FC2ブログ

Stories of fate


『花籠』シリーズ・総まとめ編

『花籠』 4-1

 検索キーワード。

‘HANAMAGO’変換「花籠」‘IRAI’変換「依頼」‘SIGOTO’変換「仕事」。
 検索。

 瞬間、画面が一気に真っ暗になって訳の分からない記号や数字の羅列が画面いっぱいに広がり、超高速で何かを計算し始めたようだ。

「しまった!」

 抜けようにも、もうどんな操作も無効だった。それでもむやみに焦ったり慌てたりせずに、彼は思いつく限りのキーボード操作を繰り返し、強制的に電源を落とした。

「マズイな…振り切れたかな…」

 しばらく真っ暗になったパソコン画面を茫然と眺め、彼はため息をついた。

「IDの変更とアカウントの削除と…いや、このパソコンはもう使えない。新しいのを買おう」

 低く呟き、彼はゆっくりと立ち上がり、その部屋を後にした。



 変ね、と羽鳥(はとり)は呟いた。

 その名の通り、小鳥のように所在なさ気な小さな背中だ。オリーブ色のコットンシャツに綿のパンツ。緩くウェーブのかかった栗色の髪が背中全体を覆っている。

 その髪の隙間から真っ白が羽が覗いていてもまったく違和感はない。

「ねぇ、龍ちゃん、何か悪さした?」
「…なんだって?」
「誰かに覗き見されてるよ?」
「何っ?」
「相手を辿ってあげようか?」
「頼む」

 それまで、ソファで仮眠を取っていた龍一はガバッと身体を起こして羽鳥と、その前のパソコンを凝視する。

 明るい部屋の中に、静かなクラシック音楽が流れ、広いその部屋の大きな窓を背にして書斎机が置かれ、揺れるレースのカーテンは太陽の光を透かして緑と青のコントラストを柔らかく映し出していた。

 壁は一面、専門書が並ぶ書棚になっている。そして、部屋の中央には応接用のソファが並び、ガラスのテーブルの上には片付けられていない食事の後の皿がそのまま乗っている。

 書斎机には羽鳥が、真っ黒な革張りの3人掛けソファには半分寝ぼけた表情で花篭龍一が座っていた。

「龍ちゃん、あんまりあちこちに首を突っ込みすぎなんだって」

 マウスで器用に画面をあやつり、ボードを叩きながら、羽鳥は難しい表情でちらりとソファの彼に視線を走らせる。

「それにさぁ、いったいいつ、助手を雇ってくれるのさ? 可愛い女の子を雇ってくれるっていうからこの労働基準法違反の過酷な労働に耐えてるんだよ? 早く弥生ちゃんと話つけてくんない?」
「話しをつけなきゃならん相手が、彼女本人の前に何重にもいるんだよ、あそこは」
「この間、ローズ達が交渉してくれたんじゃないの?」
「…あれは、成果を期待する類の会合じゃないよ。単なるパフォーマンスだ。『花籠』の組織の構造をなんとなく劉瀞に伝えただけだよ。まぁ、どの程度どう伝わったのかは分からないがね」

 ふふ、とどこかいたずらっ子のような笑みを浮かべる龍一に、はああぁ、と大仰なため息をついて、羽鳥の手が留まる。

「それじゃ、何も意味ないじゃん。龍ちゃんが人使い荒いって噂でも飛び交ってるんじゃないのぉ? まったく迷惑な話だわ」



関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 紺碧の蒼
もくじ  3kaku_s_L.png 真紅の闇
もくじ  3kaku_s_L.png 黄泉の肖像
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 2
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 3
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 4
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 外伝集
もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い月
もくじ  3kaku_s_L.png 永遠の刹那
もくじ  3kaku_s_L.png Sunset syndrome
もくじ  3kaku_s_L.png 陰影 2
もくじ  3kaku_s_L.png Horizon(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png Sacrifice(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png 閑話休題
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←『花籠』 (ティータイム) 2    →『花籠』 4-2
*Edit TB(0) | CO(0)
ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←『花籠』 (ティータイム) 2    →『花籠』 4-2