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Stories of fate


『花籠』シリーズ・総まとめ編

『花籠』 1-15

 昼近くになって、ようやく‘竹’の店主から連絡が入る。

「撤収だ」

 それだけで、二人はすべて理解した。あの母親は、復讐を諦めたのだろう。同じ、子どもを持つ親として、その子の親にも同じ思いを味合わせることに躊躇いを感じ、連鎖を止めることを選んだ。

 篤志が思いを寄せていた女の子は、お互い、まだほのかな想いを抱くに留まっていたため、周囲の誰も知らない付き合いかった。だから、その子が自殺をした事件を聞いても、家族はそれが原因で息子が死を選ぶほど絶望したことも知らなかった。

 自分と関わったことで、彼女は壊された。その思いに篤志は苛まれ、今まで同じように傷つけてきた多くの女の子の憾みを身を持って知った。

 攻撃は、それを強要した相手ではなく、自分へ向かった。
 優しい子だったのだ。

 母親に、すべて話したのかは分からない。しかし、恐らく、彼女は法的に相手を罰する道を見出しただろうと思われる。証拠の品は、息子の部屋の壁に貼られてあった。
 そして、あの日葬儀に現れた子が証言台に立ち、罪は立証されることとなる。



「ナオちゃん…?」

 奈緒は、その声にぼんやりと目を開けた。そこに、ローズの傷ついたような悲しい瞳を見て、彼女はほっとした。
 良かった。彼はまた私を見てくれる…。
 彼の腕に縋りつきたかったのに、腕が重くて持ち上がらなかった。

「ごめん…」

 謝られて、奈緒は、ふと不思議そうな顔をした。どうしたの? と聞きたいのに、声が出なかった。

「そろそろ時間だ」

 スミレの声が聞こえた。その声を聞いて、奈緒はようやく昨夜のことを思い出した。
 …ああ、だから、身体が重いんだ。

 恐怖、よりも、痛み、よりも、ローズの内側から聞こえる叫びのようなものに奈緒は怯えていた。狂ったように奈緒の身体を貪る彼の、その夜叉の瞳に魅せられた。自分の中にも、それに呼応するものがある、と熱い身体に抱かれながら奈緒は感じていた。

 『闇』の存在を。
 今の、優しいローズよりも、夜叉の光を宿した彼により惹かれている。そんな気がした。



「どこまで送れば良い?」
「ああ…、しばらく田舎に潜むよ」
「田舎ぁ?」
「東北方面へ頼む。適当な駅で降ろしてくれ」

 スミレはちらりと二人を一瞥し、頷いた。

「東北はもう寒いだろうな」

 親子というよりは恋人同士のように寄り添う二人のフォルムに僅かな羨望を抱いて、スミレは呟いた。
 


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

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引き込まれます

ここまで読みました。とても引き込まれます。
#2062[2012/04/27 09:49]  芋剣吐玉  URL  [Edit]

Re: 引き込まれます

芋剣吐玉さん、

おおお、こちらを読んでくださってましたか!
嬉しいです(^^)
なんとなく、これ、fateも気に入っている世界です。
へへへへ。

> ここまで読みました。とても引き込まれます。

↑↑↑とても嬉しいコメントでした~
#2063[2012/04/27 17:24]  fate  URL 

重厚なストーリー

久々のコメントです!
新社会人となったゆない。ですので、なかなか訪問できませんでした、すみません……。

さてさて、ここまで読みました!
やっぱりfateさんの創る作品はおもしろいです! 物語の中に入っていけます!
今回の話は重いテーマを扱っていますが、それをまったく不快とは感じさせない作りで、とても考えさせられると言いますか、fateさんの手腕に舌を巻いてしまいます!
また続きを読みに来ますね!!
#2080[2012/05/06 12:21]  ゆない。  URL 

Re: 重厚なストーリー

ゆない。さん、

遅くなりましたが、新社会人おめでとうございます!!!
新たな一歩。一つの区切りですね。
GWも明け、これからいよいよ本格的なお仕事が待ってるのでしょうか。
仕事は、どんな仕事でも、fateは「人をいかに愛しているか」だけだと思います(^^)
へへへへ。
ヒトを、というより、とにかく仕事にかかわるすべてに向けた‘愛’っすよ!
つながる先に愛を届けることが仕事と思います。
無理せず、あまり気負わず、楽しんで日常を生きて欲しいと思います。そして、お時間できたら、どうかどうか創作の続きをお願いいたします!

> やっぱりfateさんの創る作品はおもしろいです! 物語の中に入っていけます!
> 今回の話は重いテーマを扱っていますが、それをまったく不快とは感じさせない作りで、とても考えさせられると言いますか、fateさんの手腕に舌を巻いてしまいます!

↑↑↑いや、そんな褒められるとちょっとウロたえてしまいます~(^^;
はははは。
ありがとうございます。

> また続きを読みに来ますね!!

↑↑↑はい、お待ちしております(^^)
#2083[2012/05/07 07:25]  fate  URL 














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