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Stories of fate


ラートリ~夜の女神~

ラートリ (閉ざされた空間) 5

 起き上がって普通に生活出来るようになると、疾風は瑠璃に、その建物を案内してくれた。寝室として使われていたその部屋の隣には小さなキッチンのようなスペースがあり、簡易的な流しとコンロがあった。そして、脇に積まれたレトルト食品のダンボール。野菜・果物のジュース。

 その更に奥はバスルームだったが、3日に一度くらいでしかお風呂は沸かさないという。そして、廊下の向かいの扉の向こうは、巨大な倉庫。奥から順に、大きなダンボールや木箱が積まれており、その中には瑠璃が使わせてもらっている洋服などの衣類や缶詰製品など、それとハングル語表記の中身の分からない物や、猛獣でも囲うような巨大な檻のようなもの、小型の電化製品などがある。

「輸出入の仲介のようなことをしているからね。でも、あまり深く詮索しない方が良いよ、瑠璃ちゃん。」

 にやりと笑う疾風の顔を見上げ、瑠璃は特に不快感はなかった。もう、彼女にとって、何もかもがどうでも良いことだった。

「どこで何をしても構わないけど、週に一度、取り引きが行われて倉庫の方には人が大勢訪れる。君は、見つからないようにしていた方が良いだろ? あまり倉庫には近づかないようにした方良いよ。中にはあまりお行儀の良くない連中もいるからね」

 瑠璃は頷いた。そう、彼女は外の人間に見つかる訳にはいかなかった。もう二度と、外の世界には戻れない。

 パソコンはあってもインターネットには接続されていないのか、疾風がメールのやり取りをしている様子も、サイトに接続している様子もない。彼はいつも、何か数字の並んだ書類を画面で眺めてチェックをしているだけだった。

 電話もないそこには本当に外との連絡手段はないように思えた。しかし、むしろそれに瑠璃はほっとしていた。
 逃げ出した瑠璃を、きっと彼らは諦めてはいまい。捕まえようと行方を追っているだろう。

 いや、それとも、もう瑠璃は死んだと思っているだろうか。邪魔者が消えたと、ほっとしているだろうか。
実際、疾風が見つけてくれなければ、彼女は間違いなく死んでいた。

 そう、…神宮寺瑠璃は、もう死んだのだ。
 

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


描写がかなり好みです。
瑠璃ちゃんの人物像がかなり僕の中では美化されていますが、イメージでは、髪はストレートの茶髪で、背がかなりちっちゃくてツルペタで、細っこいイメージで満開です。
まあ、それは置いておいて、ほんとに描写が好きです。勉強になります。よく少ない言葉で作れるものだなぁと思いました。
続きも読みにきますね^^
#2027[2012/04/16 20:05]  小織 悠  URL  [Edit]

小織 悠さまへ

小織 悠さん、

お仕事、お忙しいと思いますのに、こんなところまでいらしていただきまして、ありがとうございます!!!

> 描写がかなり好みです。
> 瑠璃ちゃんの人物像がかなり僕の中では美化されていますが、イメージでは、髪はストレートの茶髪で、背がかなりちっちゃくてツルペタで、細っこいイメージで満開です。

↑↑↑おおお、そんな風にイメージしていただき、なんだか嬉しいです。
そういえば、あんまり人物の描写ってしないので、すべてご想像通り! って感じですなぁ。ははは。

> まあ、それは置いておいて、ほんとに描写が好きです。勉強になります。よく少ない言葉で作れるものだなぁと思いました。

↑↑↑うおおおおうっ、そ、そんなっ
なんだかお褒めいただくとウロたえてしまいます(^^;
ただ、これ、ちょっとシリキレトンボ的になってしまっておりますので、小織さんが、ラストに辿り着くまでに加筆出来るかなぁ…ってシロモノです。
一旦は終了しておりますが、ちょっと試行錯誤してみます。
#2031[2012/04/17 07:58]  fate  URL 














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