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Stories of fate


虚空の果ての青 第一部

虚空の果ての青 (年上の女性) 37

 初め、着替えをするために鏡の前に立たせたとき、優は、全身に刻まれたキスマークに顔色を変えた。
 皮膚病か何かのように思ったらしい。

 白い顔から更にさあっと血の気が引き、優は声もなく、両手で自分の身体を抱きしめるようにして床にしゃがみ込んだ。

「優ちゃん?」

 なんとなく予想していた樹が彼女の身体に手を触れようとすると、優はびくりと身体を震わせ、彼から離れようとした。

「優ちゃん、大丈夫だよ。病気じゃないから」

 樹は言って優の身体を背後からふわりと抱きしめる。

「…え?」
「ごめんね。俺がつけたの、ほら、こうやって」

 樹は優の二の腕に唇を近づけ、優の見えるところにキスマークを刻む。

「明日にはほとんど消えちゃうよ。服で隠れるところにしか付けてないから大丈夫だよ」

 泣きそうだった優は、涙目のまま、茫然と樹を見上げる。

「ごめんね。びっくりした?」

 頷くことも忘れて、優はぽかんと口を開けて、樹と自分の身体を交互に見つめていた。

「…どうして?」
「いつか食べちゃうために、俺のものだって、印を付けてるんだよ」



「今日はホテルから出ないからコートは要らないかな。下のレストランでバイキングをやってるはずだから、それを食べてみようか」

 スーツに着替えて、樹は言う。普段でもあまりラフな格好をしたことのない彼は、スーツが一番落ち着くのだ。

「バイキング?」
「そう。好きな料理を自分でとって食べるスタイルだよ」
「…パーティ?」

 この間の立食パーティを想像して優は樹を見上げる。

「ああ、あれとはちょっと違うよ。スタイルは似てるけどね。今度はテーブルに就いて落ち着いて食べられるよ」

 優の、頬にかかる髪をまとめ、後ろで軽く結わえてリボンをつける。あまりそうやって顔をさらすことのない彼女は少し不安そうだった。おどおどと樹の腕にすがりつく優の様子を可愛いと思いながら、ヒールのない白いパンプスを履かせてみると、優は慣れない靴にどうもうまく歩けない。仕方がないのでゴム底のちょっとお洒落なスポーツシューズを履かせて部屋を出た。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛小説

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