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Stories of fate


虚空の果ての青 第一部

虚空の果ての青 (デートって何?) 28

 公園の中の小さなレストランで軽食をとって、迎えに来た鹿島に優の施設に向かうよう樹は指示を出す。

 その途端、ああ、もう樹と一緒にいられる時間は終わりなのだ、という現実を、優は初めて認識し、そして、生まれて初めて寂しさを感じた。きゅうっと胸が痛む感じ。ぽっかり自分の中に空洞が出来て、もうそこは埋められないという悲しさ。

 普段も無口だったが、ますます静かになって樹の腕にすがりつく優の様子に、樹は胸が少し痛んだ。
 自分を、掛け値なく求めてくる相手に、彼は胸の奥が熱くなるような愛しさを感じる。

 樹は優の髪に何度も優しいキスを落として、またね、とささやく。
 二人にとっては、あっという間の時間だった。やがて施設の門に着き、樹は一緒に降りて優の頭をなでる。そして、先ほど買って包装してもらった服を手渡して、少し泣きそうな優に微笑みかける。

「はい、これはプレゼント。今度会うときに着ておいで」

 優が着てきた服とコートを入れた袋とをその小さな手に握らせて、樹は約束する。

「クリスマスには冬休みに入るでしょ? そしたら、また迎えに来るからね」
「クリスマス…?」
「そう。イヴの次の日ね。俺も年末は長期で休暇を取るから、ケーキとご馳走を一緒に食べよう?」

 そう言ってぽんぽんと優の頭に手を置く。

 傍から見るとそれは、親子の姿と変わらなかった。事務所の窓越しに見ていた事務の女性の目にも、そんな風にうつった。お金持ちの‘あしながおじさん’さながらのスポンサーのように。

 優が頷くと、樹はそのまま車に乗って、去っていく。
 いつまでも、ぼんやりそれを見送っている優を、事務の女性が迎えに出て、声を掛ける。

「桐嶋さん、お帰り。可愛い格好しちゃって! 服を買ってもらったの?」

 優が振り向くと、彼女は羨ましそうな顔をして、それでも嬉しそうににこにこしていた。

「樹さまとお食事とかしてきたの?」

 優はこくりと頷く。

「何かお話してきた?」

 優にかがみこむ背の高い彼女に、優は少し考えて答えた。

「…もっと、たくさん食べないとダメだよ、って言われた」
「そうねえ。桐嶋さんは食が細いから。少しずつでも食べられるようになると良いんだけどね」
「クリスマスに、ご馳走食べようって言われたけど…」

 不安になって優は呟く。

「たくさん食べないと怒られるかな…?」

 事務の女性は笑った。

「大丈夫よ、食べられないからって怒ったりしないと思うわよ。怒られたりはしなかったでしょう?」

 優の手を引いて部屋に戻りながら、彼女は、優が良いスポンサーを見つけて、このまま学費の援助などを続けてもらえると良いと、祈りのように思った。



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛小説

~ Comment ~


好評でしたね^^

仔猫に保護する者が必要なように、保護する者もまた仔猫を得て育つことができるんでしょうね。人が子どもを得て初めて一人前になれるように。

ところで、花籠を文芸社に送ってみられたんですね。
なかなか好評でしたね^^
なんだか私も嬉しいです♪
スムリティの基盤の脆弱さに言及してありましたね。
そちらはfateさんにとって古い作品であるし、多少、加筆が必要だというところでしょうか。
さらにパワーアップしそうですね^^
#2463[2012/09/26 14:35]  あび  URL 

Re: 好評でしたね^^

あびさん、

> 仔猫に保護する者が必要なように、保護する者もまた仔猫を得て育つことができるんでしょうね。人が子どもを得て初めて一人前になれるように。

↑↑↑おおう、深いコメントをありがとうございます!!
まさにそうっすねぇ!!!
これは、そういう関係を描いたものです。お互いがお互いを必要とし、支え合いながらももたれ合うでなく、傷を舐めあうでなく、一人の人間として一人で立つために・・・

> ところで、花籠を文芸社に送ってみられたんですね。

↑↑↑はい~。
講評のみをお願いしたわがままにも関わらず、きちんと講評くださいました♪

> スムリティの基盤の脆弱さに言及してありましたね。

↑↑↑無理やりのコラボだったので、やはりいろいろ曖昧さが露呈してしまいやした(ーー;
でも、そう指摘してもらえるのはさすが編集さんです。
大変、勉強になりましたし、fateが曖昧に濁した箇所をきれいに刺されて「きゃああああ」でした(^^;

エヘヘヾ(´▽`)
いろいろありがとうございます(^^)
#2465[2012/09/27 07:41]  fate  URL 














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