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Stories of fate


アハンカーラ ~エゴ・自我意識~ (R-18)

アハンカーラ (謎) 8

「なんで、お前、抵抗しないの?」

 その夜も、その男は私を抱きながらそう言った。
 そういえば、おばあちゃんが‘キミオ’とか呼んでいた。

 おばあちゃんの寝室は一階の居間の横で、男の部屋は二階だった。二階にはもう一部屋あるようだったが、そこはしばらく使われてなくて物置になっているし、と私は男の部屋に一緒に住まわせてもらっている。

 男のベッドは何故かダブルベッドだったので、広さ自体は充分だった。

「…自分が、言うことを聞けって言ったんじゃない」

 しかも、最初のときなどは、ほとんど動けない私を強引に陵辱したのだ。まぁ、あの最初のときも、確かに私は大した抵抗はしていなかったと思う。あんまり動けなかった、というのはその通りだったにしても、拒絶する理由がたいして見つからなかったのだ。

 それに、あのときの彼の目が、何故か私の心を捕えていた。
 何かを欲しがって駄々をこねる子どもの目をして、むしろ、すがるような熱い視線に私は拒絶出来なかった、気がするのだ。

「男はみんなそう言うんだよ。それでも、よく知らない男に抱かれたら、イヤがらないか? 普通は」

 だから、普通が分からないのだ、私は。自分が誰かさえも分からないのに、‘普通’の置き所なんて論外だ。

「自分が誰なのか、知りたくない?」

 私は、少し考えた。だけど、思考は闇に吸い込まれていくだけで、さっぱり生産的な考えが浮かばない。

「聞いたら教えてくれるの?」
「知りたいならね」
「…」

 知りたい、のだろうか。
 いや、むしろ、何故、そんなことを悩むのだろう?
 知りたくない心理の方が恐らく不思議なことだろう。

 そんなことをぐるぐると考えて何も聞かない私を、男は途中で会話を諦めたらしい。いや、彼自身も迷っているように見えた。私に真実を告げることを。

 その日はどういう心境の変化なのか、男はきっちり避妊具を使用して私を抱いた。さすがにそこまでのリスクを冒す気も責任を負うつもりもないのか。
 

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

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