「妊婦さんは、セックスはダメでしょう?」
そろそろ夏の気配が漂い始める6月。遼一の怪我も完治し、菜月と亨も少しずつ落ち着いてきた頃だ。その日、久しぶりに集ったメンバー。さらりと、ゆりが投げてくる質問に、遼一も何のことはない、という感じで答える。
「安定期に入ってしまえば、ある程度は平気みたいだよ。出産間直になってお腹が大きくなってくるとまた別の意味で無理だけどね。でも、してないよ、今は。」
こらこらこらっ、遼一!
なんで、そんなことを公衆の前で平然と話すかな?
「じゃあ、どうしてんの? 欲求処理は?」
菊川が興味本位、という表情で尋ねる。
「プロの女性を相手にすれば良いじゃん」
大輔が真面目な顔をしてジョッキを空ける。
「バッカじゃない? そんなことしたら即、離婚よ! ねぇ?」
宮川が菜月と当の本人の美久に視線を向けて同意を求める。
「そりゃあね、その時期くらい、我慢しな、って感じだよね」
菜月も美久の隣で笑う。その日、珍しく亨が遅れていた。
「そうだね、俺も、もう美久ちゃん以外の女には欲情しないから、そういうのは無理だね」
「何、そのノロケ~」
菊川がゲラゲラ笑い、ゆりが呆れて、はいはい、と軽くあしらう。
「それに、別に欲求処理に困ったことなんてないよ。挿入はしなくたって、いろいろ方法はある訳だし」
だからっ
なんで、そういう話題を平気で続けるかなっ?
美久は、お酒も飲んでいないのに、もう耳まで真っ赤だった。聞こえない振りもさすがに限界に近づいて、そろそろと席を移動しようとしていた。
「って、例えば?」
「じゃあまず、聞くけど、たとえばどういうとき、相手に欲情するのさ?」
「やっぱり、あられもない姿を見たときじゃない?」
「僕はあれだね、恥らう姿を見たときかな」
「男の人ってそういうものなの?」
「じゃ、女はどういうとき?」
「相手の目…かな」
「何、それ? どういう意味?」
「やりたい、ってときの目!」
「遼一はどうなの?」
ああ、帰りたい…。
この集まり、いつからこんな集団になったんだろう…。
「俺は、美久ちゃんが悶えている顔を見るときかなあ?」
「り…っ、遼一っ!」
美久は遂に我慢が出来なくなって、声を上げる。
「あ、違うね。俺はとにかく美久ちゃんを見てると、いつでも欲情するよ。その腰の線とか、感じ易い首筋のラインとか、触れたときに柔らかい内もものキワとか想像するとね」
美久の抗議を軽く無視して、遼一のセリフはどんどんエスカレートする。
「それって、単なるノロケ以外の何物でもないじゃん」
「違うよ。つまり、相手を喜ばすことが出来ればある程度満たされるんじゃない? って話をしたいだけ」
遼一は、ふと振り返って、もう、何も聞かなかったことにしようと決めている美久の顔をちらりと見つめる。
「俺は、そうだね、キスだけでイカせられるよ?」
「え~っ?…それって、どっちがすごいの?」
「美久ちゃん、感度が良すぎじゃない?」
もう、何も聞かない、聞こえない。
美久は呪文のように唱えながら、すっかり菜月の後ろにまわって、背を向けている。
「でも、それは誇張でしょう? いくら遼一でも」
段々酔いがまわってきたメンバーは留まるところを知らない。
「違うよ。疑うなら、今ここで実践してみせようか?」
「おお~っ! 良いぞ、やってみせろよ。実技講座で」
「そうそう、俺たちも将来のために勉強しておかなきゃ」
な…っ、ななな、何、言ってんの?
美久があまりの展開に呆れて思わず逃げようとしたとき、遼一の手が、美久の腕を捕まえる。
「良いよ」
いっ…良いよ、じゃないよっ、何、言ってんの? この酔っ払い!!!
ぐい、と遼一に身体ごと抱き寄せられて、美久は悲鳴を上げる。
「バカ、バカ、遼一のバカ! やだっ!!!」
「ちょっと、いい加減にしてよ、遼一」
さすがに呆れて菜月が助け舟を出す。
「美久が本気で涙目になってるでしょっ」
菜月の剣幕に押されて肩をすくめた遼一から美久を奪い返して、菜月はよしよし、と美久を抱きしめる。
「美久はあんたみたいな変態じゃないんだからね!」
「菜月ちゃん、…変態はないでしょう」
「あんたは、超! ど級のSじゃない」
「そんなことないよ。まあ、少しはその傾向はあるけどさ。でも、美久ちゃんもMの素質あるんだけどなあ」
「…まあ、その気(け)がありそうなことは私も認めるけど」
「ええっ?何、言ってんの? 菜月っ」
途中で裏切られそうな気配に、美久は動揺し、一同は爆笑する。
そこに、ようやく亨が現れた。
「ごめん、遅くなった。…あれ? なんだ? 随分盛り上がってるじゃん」
そろそろ夏の気配が漂い始める6月。遼一の怪我も完治し、菜月と亨も少しずつ落ち着いてきた頃だ。その日、久しぶりに集ったメンバー。さらりと、ゆりが投げてくる質問に、遼一も何のことはない、という感じで答える。
「安定期に入ってしまえば、ある程度は平気みたいだよ。出産間直になってお腹が大きくなってくるとまた別の意味で無理だけどね。でも、してないよ、今は。」
こらこらこらっ、遼一!
なんで、そんなことを公衆の前で平然と話すかな?
「じゃあ、どうしてんの? 欲求処理は?」
菊川が興味本位、という表情で尋ねる。
「プロの女性を相手にすれば良いじゃん」
大輔が真面目な顔をしてジョッキを空ける。
「バッカじゃない? そんなことしたら即、離婚よ! ねぇ?」
宮川が菜月と当の本人の美久に視線を向けて同意を求める。
「そりゃあね、その時期くらい、我慢しな、って感じだよね」
菜月も美久の隣で笑う。その日、珍しく亨が遅れていた。
「そうだね、俺も、もう美久ちゃん以外の女には欲情しないから、そういうのは無理だね」
「何、そのノロケ~」
菊川がゲラゲラ笑い、ゆりが呆れて、はいはい、と軽くあしらう。
「それに、別に欲求処理に困ったことなんてないよ。挿入はしなくたって、いろいろ方法はある訳だし」
だからっ
なんで、そういう話題を平気で続けるかなっ?
美久は、お酒も飲んでいないのに、もう耳まで真っ赤だった。聞こえない振りもさすがに限界に近づいて、そろそろと席を移動しようとしていた。
「って、例えば?」
「じゃあまず、聞くけど、たとえばどういうとき、相手に欲情するのさ?」
「やっぱり、あられもない姿を見たときじゃない?」
「僕はあれだね、恥らう姿を見たときかな」
「男の人ってそういうものなの?」
「じゃ、女はどういうとき?」
「相手の目…かな」
「何、それ? どういう意味?」
「やりたい、ってときの目!」
「遼一はどうなの?」
ああ、帰りたい…。
この集まり、いつからこんな集団になったんだろう…。
「俺は、美久ちゃんが悶えている顔を見るときかなあ?」
「り…っ、遼一っ!」
美久は遂に我慢が出来なくなって、声を上げる。
「あ、違うね。俺はとにかく美久ちゃんを見てると、いつでも欲情するよ。その腰の線とか、感じ易い首筋のラインとか、触れたときに柔らかい内もものキワとか想像するとね」
美久の抗議を軽く無視して、遼一のセリフはどんどんエスカレートする。
「それって、単なるノロケ以外の何物でもないじゃん」
「違うよ。つまり、相手を喜ばすことが出来ればある程度満たされるんじゃない? って話をしたいだけ」
遼一は、ふと振り返って、もう、何も聞かなかったことにしようと決めている美久の顔をちらりと見つめる。
「俺は、そうだね、キスだけでイカせられるよ?」
「え~っ?…それって、どっちがすごいの?」
「美久ちゃん、感度が良すぎじゃない?」
もう、何も聞かない、聞こえない。
美久は呪文のように唱えながら、すっかり菜月の後ろにまわって、背を向けている。
「でも、それは誇張でしょう? いくら遼一でも」
段々酔いがまわってきたメンバーは留まるところを知らない。
「違うよ。疑うなら、今ここで実践してみせようか?」
「おお~っ! 良いぞ、やってみせろよ。実技講座で」
「そうそう、俺たちも将来のために勉強しておかなきゃ」
な…っ、ななな、何、言ってんの?
美久があまりの展開に呆れて思わず逃げようとしたとき、遼一の手が、美久の腕を捕まえる。
「良いよ」
いっ…良いよ、じゃないよっ、何、言ってんの? この酔っ払い!!!
ぐい、と遼一に身体ごと抱き寄せられて、美久は悲鳴を上げる。
「バカ、バカ、遼一のバカ! やだっ!!!」
「ちょっと、いい加減にしてよ、遼一」
さすがに呆れて菜月が助け舟を出す。
「美久が本気で涙目になってるでしょっ」
菜月の剣幕に押されて肩をすくめた遼一から美久を奪い返して、菜月はよしよし、と美久を抱きしめる。
「美久はあんたみたいな変態じゃないんだからね!」
「菜月ちゃん、…変態はないでしょう」
「あんたは、超! ど級のSじゃない」
「そんなことないよ。まあ、少しはその傾向はあるけどさ。でも、美久ちゃんもMの素質あるんだけどなあ」
「…まあ、その気(け)がありそうなことは私も認めるけど」
「ええっ?何、言ってんの? 菜月っ」
途中で裏切られそうな気配に、美久は動揺し、一同は爆笑する。
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