
「お母さんに言えなくて、俺を頼ってきたんだろ?」

 それは、ため息を吐くような声色で、葵はショックを受ける。

「必要な金額を言え。こっそり振り込んでやる。学費が足りないのか?」
「そうじゃなくて…」
「まさか、手術代か?」
「お父さん!」

 思わず叫んでしまい、葵は慌てて周囲を見回した。しんとした部屋の隅に、何かの気配を感じた気がする。

「金じゃないなら、何か他に用件があるのか?」

 冷たくはないのに、葵はぞくりと背筋が粟立った。話しが通じない。いや、日本語を話しているのに、言葉が通じない気がした。

「お父さん、基のこと、心配じゃないの?」

 離れて暮らす息子の安否を彼は一度も尋ねなかった。

「基? 心配する必要なんてないだろ? 何かあるのか?」心底、驚いたように、彼は言った。

 実の母親に預けているんだ、これ以上の安心はないじゃないか、と父は呆れた口調だ。いや、確かにそうだよ? 母が基に再会したときの様子を見れば、母が基をどれだけ愛しているか分かる。この父も、一時期は母と夫婦だった人だ。母のことは分かっているから安心しているというのは理解出来る。

 だけど―

「…お父さん、お義母さんに代わってちょうだい」
「あいつに? なんの用があるんだ?」
「ただ、話してみたいだけ。お願いします」
「今夜は遅かったんだ、もう寝てるよ」
「じゃあ…」
「葵。悪いけど、俺も疲れているんだ。他に用がないなら切るよ。金は本当に必要ないのか?」
「要らない」
「そうか。じゃ、元気でな」

 ぷつりと通話は切れた。その途端、無音の中に一人置き去られ、葵は茫然としてしまった。
 私のことは良い。生まれて間もない赤ん坊のとき別れたきりの娘だ。娘への愛情が欠落していたって、責められやしないだろう。私だって、本当の父のことなんて今まで考えたことがなかった。今の父を本当の父と思って暮らしてきたのだ。不満も寂しさもない。

 だけど。もしも逆だったら? 私が何かの事情で父の家族のもとに預けられたりしたら。もしも海外に行ってしまって電話もしょっちゅう掛けられない状況だったとしても、私も母もお互いに手紙やメールで必ず連絡を取り合っているだろう。母も、そして義父も、一度くらいは声を聞きたいと国際電話もしてきたに違いない。

 葵は思わず冷気を感じて身震いした。

 お金? どうして真っ先にお金のことを考えるんだろう?
 基、あなたの心は今どこにいるの?

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