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Stories of fate


下化衆生 (R-18)

下化衆生 (千年の罪) 89

 美久が真理子と共に病院に到着すると、坂本が二人を出迎えた。

「先生、こちらが、遼一の…」
「ああ! あなたが、美久さん!」

 坂本は感激した表情を浮かべて美久の手を両手で握る。

「…はじめまして」

 美久はほとんど抑揚のない声で、それでも精一杯微笑もうと努力した。美久の小さな手を坂本の大きな温かい手がしっかりと覆って、彼は青い顔をしたまま目を細める。

「真理子お嬢さま、…ああ、美久さんは、本当にお母さまによく似てらっしゃいますね」

 感慨深げに、坂本は一瞬、遠い瞳をした。彼は…、いや、彼だけが、真理子と遼一の母であるその人を看取ったのだ。真理子は無言で頷いた。そして、美久は知った。初めて会った日に、真理子が美久を見て言いかけた言葉が何であったのかを。

「先生、遼一には…?」
「はい、こちらです」

 坂本は、二人を連れて玄関を入ってすぐの一般病棟らしい階段を駆け上がる。時々、パジャマ姿の患者さんや白衣の看護師さんとすれ違って、急ぐ三人はぶつかりそうになる。
 3階までを一気に上った三人は、ナースステーションの前を通り過ぎて、一番奥の部屋の前で立ち止まった。

「遼一さん、入ります」

 坂本がドアをノックして、その扉を開けた。

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

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