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Stories of fate


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儘 (『花籠』外伝)

儘 5

 緑の闇に紛れて一月が経過した。夏は深まり、町は熱気にまみれて人々は狂ったように涼を求めて彷徨っている。しかし、緑と水に囲まれたそこは、自然の調節作用が働き、夜には気温が下がる。

 傷がほぼ癒えた春樹は、日中はほぼ部屋に閉じこもっている龍一の代わりに松守と時間を過ごすことが多くなった。お互いの思惑がどこにあるのかほとんど言葉を交わさない二人は、しかし、同じ目をして、同じものを見ているような暗黙の空気を抱いていた。



 夜中過ぎ。

 ふわりと風が動いた気配に龍一ははっと目を開けた。森の生き物すら息をひそめた刹那のまるで凪のような夏の夜。起き上がろうとするより早く、相手は彼の両手首を捕えて上に圧し掛かってきた。

 反射的に強張らせた身体の力をスッと抜いて、龍一は真っ直ぐに相手を見つめた。

「…夜這いか?」
「そうだよ」

 闇の中で、男の目が静かに光を放っていた。

「セックスでもする?」
「俺は男は抱かない」
「…じゃ、放してくれる?」
「イヤだ」

 龍一はため息を吐いた。

「なんか、殺気を感じるなぁ、椿」
「勝手に名前を付けるなよ」

 ふふ、と龍一は春樹を見上げて微笑んだ。「君には‘椿’の方が似合うよ」
 ふう、と今度は春樹が息を吐く。

「お前が女だったらなぁ」
「なんでさ?」
「たぶん、惚れてた」
「…男じゃダメか?」
「お前は‘男’じゃない」
「…え、じゃあ何だよ? 両性具有じゃないぜ?」
「セクスレス(無性)」
「…」
「否定出来ないだろ」
「いや、俺は男だって。ちゃんと機能も持ってる。証明してやろうか?」
「要らん!」

 ぐい、と掴んでいた手に力を込められて、龍一は顔をしかめる。

「痛いよ、椿。放してくれ、って」
「イヤだ」

 半ば諦めたように息を吐いた龍一を春樹は黙って見下ろしていた。そのまるでキリキリと澄んだ空気が刺さるようだ。やがて春樹はふっと顔を近づけて龍一の唇に軽く触れた。一瞬目を閉じた龍一が次に目を開けたときには、もう春樹の姿はなく、風の気配が残っているだけだ。

「行くのか?」

 龍一の声に、「またな」と風が答えた。


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