Stories of fate


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業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

業火 futari 42

「なんで抵抗しないのさ」

 基に好きにされるがままの姉を組み伏せて見下ろし、彼は言った。半分正気を失ってはいたが、彼女の瞳には甘い悦びよりも、一段深い憂いのような色が見えた。

「どういうつもり?」

 その身体を意のままにしどれだけ酷い責め方をしても、手の中の獲物は、決して自分の手には堕ちない。そんな錯覚を得て基は苛立っていた。 

「俺を蔑んでいるのか?」

 そして、苛立ちと同時に彼女の瞳に映る憂いが彼を苛んだ。言われたことを理解した訳ではなく、彼の声色に反応して、葵はゆっくりと基と視線を合わせた。

「それとも、憐れんでいるのか?」

 葵もまた、基と心を通わせることが出来ないもどかしさに苦しんでいた。何かを言おうと口を開きかけたが、基が彼女の言葉を聞いてくれたことなどなかった。それを思うと、くじけてしまう。力でねじ伏せることではなく、もっと温かいものを、何か、もっと確かな―

「基、…どうすれば、良いの?」

 声になったかどうか分からない。しかし、それは彼に届いたような気が、した。



 つい先ほど、葵は基の部屋の中で彼があの夜「媚薬のようなもの」と表現したオイルのビンを見つけた。あのとき、バスルームで感じた身体の奥から湧き起こるあの甘い官能と基に対する恋にも似た感情は、きっとその薬効なんだと彼女は半分納得していた。しかし、そのビンの成分を何気なく読んで、背筋がすうっと冷えるような感覚を得たのだ。

 そこに表示されていた成分は純粋なハーブと美容成分のみ。媚薬に相当するようなものは一切含まれていなかった。
 それを手に取って愕然としている葵の背中に基は近づいて声を掛ける。

「なんだよ、それ気に入ったのか? また使ってみる?」
「ねぇ、これ、マッサージでもするの?」
「なんで、マッサージ?」

 きょとん、と基は彼女を見つめる。では、彼も知らなかったのだ。媚薬だと、そう、思い込んでいただけで。つまり、効能を知っていて自ら手に入れた物ではないということだろうか。

「匂いがきつくて俺はあんまり好きじゃないけど、葵がその方が燃えるっていうなら」

 くく、と基は彼女の背中を抱き寄せて笑う。その途端、不意に胸の奥にもやもやとしたイヤな感触を得る。

「…これ、どうしたの?」
「ああ、もらったんだよ、昔」

 誰に、とは聞かなくても分かる気がした。彼の取り巻きの女たち。彼に気に入られようといろいろな物をプレゼントした女たちがいたのだろう。

「女の人から?」
「なんだよ、妬いてるのか?」

 からかうような基の軽い声に、ぞくりと背筋に痺れが走り、胸がムカムカと苦しくなった。

「これ、捨てても良い?」

 思わず、葵はそう言っていた。その声色に、基は驚いた目をして姉の顔を覗き込む。

「どうしたんだよ?」
「別に。私も嫌いなの」
「…好きにすれば良いよ。俺は別に構わない」

 そのビンをゴミ箱に投げ入れて、葵は、初めて彼女の中に感じたどす黒い感情の渦を眺めてみる。由美の友達が基のことを紹介して欲しいとうるさかったと言っていた。それまでまったく気にしたことのなかったそういう女性の視線がそのとき、葵には許せないほど煩わしいと感じられる。

「葵?」それまで見せたことのなかった姉の複雑な表情に、基は僅かに動揺した。
「葵が嫌いなら、もうその手のオイルは使わないよ」

 それまでと違って、そんなことを言い出す弟を見上げて、葵はなんとも形容し難い感情に彼女自身戸惑っていた。

「基、私に興味ある?」
「…どういう意味?」

 じっと彼を見つめる姉の視線から逃れて、基はベッドへ腰を下ろした。

「私を知りたいと思う?」
「君の何を?」

 視線をそらそうとする基の前にしゃがみ込んで、葵は彼の腕を掴んだ。また振り払われるかと思ったのに、基はそうしなかった。

「ねぇ、基は誰かを好きになったこと、あるの?」
「ないよ」即答だった。「だいたい、好きって何さ」
「相手を知りたいって思うことと、相手の喜ぶ顔が見たいってことと…一緒にいたいっていう、そんなことだと思う」
「葵はあるの?」ふん、と基は嘲笑うように唇の端をあげる。「恋愛経験のない君に?」
「人を好きになったことはあるよ。それに、家族を好きだし、友達を好きだし、好きなものは沢山あるよ」
「俺にはないね」
「じゃあ、ちゃんと私を好きになって?」

 は? という表情で基は目の前の不可思議な言動を繰り返す相手を見つめた。

「何を言ってるのか分かってんの? 姉さん?」バカにするように基は大袈裟に驚いた表情を浮かべる。
「俺たちって双子じゃなかったっけ?」
「言ったでしょ? 私は家族をちゃんと好きだよ。由美のことだって、お父さんもお母さんも、それに―」
「うるさいよ」突然、基は顔色を変えて声を震わせた。「お前に何が分かる!」

 基はベッドから立ち上がった。

「分からないよ!」葵は叫んだ。
「分からないから聞いてるんじゃない。言ってよ、何でも話してって言ってるじゃない! 話してくれないと分からないんだよ。だって、ずっと離れて暮らしてきたんだもん。今までどんなものが好きだったのかも、何をしたら嬉しいのかも、全然教えてくれないじゃない!」

 一瞬、言葉に詰まって、基は怒りに身体を震わせた。振り上げようとする腕に必死にすがりついて、葵は言う。

「ねぇ、基。世界中がみんな基を間違ってるって言っても、私たち家族は基の味方なんだよ。私が基を守るから!」

 何かを叫ぼうとして口を開いた―ように見えた基は、そのまま大声で笑い出した。呆気にとられる葵の前で身をよじって笑い転げ、仕舞いには涙を浮かべて笑い続けた。

「…基」
「何、言ってんのさ、姉さん? 俺は犯罪者か?」
「そんなこと言ってないでしょ! もっと一般的に考えてよ!」

 二人の会話は階下にも聞こえていた。ひそひそ交わされた不穏な部分はもちろん知らずに、葵が必死に弟に寄り添おうとしている部分だけを聞いて、母は温かい笑みを浮かべて安心してしまった。恐らく基は、それを分かっていて、「姉さん」と呼び掛けたのだろう。

「じゃあ、聞くけどさ」ようやく呼吸を整えて、基は言った。「葵は俺が好きなの?」
「…うん」
「へえ。俺って可愛い弟なんだ」
「違うよ」
「じゃ、なんだよ? 可哀相なやつだと同情してんの?」

 葵は一瞬言葉を探して躊躇った。

「よく分かんないけど、弟だと思ってるし、同情もしてるし、でも尊敬もしてる。それに―」本当に分からないという表情を浮かべて葵は眉を寄せた。
「でも、一番はただ‘好き’って思う」
「なんだ、それ?」

 嘲笑を浮かべたままの表情で基は握られていた葵の腕を振り払い、次の瞬間には彼女の手首を掴んでベッドへ引き倒した。

「ひゃ…っ」
「これだけ酷い目に遭わされてよくそんなことが言えるね、葵」

 両手首を一緒に掴まれてうつ伏せに倒れこんだ葵の背中にゆっくりと圧し掛かりながら基は笑う。

「も―基っ」
「なんだよ、文句はないだろう? 俺のことが‘好き’なんだから」

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛:エロス:官能小説

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