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Stories of fate


アハンカーラ ~エゴ・自我意識~ (R-18)

アハンカーラ (謎) 9

 翌日から、男はいろんな格好で出かけていく。

 いろんな、と言っても、スーツだったりジーンズだったりという程度の変化なのだが。一体何の仕事をしているんだろう? と思う。

 そして、私はというと、やることがないので、おばあちゃんの畑仕事を手伝って、食事の支度を手伝って…とそんな生活だ。常に頭に霧がかかったみたいなぼうっとした精神状態なので、そのくらいのことがちょうど良かった。何も、考えたくなかった。

「男って、なんとも思ってない女のことを普通に抱けるのね」

 私は、特に何の考えもなく、ふと思いついたことをぽつりと口にした。

「誰のこと?」

 公男…だと、この間、彼はようやく名乗った。というより、私が彼の名前を知らないということを忘れていたらしい。
 怪訝そうに聞かれて、私は上に乗ったままの彼を指さす。

「俺? いつ、そんなことをしたのさ?」
「今してるじゃない」

 下半身をつなげたまま、彼は私の腰に腕をまわしてぐい、と自分の方に引き寄せる。

「あっ…」

 思わず声が漏れ、私はのけぞる。

「俺は、欲しい女しか抱かないよ」
「な…に、言って…んんっ」

 公男は私の乳房を手の平で押し潰し、乳首の先に舌を絡める。いっとき、避妊してくれているんだ、と思ったのはほんの気まぐれだったのか、最近ではまた私の中に無遠慮に精子をバラ撒くようになっていた。

「子どもが出来たら、生んでもらおうと思ったから、避妊はやめた」

 弄んでいた乳首から唇を離して、公男は私の顔を覗き込んだ。
 私は、答えようがなくて黙る。
 ああ、そう、と思った。

「このまま俺の女になって、ここで暮らしても良いんじゃない? おばあちゃんもひどく喜んでいるし」

 良いんじゃない? じゃないだろう!
 私は否定も肯定もしない。
 いや、だから私には判断材料が乏しすぎるのだ。

「…じゃあ、初めから私を抱く気だったの?」
「そうだよ」

 間髪入れずに、彼は私の胸を再び弄び始めながら答える。

「追いかけていたのは、あなたの方、か…」
「何、それ? 何か思い出したの?」

 ぐい、と腰を押し付けられ、私は声をあげる。

「思い出さない方が良いかも知れないよ、香織ちゃん? そうだね、とりあえずは子どもが出来るまでは」
「な…に、それっ…ぅ、ぁぁっ」
「ずっと、君を欲しかった。あんなチャンスを逃す手はないだろ?」
「イヤ…っ」
「イヤだって、君の身体は云ってないよ? 俺が欲しいんだろ? このまま俺のセックスに狂ってな。そうすれば少なくとも君は俺に殺されずに済む」

 言ってることはむちゃくちゃなのに、妙に公男の目は妙に優しかった。

 彼は次第に激しく腰を使い始め、私はもうマトモな会話は不能になった。男に応えることを知っている私の身体。私はこの男が初めてではないのだ。

 それでも。彼の責めは絶妙で激しくて、私はあっという間に思考を奪われ、彼の思うままに鳴かされるだけだ。何度も閃光が頭を突き抜け、身体は痙攣する。その余韻を味わう余裕もなく何度も深い絶頂を与えられる。狂いそうだった。

 あれでも、彼は初めはかなり手加減してくれていたのだと、知る。
 身体が溶けてなくなりそうだった。


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