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Stories of fate


Sunset syndrome

Sunset syndrome (父の消息) 11

「ごめん、月斗くんをこんな風に巻き込んじゃって。私…日本に戻るべきじゃなかった。やっぱり、このまま宮坂さんを探しに行くよ」

 夕陽は、特に大きな怪我もなく、目を覚ますと起き上がれるようになり、すぐに退院となった。俺も数日後には無罪放免になったのだが、その僅か数日の入院中、夕陽は俺の病室で俺の手を握って言ったのだ。

「待てよ。君が謝ることなんてないよ。君は何にも悪くないだろう?」

 ベッドに横たわったままの俺の言葉に、夕陽は悲しそうに微笑んだ。

「ううん。私の過去は、まだ清算されちゃいない。日本に戻ってきたりしちゃいけなかった。…バカだね、私。会ってみたかったんだ、月斗くんに。…本当にごめんね。私がいなくなれば、もう手出ししてこなくなると思う。今まで、ありがとう」
「夕陽っ」

 夕陽はにこりと微笑み、俺の額にチュッと口付ける。

「待てよっ…イテテ!」

 慌てて起き上がろうとして、俺は腹部に感じる鈍い痛みに思わず呻いた。

「動いちゃダメだよ、月斗くん」

 夕陽は甘い笑顔を作った。それまで見たことのない、それは‘慈愛’と表現される瞳だった。母親が生まれたばかりの赤ん坊をあやすときのような、父親が子ども達の遊ぶ姿を目を細めて見つめるような、そんな深い愛情を湛えた瞳だった。

 その瞬間に知った。
 彼女にとって、俺は、父の息子。『家族』でしかなく、そして、同時に何よりも誰よりも守りたい相手なのだということを。

「待って、夕陽」

 俺は、言った。

「ひとつだけ、親父と連絡が取れる方法がある」
「…え?」
「俺が死ぬことだよ」


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[コメディ・恋愛

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