FC2ブログ

Stories of fate


スポンサー広告

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
もくじ  3kaku_s_L.png 紺碧の蒼
もくじ  3kaku_s_L.png 真紅の闇
もくじ  3kaku_s_L.png 黄泉の肖像
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 2
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 3
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 4
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 外伝集
もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い月
もくじ  3kaku_s_L.png 永遠の刹那
もくじ  3kaku_s_L.png Sunset syndrome
もくじ  3kaku_s_L.png 陰影 2
もくじ  3kaku_s_L.png Horizon(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png Sacrifice(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png 閑話休題
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←儘 第二部 1    →儘 第二部 3
*Edit TB(-) | CO(-) 

儘 (『花籠』外伝)

儘 第二部 2

 左手で龍一の身体をしっかりと支え、右手に握ったナイフのみで敵の攻勢を切り崩していく椿の動きは見事だった。全身で相手の気配を読み、風が動く前に相手の動きを予測し先手を打つ。それは、はからずも松守が椿に伝授した戦いの方法である。しかし、相手の数は多い。形勢は次第に不利になっていく。何よりも、激しい動きに龍一の体力がそれほど持ちそうになかった。

 汗が滲み、息があがってきた椿を、敵はじりじりと包囲を狭めていく。

「椿―」龍一が何かを言いかけるのを、椿は一蹴して制する。「うるさい、気が散る。お前は何も言うな」

 腕の中で次第にぐったりと力が抜けていく龍一の体温を感じながら、椿の心は反対にどんどん冷えて研ぎ澄まされていく。氷のように。熱さが抜けて鈍い光を放つ鉄の刃のように。

 すとんと自ら闇の中に落ち込んで、心を‘無’に近づけた刹那、目の前にある最優先事項のみに意識を集中させる。いや、焦点が絞られるというのだろうか。

 一人。―二人目。さらに三人目。血しぶきをあげて椿の行く手を阻む敵は排除されていく。その光景を、彼は目を閉じたままでも鮮やかに見えていた。

 残りは数人。
 そのとき、ずるりと龍一の腕がはずれ、不意に椿の腕に重みが掛かった。

「龍ちゃん!」

 目を閉じたまま、龍一は僅かに唇を動かした。

「逃げろ…」
「バカを言うな!」

 もう、自らの身体を操る力も残っていないのだろう。だらりと落ちた腕に血が伝い落ち、血の気のない青白い顔に、僅かに笑みが浮かんだ。

「椿…ありがとう」
「うるさい、バカやろう! しっかりしろ!」

 椿が、龍一の身体をなんとか抱え直し、体勢を立て直そうと顔をあげたとき、残った数人が一気に襲い掛かってきた。
 思わず腕の中の龍一を庇った椿の背に、腕に、剣が突き刺さろうとした刹那。それを振り払うように一筋の銀色の光が二人の傍をかすめ、銃声が響き渡った。

 はっと椿の瞳が人影を捕え、そこに現れた男の名を呼ぶ。

「―悠馬」

 あっという間に、二人に襲い掛かかろうとしていた敵は声もなく死体と化している。

「やぁ、間に合ったな」

 笑顔を向けて、近寄ってきた相手を睨みつけて、椿は叫んだ。

「てめぇ、悠馬! 何が間に合っただ! 格好つけてんじゃねぇよ。とっくにそこで高みの見物してやがっただろうがっ」

 一見するとごく普通の若者なのに、彼もまた、どこか現実にそぐわない違和感を湛えた男だ。額に掛かる長めの前髪をかき上げて、化粧でもしているのかと思うような白い肌で、快活に笑みを浮かべている。眉が太く鼻筋が通った人好きのする顔立ちだ。

「…あ、なんだ気付いてたか」
「お前の気配なんかとっくに分かってたわ!」
「おかしいなぁ。気配はしっかり消した筈で、他に誰にも勘付かれてなかった自信はあるんだが」
「うるせぇ、さっさと手伝え!」

 苛立つ椿に肩をすくめて、彼が龍一の身体を背負うのを支え、悠馬はすでに意識のない龍一の状態を気遣う。

「…死んでるみたいだな」
「大丈夫だ。松守がなんとかしてくれる」

 信じているというより、祈るような声だった。

「こいつはお坊ちゃんだからなぁ。しかも―」
「うるせぇ。まだ残党が残っている筈だ、悠馬。お前、一人残らず片付けてこいよ」

 椿の言葉に、悠馬はふっと笑みを浮かべる。

「分かった。ついでに、ご遺体の始末もつけてくるよ」
「当然だ。―いや、頼むよ」
「ああ、椿―」
「なんだよ、お前までそう呼ぶなよ」
「お前は俺にとっては‘椿’だ。それ以外ではあり得ない」不意に真顔になって悠馬は言った。「松守に伝言を頼む」
「…なんだ?」
「‘これが最後の許しだ。次はない。’―そう伝えてくれ」
「なんだ、それ?」
「俺が預かった伝言だよ」
「やっぱりお前はそっちの人間か」
「…今更何を。知ってただろ?」
「知ってたよ」

 悠馬はにこりと椿を見つめ、その身を翻す。

「後始末は引き受けた。龍一を頼む」

 悠馬の僅かの苦悩を背中で聞き、椿はそのまま歩き去った。

 いくつもの道が幾重にも交わり、絡み合い、‘道’は混沌を極める。触れ合った‘魂’が光を放ち、輝きを増す刹那、そこに希望へと続く‘道’が目の前に横たわることを信じて―。

関連記事
スポンサーサイト
もくじ  3kaku_s_L.png 紺碧の蒼
もくじ  3kaku_s_L.png 真紅の闇
もくじ  3kaku_s_L.png 黄泉の肖像
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 2
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 3
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 4
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 外伝集
もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い月
もくじ  3kaku_s_L.png 永遠の刹那
もくじ  3kaku_s_L.png Sunset syndrome
もくじ  3kaku_s_L.png 陰影 2
もくじ  3kaku_s_L.png Horizon(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png Sacrifice(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png 閑話休題
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←儘 第二部 1    →儘 第二部 3
*Edit TB(0) | CO(0)

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←儘 第二部 1    →儘 第二部 3

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。