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Stories of fate


Sunset syndrome

Sunset syndrome (挙式) 23

 そして。
 俺は1週間で退院し、その後、数日で式場を手配し、大急ぎで衣装合わせをし、…と何が何だか分からない目まぐるしい日々を過ごした挙句。

 今思うと、よく式場なんて取れたもんだと思ったが、披露宴なしの挙式のみだったせいらしい。簡易的に式場に設置されている神前ではなくて、神社を舞台に、白無垢と羽織袴という純和風の式とした。

 で、なんで気付かないのか?
 そう言われても、参列者も身内の俺一人なんだから、そういうモンなのだろうか、とあまり深く突っ込んで考えなかった。

 何を? 俺が羽織袴を着るらしいことを。

 顔の包帯はなんとか外れて、腕や足は衣装で誤魔化される。座り方や動きは、まぁ、短時間で、しかもゆっくりやれば良いだろう、とか言われながらも、なんだって付添い人…というか家族までそんな儀式に参加しなけりゃならんのだ? と思うものの、そんな疑問も質問も受け付けない気合の入った夕陽を見ていると俺が口を挟める隙もなく。

 そして。
 挙式当日。白無垢に身を包んだ夕陽に見とれていて、俺は父の格好がスーツ姿だとかなり経ってから気付いた。

 い…良いのか、親父。
 なんだか、和洋折衷でオカシイぞ?

 俺は頭に疑問符が浮かんだまま、リハーサルで教えられたことをひたすらこなしながらも、本気で途中まで気付かなかった。

「はい、では写真を撮りますから、花嫁さんと花婿さん、それからお父さまはこちらへ」

 写真家の若い男性がにこやかに俺たちを誘導する言葉に、ようやく違和感の正体を知る。
 花嫁さん、花婿さん、までは良い。しかし、俺はお父さんじゃね~ぞ? いくら何でも、まさか、俺が夕陽の父親と間違われている訳ではあるまい。とすると、こいつは何かを勘違いしているぞ?

「…おい、花婿さんって…誰だ?」

 となりの夕陽に俺は、こそこそ聞いた。すると、夕陽のムッとした表情が返ってくる。いや、フザケている訳じゃなくって、俺は単に、本当に混乱しているのだ。

「はい、では、こちらを見てくださいね~」
 ぱしゃり。

 そして。神前での三々九度。指輪の交換。

 おい、なんで、俺がここにいるんだ?
 段々、頭が真っ白になってくる。
 ちょっと待て~~~っ
 いったい、誰の結婚式をしてるんだ?

 助けを求めようと周囲を見回しても、誰一人違和感を抱いているらしいやつはいない。神主さんも巫女さんも仕事を淡々とこなし、滞りなく式を進めている。父は目を潤ませてにこにこしているだけだし、夕陽に至っては、真っ白なおしろいに紅を刺して、ただただ綺麗な日本人形になっている。いや、彼女が綺麗なことは知っていた。知っていたが、本当に綺麗だった。

 だからっ、見とれている場合じゃないって!
 おい、誰か俺の心の中の嵐に気付いてくれよっ!




 別の意味でぐったり疲れ切った俺は、婚姻届を出す段階になって、ようやく知ったのだ。
「…俺、夕陽と結婚したのか? え? あれ? ええと…どゆこと?」




 数日後、親父は、意気揚々と機上の人となり、俺は…
 俺は、何も変わらずに夕陽とあのアパートに暮らしている。いや、さすがに飲み屋のバイトだけじゃなくって、就職活動は始めたが。
 店長は、「なんだ、やっぱりそうじゃないか」と笑ってくれた。
 



 ちょっと待て。
 おい。
 …親父が帰ってきてからの、あの葛藤と苦悩の日々はなんだったのか?
 いや、そもそも夕陽が親父の婚約者だと名乗ってここに来たのは…
 



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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[コメディ・恋愛

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