Stories of fate


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業火 ~fell fire~(Rewrite編)(R-18)

業火 kazoku 40

 その後、夕食だと母が呼ぶまで、基は部屋から顔を出さなかった。あまりに静かな弟の部屋の前で、時々葵は耳をすましてみた。物音のしない静かな扉の向こう。

 そういえば、基は普段どんなことをして過ごしているのか、葵はまったく知らなかったことに気付く。どんな音楽を聴きどんな本を読み、世の中のどんなことに関心を示すのか。知りたいと思った。普段の、誰も知らない素顔の彼の姿を。

 夕食の席で、一通り家族が年末年始をどんな風に過ごしたかを聞かされ、家に残った二人はどうしていたのか、と聞かれて、葵は一瞬、言葉に詰まった。基がそつのない答えを用意してくれているかと彼の様子を窺ったが、彼は涼しい顔をして、食事を続けるのみだ。

「勉強は進んだの?」

 母は、ちょっと心配そうに二人の顔を交互に覗き込む。

「俺は俺なりにやってましたけど、姉さんが部屋で何をしていたのかは知りませんよ。たまにコーヒーを淹れてくれたりはしてましたけど」
「う、―私だって少しはやってたよ」

 基につられて、葵も思わずそう叫ぶ。何もかも完璧な基なのに、彼は箸の使い方だけがどうも苦手のようで、スプーンで済ませられるシチューは楽に食べているようだ。

「気分転換に大掃除をした程度で、あとはテレビを観たり…」
「紅白は観たの?」母は微笑んだ。
「紅白?」基は不思議そうな顔をした。彼の家では、家族揃って年末にテレビを観る習慣などないのだろう。
「うん、観たよ」葵はそのとき何をしていたのかを思い出して思わず顔を伏せる。
「でも、眠くって…あんまり覚えてない」
「じゃあ、初詣も行ってないのね」娘の様子には気付かずに、母はシチューを口に運ぶ。
「お守りを買ってもらいましたから、もう必要ないですよ」

 基は、ごちそうさま、と箸を置いた。そのまま席を立って、すうっと二階へ上がっていく後ろ姿を見送って、二人は僅かに沈黙した。

「葵は…」
「あ、私も良いよ。ごちそうさま、片付けるね」

 どこか慌てたように、そそくさと席を立ち、食器の片付けを始めた娘を見て、母は僅かに眉を寄せた。葵は、弟をどう思っているのかと彼女は聞きたかった。まさかとは思うが―。

「どうしたの、葵?」
「え、何が?」
「何を急いでるの?」
「べ…別に」

 なんだか、基の様子がおかしい気がして、葵は気になっていた。声に力がない、というのだろうか。一段、距離を置かれていることを気配で感じていた。立ち上がってから、母が何か云いたそうな顔をしているのに気付き、こちらから質問を投げてみる。

「そういえばお母さんこそ、どうして一人で帰ってきたの?」
「え? ああ、うん。ちょっと疲れて先に戻ってきたのよ。それに、あんた達がちゃんと食事してるのか気になってたし」
「食事はちゃんとしてたよ。基も時々作ってくれたし」
「え? 基、料理出来るの?」
「…あ、う―うん。手伝ってくれたよ」
「そう」

 母は別の意味で少し安心した。基も家では義母の料理を手伝ったりしていたのではないかと思えたのだ。

「分かった」母は息を吐いた。信じるしかないのいだ。我が子たちなのだから。「片付けはやっておくから、あんたも部屋に戻って少しは勉強しておきなさい」
「うん」

 葵はわずかにちくりとした胸の痛みを抱えたまま、母親に微笑んでみせた。


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