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Stories of fate


虚空の果ての青 第一部

虚空の果ての青 (ホームパーティ) 16

 あまり意識はしていなかったが、その日、優はだいぶ神経をすり減らし、疲れていたようだ。次々と樹に挨拶に現れる華やかな女性たち。優があまりに幼いせいかそれほど不躾に冷たい視線を向けられはしなかったが、どういう関係の女性なのかと誰もが聞きたがった。

 食事もそこそこに、隅のソファに座って、優はグラスに注がれた飲み物にうっとりしていた。淡い桃色で、空気の泡がぷつぷつあがって、幻想的な色彩の小さなグラスの中の世界。それを見つめていると、怖いことを忘れられたのだ。

 迎えに来た鹿島の運転する車に乗り込んだ途端、彼女は瞼が重くなって、目を開けていられなくなってきた。
 こくりこくりとふらつく優の身体を抱き寄せて、樹は笑った。

「良いよ、優ちゃん、眠ってて」

 優は樹の腕にもたれかかった途端、ことん、という感じで意識を失う。赤ん坊みたいだと思いながら、樹はその身体を横たえ、小さな頭を膝の上に乗せる。

 すうすうと寝息を立て、まったく無防備に優は眠る。
 これじゃあ、さぞかし襲われ放題だったろう、と樹は呆れた。

 そして、そのあどけない寝顔を見下ろしてふと考える。どうして、こんな子に関わってしまっているんだろう?と。
 その身体にしか興味はなかったのだ、本当は。
 自閉症のような、人とうまく付き合っていけない精神疾患を抱え、感情表現もろくに出来ない少女。

 しかも、発育が悪くやせっぽちで、抱き心地もそんなに良くないのに、触れたいと思ってしまうのは何故なのか?
 こうやって、髪の毛をまとめて額を見せると、フランス人形のように整った顔立ちが際だつ。同時に栗色の髪と、少し淡い瞳の色が、精神薄弱児を思わせる。

 あまり慕われない様に少し距離を置いたまま付き合った方が良いかな、と樹は思う。
 女と深く関わって、ごたごたが生じることを彼は嫌った。面倒だった。

 しかし、それだけではない何か…の感情が彼の奥でこそりと揺れ、彼は眉をひそめる。
 いや、もう考えるのはよそう。
 とりあえず、この子はまだ中学生だ。明日の朝早く学校へ送り届けなくては。
 

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛小説

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