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Stories of fate


ラートリ~夜の女神~

ラートリ (風と女神) 19

 ほとんど眠り続ける瑠璃の身体を抱えるようにして、間島は友人の娘を電車で北へ北へと連れて行く。どこまで? と聞くと、瑠璃は最終の駅名を言った。

 もう北国は雪がちらついていた。例年よりも早い降雪だ。
 その駅に降り立った瑠璃は、間島の腕に支えられながら、不意に顔を上げて微笑んだ。

「疾風…」

 え? と間島が目の前を見ると、いつの間に現れたのか、そこには背の高い不思議に色白の男が立っていた。まるで風を背負ってきたように、北風が吹き荒れる。

「疾風っ!」

 瑠璃は彼に抱きついた。男は柔らかい笑みで彼女を抱き上げ、間島に向かって一礼する。

「き…君が、遙の…」
「ええ」

 疾風はくるりと踵を返し、そのまま歩き去る。

「待ってくれ、そのっ…瑠璃お嬢さんは…」
「ご心配なく。また春にはそちらへ行きます。冬に採掘作業は出来ないでしょう?」

 後ろ姿のまま、彼は言った。
 あ…ああ、と間島が、突然吹きつけた北風に目をつぶり、瞬きした次の瞬間、二人の姿は消え去っていた。
 ‘君が、遙の言った風なんだね。君が、女神の恋人だったんだね。’
 間島は、二人の消えた白い大地を目を細めて見つめる。

「また、春に…」

 彼は言って、来た道を戻っていく。
 神宮寺の宝石(いし)を、その輝きを胸に抱きながら。


 
 微かに漂うコーヒーの香りに、そこに戻って来たことを感じた瑠璃は、疾風の腕に抱かれたまま、すうっと眠りに落ちた。まだ体力は戻っていないのだろう。

「遂に、戻って来たんだね」

 そう言って、髪を撫でると、不意に彼女は目を開けた。その瞳に蒼い光が過ぎる。

「あなたに逢いたかった…」

 瑠璃の顔で、瑠璃の声で、ラートリは微笑む。

「でも、ラートリ、俺は君のお姫様を愛しているよ」

 彼女はくすくす笑い、蒼い光が揺らめく。

「構わないわ。だって、同じことですもの」
「そうだね、君はいつでもそうやって我儘なんだ」
「当然だわ」

 艶やかな、華やかな笑み。瑠璃の顔に宿るその光は少女を‘女’に変える。

「あまりこの子を苛めるなよ」
「イヤよ」

 ふふん、という笑みを残して、女神はすうっと去っていく。すっかり寝息になってしまった瑠璃の身体をベッドへ横たえて、疾風は柔らかい笑みを浮かべた。

「君には昔から翻弄されっ放しだ。また、長い付き合いになりそうだね」



 風と夜とが調和し、北国の冬を彩る。
 吹き抜ける悲鳴のような風の音が、音楽を奏でているような色彩を成し、柔らかく闇に溶けていった。









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~ Comment ~


こんにちは。
ふつつかものの私ですが(?)、なんだか前回のコメントやらがお役にたてたようで喜んでいます^^
と、思っていたら、終わってしまった!!!

ふおおおこれ本当にここで終わりですか!?
(超短くてすみません、驚愕のあまりつい)
#2001[2012/04/10 17:30]  たつひこ  URL 

たつひこさまへ

たつひこさん、

そうなんです。これで終わりです(^^;
描きたかったのは実は、雪原だけだった…という訳分からなさ。
結局、あの唄のイメージだったので(あの唄自体、作品説明で挙げたあれで終わりなので)、捕えたのはそこまでで、それ以上に膨らませ切れずに終了してしまいました。
描いていたとき、けっこう気が抜けていて、人物に添いきれていなかった…というのもあるかと思います。

fateはどうも、女の子を活躍させ切れないかなぁ。
と、結論に至ったのであった…
#2002[2012/04/11 06:58]  fate  URL 

またノコノコやってまいりました^^

>描きたかったのは実は、雪原だけだった…という訳分からなさ。
なるほど、というか冒頭にも書いてありましたもんね。今までのfateさんのお話とは、展開や起承転結と言う視点から見ると毛色が違ったように感じたので、ついつい動揺してしまいすみません^^;

>fateはどうも、女の子を活躍させ切れないかなぁ
書きたい部分を書けたという意味では、気にされる必要はないかと。余計事ですが、女の子を活躍できないとかそういうことはないと思います。李緒ちゃん奈緒ちゃんetc.バッチリ活躍してたじゃないですか^^
心に浮かんだシーン(雪原)を書ききったので創作意欲がしぼむ……っていうのはよく分かります。そこからまたなにかのタイミングで膨らむことがあれば、ぜひぜひ続きというか加筆バージョンを書いていただければなぁなんて感じました。
#2011[2012/04/12 09:51]  たつひこ  URL 

たつひこさまへ

たつひこさん、

> またノコノコやってまいりました^^

↑↑↑いえいえいえ。何度でもいらっしゃいませ~

> 今までのfateさんのお話とは、展開や起承転結と言う視点から見ると毛色が違ったように感じたので、ついつい動揺してしまいすみません^^;

↑↑↑ありゃ、そうですかね??
自身ではあんまりよく分かりませんでした。
きっと、途中で興味を失った…って感じだったかも知れません。しばらく放置してしまっていた…ということも一因で(^^;

> 心に浮かんだシーン(雪原)を書ききったので創作意欲がしぼむ……っていうのはよく分かります。そこからまたなにかのタイミングで膨らむことがあれば、ぜひぜひ続きというか加筆バージョンを書いていただければなぁなんて感じました。

↑↑↑描き切った…なんてことはなくって~(^^;
これ、実は、本当はもっとコワイ話しにするつもりだったんです。別サイトで、当初『官能』ジャンルで投稿したんで。でも、その頃、いろいろゴチャゴチャがあって、官能ジャンル作品をすべて引きあげることにしたり、…ちょっとゴタゴタして心理的にもいろいろ変化があって、とことん落し込む筈の場面をカットしたり、人物の性格をかなり変えたりしたら、物語自体がここまで軽くあっさりしてしまい、最終的にどこへ落して良いのか分からなくなって、打ち切った。
はい、これが正解です~
ははははは。

今、なんだか気力がなくって、病み(闇)の深~いハナシが描けない。
自身の闇だけでなくって、社会の闇に切り込んでみたいのに、その重さ辛さ苦しさに負けてしまいそうで、ぼんやりしとります。
で、これも、当初の目論みが外れた時点で、実はupすべき世界じゃなくなってしまっていた…んだろうと思います。
いつか、「下化衆生」みたいに、かなり加筆してみたい気はしますが、まだ未定です。
でも、加筆バージョンに言及してくださって、ありがとうございました(^^)
#2012[2012/04/13 07:51]  fate  URL 

書きたかったシーン

私にもありますよ。
私の場合、主人公のただことこと、それを言わせたくて長々と小説を書いたことがあります。

今でもふっとひとつのシーン、ひとつの台詞が出てきて、それが物語になったりもします。

fateさんもどっちかと言うと、プロットを細かく立てて書かれるほうではないんですよね。
そういう意味では私と書き方が似ているかもしれません。

このお話はつまり、瑠璃ちゃんの中にいるラートリが疾風とはなじみだったというわけでしょうか。
ピントのずれた読み方をしていたらすみません。

加筆バージョンを書かれるのですか?
疾風の正体がやや不明というのもそれはそれでいいとは思うのですが、そこにスポットが当たるような加筆、続編でも、書いていただけるのだったら楽しみに待ってます。

#2173[2012/06/04 00:46]  あかね  URL 

Re: 書きたかったシーン

あかねさん、

> 私の場合、主人公のただことこと、それを言わせたくて長々と小説を書いたことがあります。

↑↑↑おおおお、そうですかっ
いや、それ、fateもよくやります(・・;
っていうか、いつもそんなもんです(^^;

> 今でもふっとひとつのシーン、ひとつの台詞が出てきて、それが物語になったりもします。

↑↑↑今、ふと思いましたが、これって、「夢」の構成に似てます。
夢も、絶対にこの短時間で見る訳ない世界を旅して帰ってくることがありますが、それって、明け方に見たほんの一部の夢を、本人が物語にまで勝手に発展させるのだという説もあるそうっす。
小説世界もそんなモンです。
たった一つのシーンを壮大な世界まで広げる!
(夢は、だけど、もしかして本当に別次元に一旦落ちているんじゃないかという気もするのだが・・・)

> fateさんもどっちかと言うと、プロットを細かく立てて書かれるほうではないんですよね。

↑↑↑どっちかって言うとどころか。
今までプロット立てたことありません(・・;

> このお話はつまり、瑠璃ちゃんの中にいるラートリが疾風とはなじみだったというわけでしょうか。
> ピントのずれた読み方をしていたらすみません。

↑↑↑はい、これはその通りです。
実は・・・を申しますと、これは後付け設定です。つまり、落とし処をそうやってくっつけて強制終了! させたんだす。
女神と呼ばれる存在、風の精霊。
そういうものは、人知を超えた別物であることに変わりはない。それをヒトが勝手に神と崇めたり、悪魔と恐れたりするだけ。ヒトにとって害を成す存在かどうかってくくりです。

> 加筆バージョンを書かれるのですか?
> 疾風の正体がやや不明というのもそれはそれでいいとは思うのですが、そこにスポットが当たるような加筆、続編でも、書いていただけるのだったら楽しみに待ってます。

↑↑↑これ、やらないかも。というか、今の時点ではやめようと思ってます。
最初、加筆しようと思ったのは、瑠璃ちゃんと家族との確執というか、その戦いのようなことを少し言及し、もっとドロドロとした家庭劇を展開しようと思ったのですが、どうもfateはそういうことに関心が薄い。
瑠璃ちゃんが言ってるように、事務的なことやお金のことを彼ら(特に継母)が引き受けて采配してくれるなら、それはそれで良いや、なのです。
彼女は、財産とか家とか利権とかにあんまり興味がなくって、むしろ、それを持つが故に翻弄された訳だから、ただ、好きな人と一緒にいたい。
瑠璃ちゃんが刃を向ける相手は、それを邪魔するやつであって、彼女から財産を取り上げようとすることには関心がないんです。
(あ、いつか申し上げてた物語の最後に言いますってことが、これでした↑)

疾風の正体。
はい、これも、ボカしたままで良いとfateも思います。じゃなくって、fateも知らんす(・・;
どうでも良いというのか(^^;

現在は過去作(主に『R指定』もの)の修正作業のみに没頭しておりますので、これも、いつか加筆・改稿に至る可能性もあります。
その場合は、大きく展開が変わって、少し別のハナシになるかも知れません。
だけど、今の筆力では加筆してもしなくてもあんまり変わりないんで、当分触ることはないかな、と思います。

こちらも、最後まで、ありがとうございました(^^)
#2174[2012/06/04 07:41]  fate  URL 

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#2264[2012/07/17 15:01]     

鍵コメ愛さまへ

ありがとうございます~
なんか、ものすごくいろいろ考えていただいて、それだけですごく嬉しいっす!!!

> これ、最終的にはある意味でダブルヒロインみたいなものになってるんですよね?

↑↑↑おお、そう言われればっ!
なんとなく「うん、うん( ゚ー゚)( 。_。)」頷きながらご指摘を噛み締めさせていただきやした。
それ、いただきます♡
加筆する際に最大限生かさせていただきます。
へへへへ。
なんか、嬉しくって何故かちょっと照れてます。(なんで?(ーー;)

> たとえば、ファンタジー要素、女神や疾風の存在の不思議さに焦点をあわせるのなら、余韻だけ残して思い切って後半カットしちゃうってのもありかなと?

↑↑↑これにも実はものすごぉく惹かれました。
なので、ちょっとどこにどう落とすのかまだ分からない~♪
 
> わたしなら、そういう方法をとるかもです

↑↑↑これ、ああ、そうかもなぁ。と感じました。
そうなんです、それも良い。
なんだか、なんでもかんでも良い! と思ってしまって、つまりは完璧に不完全だったことが、今更よく分かりました(ーー;
 
> いわゆる異世界トリップファンタジーみたいなのより、世界の宗教とか呪術みたいなのと近しいのが好きなんですよね

↑↑↑ああああ、分かりますっ
fateもそう!!
ここにいながら普通に不思議がある方が良い。
だって、実際、そういう世界ってここに、実際、あると思うから。

> また読みにきますね~☆

↑↑↑わぁいっ
fateもなかなかゆっくりした時間が取れなくて切ないっすが、近日中にお伺いするつもりです~~~~
#2266[2012/07/17 19:24]  fate  URL 

ご無沙汰しちゃってます^^

すっかりご無沙汰しています!
fateさんのサイトのトップに雪原がありますよね。きっとfateさんご自身で引かれるものがあるんでしょうね雪原に。その冷たさや静謐さ、風のぬけるかんじとか。
最初のほうの、やや危なげな仕事をなりわいにしている青年と、そこにやってきた自殺願望の少女のやりとり・・・ここいらは風景として理解できるしいいなぁと思いました。fateさんらしいし!
でも、石の利権をめぐる神宮寺でのどろどろした部分の描写はちょっぴり、らしくないというか・・・。
皆様へのコメ返信みても、fateさん自身が納得できてないんですね。
これはこれとして、またいつか雪原をテーマにした作品をお書きになってみては? まったく違った視点と発想が浮かんでくるかもですよー^^
#2287[2012/07/31 10:23]  あび  URL 

Re: ご無沙汰しちゃってます^^

あびさん、

おおおおお、お久しぶりでゴザイマス(^^)
たまに(しつこく?(^^;)、ちょこちょこ覗きにお伺いしておりました~

> fateさんのサイトのトップに雪原がありますよね。きっとfateさんご自身で引かれるものがあるんでしょうね雪原に。その冷たさや静謐さ、風のぬけるかんじとか。

↑↑↑なるほど。そうかもなぁ。
何しろ、雪国生まれ。っていうか、fateは雪から生まれたのかも知れん。
何もかもを覆い尽くす雪。
雪って、文字通りすべてを覆い尽くして、醜いモノも、汚いモノも、見たくないモノも、隠してくれる。
だけど、それは永遠ではなくて、いつか必ず雪解けがやってくる。
つまりは、時間稼ぎをしてくれているのだろうか。
浄化のための。

> 最初のほうの、やや危なげな仕事をなりわいにしている青年と、そこにやってきた自殺願望の少女のやりとり・・・ここいらは風景として理解できるしいいなぁと思いました。fateさんらしいし!

↑↑↑スゴイ!
その通りっす。
っていうか、まさにそこだけでした。fateが浮かんだ光景は。その後は、いろいろやっている内に、実は飽きて投げちゃった・・・感があって(^^;
他作家さまが、ものすごく丁寧な書評をくださり、こう描けば良かったのでは? というヒントをくださったので、そこでようやく目が覚めたというか。
手を入れるなら、そうやって構成して行きたい目標をいただきやした~(^^)

> でも、石の利権をめぐる神宮寺でのどろどろした部分の描写はちょっぴり、らしくないというか・・・。

↑↑↑はははは・・・
描けないんだなぁ、そういうお家騒動的なドロドロ~
本当はそれを極めれば、また違った意味で内容が深くなり、初の女の子活躍モノ!
ジャンヌ・ダルク張りのヒロインが登場する筈だったのにっ!
あれなんですよぉ。
男は戦い、愛する相手を守る者。
女は戦う者を支え、帰る場所を守る者っていう位置づけ、女性蔑視的な考えが実は根本にあるんだと思います(^^;
(いつか、「今、全世界の女性を敵にまわしましたね!」とか言われたこと、ありますが(^^;)

> これはこれとして、またいつか雪原をテーマにした作品をお書きになってみては? まったく違った視点と発想が浮かんでくるかもですよー^^

↑↑↑ああ、それもアリかもっすねぇ!
それから、この女神っていう設定をもう少し掘り下げて、ヒロインと絡めてみても良いなぁ、と思うだけは思ってます(・・;
ありがとうございました~(^^)
#2289[2012/08/01 07:38]  fate  URL 

面白かったです。

瑠璃ちゃんかわいいですね。

しかし女神さまもほかにやりようはなかったのか(^_^;)

ところで、「18」がだぶっているような……。
#2297[2012/08/07 17:48]  ポール・ブリッツ  URL 

ポール・ブリッツさまへ

ポール・ブリッツさん、

瑠璃ちゃん、可愛いっすか?
へへへへへ。
ありがとうございます(^^)
いつか改稿することがあったら、彼女はもう少し活躍させてあげたいなぁ、と思います。

> しかし女神さまもほかにやりようはなかったのか(^_^;)

↑↑↑こちらも改稿するときには、もっと激しく辛辣な小悪魔的な女神さまになることでしょう。
フフフフ。

> ところで、「18」がだぶっているような……。

↑↑↑あ、ほんとだ!
ありがとうございますっ
直しました~(^^;
#2298[2012/08/08 07:47]  fate  URL 














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