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Stories of fate


陰影 2

陰影 第二部 (遥かなる地) 23

 白い空間。白い光。眩しい霧の中にいるような奇妙な感覚を得て。
 彼女は目を開けた。
 白一色の世界に、次第に、規則正しい模様を見つける。

 …何だろう? あれは…?

 じっとそれを見つめていても、それが何なのか分からない。たくさんの四角。どこまでも続いている。

 どこまでも?

 少し視線をずらす。まだそこにも同じ模様だ。
 更に視線をずらし、首を僅かに傾ける。

 ああ、やっと終わりが見えた。

 模様の終わりは唐突に白い面になって折れ曲がり、そこには大きな窓があり、カーテンが微動だにせずにしんと下がっていた。

 そして、ようやく彼女は認識する。
 先ほどの規則正しい模様は天井を見上げていたのだと。

 身体を動かそうとして、ふと手に意識を移し、左手に何か温かいものを感じる。なんだろう? と窓とは反対側へとゆっくりと顔を向ける。何か黒いものが目に映った。

 なんだろう?
 ぴくりと左手が動く。
 すると、その黒いものが動いた。動いて― 
 そこには男の顔があった。

「さらっ」

 掠れた声が男の唇から漏れ出る。

「さらちゃん? …ああ、良かった!」

 彼女は、茫然、と男を見つめる。ひどい顔色をして、何日も寝ていなかったかのようなやつれ切った表情で、だけど、その瞳だけが泣きそうに熱かった。

「…大丈夫かい? 気分は…」

 彼女を覗きこむ男の視線に少し怖くなって、彼女は僅かに身を引く。
 誰だろう?
 あたまがぼんやりとして、何もかもが曖昧だ。

「さらちゃん?」

 心配そうな声。

「…俺が、分かる?」

 彼女は、息を呑んで男の顔を見つめた。
 その、唇の動きを。その途端、彼女の口から、意図せず、言葉が漏れた。

「け…いち、さん…」


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛小説

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