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Stories of fate


虚空の果ての青 第二部

虚空の果ての青 (奈落) 36

 清琳が数日滞在している間、樹は片時も優の傍を離れなかった。

 優も、何かに怯えるように身を縮めて彼の姿が見えなくなることを怖がった。結局、清琳は、その後、優の姿をほとんど目にすることもなく、最後に形式的な別れの挨拶に顔を見ただけで屋敷を去ったが、それでも、何故か二人とも奇妙な予感のようなものに支配されたまま、心から安堵が出来なかった。

 清琳の足取りはその後もずっと追わせていたが、彼はまだ日本に滞在するつもりのようで、樹はなかなか仕事に復帰出来なかった。屋敷内で部下に指示を与えるのみ、という状態にも限界が来ていて、他の部署からもクレームが出始めていた。

 週明けに清琳は屋敷を発っていたが、優はその後も学校を休んだままで部屋に閉じこもりきりだった。
 その週、期末の試験が行われていたのだが、優はそれを受け損なっていた。

 学校からは、他にも試験を休んだ生徒がいて、その子たちと一緒に放課後に受験することが可能なので、出来れば出てきて欲しいとの連絡が入っていた。

 首都圏でいろいろと動き回っていたらしい清琳も、そろそろ帰国の手続きに入ったらしいと情報を得て、樹は、優に試験を受けさせようと考えた。

 鹿島に連絡を取ると、彼は静寂を伴ってやってきた。

「お久しぶりです」

 静寂は快活に微笑んだ。背も伸びて、本当に鍛えたらしく幾分がっしりと筋肉もつき、すっかり彼は大人の男の顔をしていた。

「見違えたよ。頑張っているようだね」

 樹も嬉しそうに微笑んだ。

「今日は、僕も同行させていただきます」

 彼の言葉に、樹は苦笑して鹿島に視線を投げる。鹿島は無言で頷き、桜木はいつも通り待機していた。他に数名鹿島の部下が桜木と一緒に警護につき、樹はそれで大丈夫だろうと思ってしまった。彼もそろそろ会社に顔を出さなければならなかったし、優がまったく清琳に対して心を開きそうにない様子を見て諦めただろうと。

 今回ばかりは鹿島を優に付けて、樹は鹿島の手配した彼の部下が会社まで送り届けることになっていた。

「しっかり試験を受けておいで」

 樹に見送られて、優は幾分、不安そうに出かけて行った。
 運転手が一人、優の左右には女性が座り、助手席には鹿島が付き添った。そして、その後ろに桜木と静寂が付いていた。

 見送った優の心許ない小さな姿が妙に瞼の裏にチラつき、樹は、ふと門を出て行った車を追いたいような衝動に駆られ、思わず数歩を踏み出した。

「樹さま?」

 背後から一緒に見送った佐伯の驚いた声が聞こえ、樹は、ああ、と我に返る。

「いや、すまない。大丈夫だ」

 もう見えなくなった車の行く末、晴れた空の向こうに暗雲が立ち込めている気がして、樹はすでに優を一人で学校へ出したことを後悔し始めていた。



 そして、出社した樹にもたらされた最悪の情報。

 優がチャイニーズと見られる一団に拉致され、静寂が殺された、と息も絶え絶えの鹿島から連絡が入ったのは優を見送ってからほんの数時間後のことだった。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


こんにちは。

>鹿島に連絡を取ると、彼は四十万を伴ってやってきた。
ここだけ読んで、鹿島が現金四十万円を脇に抱えてやって来たのかと勘違いしたのは私です。
そういえばいたなぁと思い出しました、ごめん四十万。

とのんきに思っていたら!!!

うおおおまさかの死者が><

おまけに優ちゃんが記憶喪失になるなんて考えたくないです、ああ……。


楽しみにしているとは言いづらいですが、続き待ってます><
#2195[2012/06/13 10:55]  たつひこ  URL 

たつひこさまへ

たつひこさん、

> ここだけ読んで、鹿島が現金四十万円を脇に抱えてやって来たのかと勘違いしたのは私です。
> そういえばいたなぁと思い出しました、ごめん四十万。

↑↑↑パソコン前で爆笑させていただきました(^^;
これさぁ、「しじま」って変換すると古い方のパソコンでは第一変換で四十万が出てきたので、そのままにしてましたが、さすがに変えようと思い至りました。
ありがとうございます・・・
「静寂」これって、また微妙だけど、現金よりは良いよな(^^;
変えます、変えます!
これから修正入りますので、次、来ていただいたときには恐らくまた訳分かんなくなってるかも~
で、修正入れ忘れの箇所を発見したら、どうかご一報ください!!

> 楽しみにしているとは言いづらいですが、続き待ってます><

↑↑↑第二部は暗いし吐き気がするし、散々でした~
すんません。しばらく暗いです。重いです。
しばらくっていつまで?
きっと明けない夜はない・・・筈だけど。
何しろfate自体が闇の生物だからぁ。
#2196[2012/06/13 16:49]  fate  URL 














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