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Stories of fate


『花籠』シリーズ・総まとめ編

『花籠』 1-8

 翌日。奈緒は、その日の役割を何度も反芻しながら、二人と一緒に車に乗り込む。

 ‘羽澤さくら。それが彼女の名前だ。そして、城南女子高の1年生。彼のことは学校の行き帰りでたまに見かけていて、一度、落し物を拾ってもらって好意を抱いた。’

 ぶつぶつと何かを繰り返し唱える奈緒の様子を、ローズは微笑ましい思いで見守る。

 間違いで誘拐され、命の取り引きをされ、訳の分からない犯罪の片棒を担がされそうなのに、この子は居場所を得られたことが嬉しいのだろうか。

 そんな世界を居場所と呼ぶしかない、それまでごく普通の中学生だった女の子。
 疑うことを知らない。世の中に受け入れられることにのみ、心を尽くしてきた子。

 彼女は丸一日一緒にいただけの二人の男に、奇妙な信頼を寄せていた。どこか、自分に近い空気を感じたというのか。

 コードネームが皆花の名前だ、と思ったとき、奈緒は自分も仲間に入れてもらったのだという気がしたのだろう。それまで、家の中で家族として扱われたことのなかった彼女が、何より欲しかったもの…。

 ふう、と自らの感傷に息をついて、ローズは前を見た。いや、そんなことを考えている場合ではない。

 死者の意識に自らのレベルを沿わせることはほぼ死に物狂いの苦しい作業だ。他人の意識に翻弄され、自分を見失いそうになったりする。特に、殺された人間の意識は危ない。引きずられて、戻ってこられなくなることもある。

 他人の狂気に触れるとは、そういうことだ。

 身体と意識が分離してしまわないように、その後、ローズは狂ったように女を抱く。身体に何か確かな刺激を求めないと狂いそうになるのだ。

 仕事の後、この少女は彼から引き離しておかなければならないと、運転しながらスミレは考えていた。
 

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

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