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Stories of fate


『花籠』シリーズ・総まとめ編

『花籠』 (桜舞う) 3

 スミレが李緒を残して去ってから、アカシアは二人をその場に置いてどこかへ出かけ、そして程なくして戻って来て言った。

「ジャス、その子はお前の監視下に置いておけ」
「…?」
「花篭から、追って指示が来る」
「…うん、分かった」

 ジャスミンもよく分からないなりに李緒を部屋まで送り、そして、そのまま帰ると泣きそうだった彼女の様子に困って、思わず泊まってしまったのだ。

 アカシアの指示は曖昧過ぎて、どうして良いのか正直分からなかった。
 まぁ、俺に任されたんだろうな、とジャスミンは思う。
 じゃあ、ストップがかかるまでは好きにさせてもらおうかなぁ、と。
 


「桜、観に行こうか」

 とろりとまどろむ李緒の髪を撫でてジャスミンは言う。

「…え、え?」
「北の方だったらまだ咲いてる場所があるだろうから、さ。今度、君の休みはいつ?」

 李緒は慌てて身体を起こす。

「あ…あのっ、今…ちょっと調べてみます」

 突然、彼の腕から抜け出て、ベッドから出ようとしている李緒をぽかんと見つめて、ジャスミンは笑い出した。

「李緒ちゃん、後で良いよ。今、君、何も着てないよ」
「え、あ、…あ、はい」

 言われて初めて李緒はそれに気付き、かああっと耳の付け根まで真っ赤になってうろたえる。

「おいで」

 毛布の裾をあげてジャスミンは笑う。彼の顔すらマトモに見られずに、李緒は俯いたまま毛布の中に潜り込んだ。そして、「そんな端にいたら落っこちちゃうって」とジャスミンの腕に抱き寄せられて、まったくそういう状況に慣れなくて、李緒は小さく声をあげて、再度息を詰めて固まってしまった。

「桜、観に行こうね」

 耳に鼓動と共に声が直接響いてくる。李緒は、やっと言われた意味をしっかり理解して、小さく頷いた。

「嬉しい…」

 囁くような小さな呟きだったが、ジャスミンには聞こえたようで、ふっと甘い笑顔を浮かべた。
 面白いな、と彼は思う。
 こんな仔猫みたいな子、今まで会ったことがないや、と。
 手の中であっためて可愛がっていたいな。



 月が妖艶な光を放ち、月光に照らされた桜の花弁がひらりと舞った。そして、舞い散る花びらになど目もくれずにある一点を見つめて佇む黒い影が、ふわりと月光に浮かび上がった。―ように見えた。

 次の瞬間、その影は跡形もなく消えて、そこには舞い散る桜だけがふわふわと風に踊っていた。




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