FC2ブログ

Stories of fate


Sunset syndrome

Sunset syndrome (父の帰宅) 17

「いや、悪い、親父。…そうでも言わないと連絡つかなくて…」

 俺が謝ると、父は泣き笑いの笑顔を浮かべて、「いや、良いんだよ」と困ったように微笑んだ。母が亡くなったときにも、ここまで取り乱したりはしなかったから、俺は、正直、俺がもし先に逝っても、父はけっこう淡々としているもんだと思い込んでいた。こんな風に、我を忘れるほどうろたえることになるとは思わなかった。

 俺は、こんなにも父に愛されていたのかと知って、どこか照れくさくて、そして、今回の不用意な電報を心から反省した。まぁ、いろいろな意味も含めて。

「…で、結婚することにしたのかい?」

 夕陽の淹れたお茶を飲んで一息つくと、父は俺と夕陽を見つめて、にこにこと微笑んだ。目尻にまだ少し涙の跡が残っていて、俺は心臓がちくりとする。そして、ボケッと聞き流していた父の言葉に、「えっ?」とようやく思考が追いついた。

「結婚? …もう、そんなことまで進んでるの?」
「そのために父さんを呼んだんじゃないのか?」
「…いや、俺は…別に。夕陽がそうしたいなら…」

 父は、夕陽に向き直る。お盆を抱えたまま、それでも幸せそうな表情の夕陽はとても眩しいものだった。

「これで、また日本に帰ってくる理由が出来たんだね」

 日本へ帰ってくる理由? あれ? じゃあ、親父は夕陽を連れて行かないのか? と俺は不思議に思って見詰め合う二人にそっと聞いてみる。

「夕陽は…親父と一緒に行かないの?」

 父は、湯飲みをゆっくりと呑み干し、夕陽もそれを黙って見つめていた。なんだか、二人は言葉を交わさなくても、深い理解を得ているようで、俺は、思わず次の言葉を呑みこんで、「あ、じゃあ、俺、ちょっと酒買ってくるわ」と外へ出た。二人の空間にいることが息苦しくなっていた。


関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 紺碧の蒼
もくじ  3kaku_s_L.png 真紅の闇
もくじ  3kaku_s_L.png 黄泉の肖像
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 2
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 3
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 4
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 外伝集
もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い月
もくじ  3kaku_s_L.png 永遠の刹那
もくじ  3kaku_s_L.png Sunset syndrome
もくじ  3kaku_s_L.png 陰影 2
もくじ  3kaku_s_L.png Horizon(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png Sacrifice(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png 閑話休題
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←Sunset syndrome (父の帰宅) 16    →Sunset syndrome (父の帰宅) 18
*Edit TB(0) | CO(0)
ジャンル:[小説・文学] テーマ:[コメディ・恋愛

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←Sunset syndrome (父の帰宅) 16    →Sunset syndrome (父の帰宅) 18