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Stories of fate


陰影 2

陰影 第二部 (遥かなる地) 22

<さら>

 花嫁衣裳。
 真っ白でふわふわのフリルが胸元と腰と背中にふんだんに使われて、それでいてつるつるとシルクのように柔らかい生地の。あまり詳しい説明がなくって、私は、これは本当にweddingだとは思っていなかった。いくつかの衣装が用意されていて、何度か合わせてみて、緩い部分はその場で仮留めのように応急処置をして、だったので。

 こんな素敵な衣装を着られるのは、なんだか心が浮き立ったけど、慶一さんに一番に見てもらいたいなぁ、と思ったけど。

 そして、本当はなんだかおかしいな、と思わなくもなかった。
 もしも、私のこんな姿を慶一さんがどこかで見ていたら。
 これは本当じゃないんだと言ったところで、信じてなんてもらえない事態に陥るよね?

 でも。
 私はあまり英語は得意ではないけど、私をここまで連れてきてくれた人は、一生懸命いろんなことを話してくれるし、周囲で交わされる会話もひそひそ声なんかではなくって、私に何かを隠している感じはまったくしなかった。

 それに、なんとなく、信じることが出来た。
 慶一さんのルーツを。

 彼が生粋の日本人ではないことは一目で分かっていたし、いつでも堂々としていて、そして、話すとき決して目を伏せたりそらしたりしない不躾とも言える真っ直ぐな自信は、きっと彼のご両親…恐らくお父さまの血ではないかと思う。

 教会のその控え室で、私は、慶一さんへ続く道を必死に信じようとした。周りの人の温かい空気に必死に応えようと。

 いつなのか分からない。だけど、きっと本当にもうすぐ慶一さんに会えると。
 映画で観たシーンのように、ヴァージンロードを歩き、その先に待つ人の手を取って、と彼女は微笑んだ。それで、すべてがうまくいきます、と。

 ちょっとドキドキした。
 本当の結婚式みたいで。
 いつか、慶一さんと。
 ううん、彼とは白無垢と羽織袴で…。

 そんなことを思って、かああっと頬が熱くなった。

 そ、そんな。まだ、そんな具体的な話をしたことなんてないのに。
 そして、扉は開かれ、私は、黒い衣装の男性のエスコートで一歩を踏み出した。


<慶一>

 晴れた空の下。
 家を出るとき、ジェシーの姿を見かけた。彼女のどこか興奮したような上気した頬と、それまで見たことのないような決意を表した瞳の光。彼女のそんな顔を俺は初めて見た気がする。
 なんだろう、すごく幸せそうに見えた。

 ふと、胸が痛む。
 ほんの十数日前、さらのそういう表情を見たことを思い出していた。夜の闇の中で尚、彼女のはにかんだ笑顔の美しさを。

 どこかまだ惑ったまま、まるで何か大きな渦に巻き込まれるように、俺の意思はそこになくて、ここまで進んできてしまった。

 運命だったというのだろうか。
 抗えない巨大な流れだったのだと。
 …分からない。

 流されたと言いながら、それでも、結局、決めたのは俺なのに。

 祈りながら、さらの幸せと笑顔を祈りながら、俺は他の女性を選んだ。それでも。別れを告げた俺を彼女が許してくれる夢を見る。俺の手紙の言葉ではなくって、俺自身を、ただそれまで過ごした時間の確かさを信じて。

 教会の鐘が鳴り響く。
 大勢の参列者の並ぶ町の教会で。
 俺は、未だ何も決意出来ぬまま、ここに、立つ。

 後悔、しないのか?
 ジェシーを選んだことを?
 或いは、さらを危険の只中に放り込むことを?

 どちらにしても、覚悟は、出来ている筈だったのに。
 運命に従い、それを受け入れ、俺は、俺のすべてを掛けて‘彼女’を守ろうと。
 
 

☆☆☆

 ジェシーと一緒に現れた青年。

 彼は、そう、彼女の兄。母親に絶縁され、去った筈の父の義理の息子だった。父は、彼の姿を見るなり、ゆっくりと歩みより、息子を抱きしめた。

 そうだ、父、議員の息子は、慶一だけじゃない。むしろ、ジェシーの兄こそ、父の傍にいて父を支えるべき人物だ。一瞬、茫然とした兄は、父親の腕の中で少し照れくさそうな表情を浮かべた。
 傍らに佇むジェシーは涙を浮かべた瞳で二人を見つめ、そして、二人が何か言葉を交わしながら彼女を振り返ると傍に寄って二人の腕に抱かれた。

 さらも事態がよく呑みこめないまでも、慶一の腕に抱かれたままその幸せそうな光景に笑みを浮かべる。その後、ジェシーは二人から離れ、慶一とさらに歩み寄ってきた。

「オメデトウゴザイマス」

 カタコトの日本語で、ジェシーは、慶一を見つめ、さらに向き直った。

「オネエサン」

 鮮やかなヴァイオレットのカクテル・ドレスを着たジェシーは、花嫁のように満ち足りた幸せそうな表情を浮かべていた。ようやく探し当てた兄との再会。そして、幸せな義理の兄と姉に囲まれて、ジェシーは、初めて自ら決めて選んだ結果に満足しているようだった。

 ジェシーの母の姿がそのとき見えなかった。

 その場の誰もが、なんとなく、その家族の光景を受け入れて拍手がパラパラと起こったその刹那。
 一発の銃声が響いた―。




※ ほらぁ~~!
fateに関わらせるとこんな事態に~~
ええええっ??
撃たれたのは誰っ???


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛小説

~ Comment ~


悲劇であれ喜劇であれ、きちんと「結末」をつけるのが義務であると考えているわたしは、続きを楽しみにして待ちます。

そうでないとカタルシスが……。
#2441[2012/09/23 12:15]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

ポール・ブリッツさまへ

ポール・ブリッツさん、

う、確かにその通りですね。
っていうか、これは、こういうハナシで、以降は読者さまに委ねます、って明確なモノがない限り、途中で投げちゃいかんですよ、はい。

・・・如何せん、どうなるのかfate自身に分かってないことがモンダイだろうか(ーー;

まだいろいろ決め兼ねているので、更新はちょっくら待ってください。
#2443[2012/09/24 07:09]  fate  URL 














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