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Stories of fate


花籠 外伝集

蒼天の彼方 2

「庸! 誰がそんな許可を与えたんだ!」

 数日もすると、庸はいつの間に誰に用意させたのか、病院のベッドの上に横になったまま、ダンベルで腕の筋肉を鍛えている。扉を開けた途端、その光景に驚いた劉瀞が、思わずカッとして怒鳴った。

「総帥、ここは病院ですから」

 苦笑して竜胆は彼を宥める。ここ数日、劉瀞は彼を呼び出して運転手代わりにしている。もちろん、『花籠』を通して報酬を払ってはいるのだろうが、竜胆はもともとは別組織の人間だ。よく文句がこないものだと庸は呆れる。

「総帥、毎日いらしていただかなくてけっこうです」

 無表情で、庸はダンベルを劉瀞とは反対側の枕元に置いた。

「では、私はこれで…」

 敏感に庸の不機嫌を感じ取って、早々に竜胆は戻っていく。この後、大抵、劉瀞は専属の運転手を待って借りているマンションに戻るのだが、運転手は今、夕方まで別の仕事も行っている。劉瀞も、そろそろ単独で動くようになっていて、庸の不在の間、秘書代わりの人間が欲しいのだろう。

 『スムリティ』には、そういう仕事が出来る人材がいない。だからと言って、何でもかんでも『花籠』に頼るのはどうなのだ、と庸は気に入らないのだ。

「寝たきりだと身体がなまります」
「もう少し回復して、医者の許可が出てからにしろ」

 備え付けてあるソファに腰を下ろして劉瀞はため息をつく。

「今、仕事の方はどうなっているんですか?」
「…お前が心配することはない。まずはしっかり療養しろ」
「でしたら、こんなに頻繁にお訪ねにならなくてけっこうですから…」
「俺が来たくて来ている。気にするな」

 庸は、無表情でソファの上の彼を見つめた。劉瀞は、いつもするように、手を目の前に組み、テーブルに肘を乗せている。その光景を見つめて、彼の瞳の光はふっと緩んだ。

「何がおかしい」
「いえ」

 長い間、まったく思い出さなかった過去の記憶を辿って、庸は、目を閉じた。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[短編小説

~ Comment ~


おおお、ダンベル!
よかった、回復が早くて・・・じゃなくって!

もっとちゃんと養生しなさい、庸~!ww
劉瀞の気苦労がわかりますね^^

「よう」というやつは、往々にして相棒を困らせるタイプのようで^^
(この場合はボスですね)

物静かなこの庸って、魅力的ですね。
どんな過去の回想をするのか、楽しみにまた来ます!
#1910[2012/03/19 17:39]  lime  URL  [Edit]

limeさまへ

limeさん、

> 「よう」というやつは、往々にして相棒を困らせるタイプのようで^^
> (この場合はボスですね)

↑↑↑はははは。
庸も、実は、そういう意味では困ったやつかも。
でも、ローズのような危うさはあんまり感じない。なんでだろう?
ローズの抱く危うい感じはないけど、もっと研ぎ澄まされた切なさのようなモノはあるかな。
でも、何故? ということを彼は分かっていて、どうすれば良いのか、を知っている気がします。
訓練というより、もっと根本的な性質とかの違いだろうか?

> 物静かなこの庸って、魅力的ですね。

↑↑↑劉瀞が敵わない人物って今思うとけっこういますね。
まずはお姉さま、そして、美咲ちゃん、更に庸。
どんだけ? って感じっすね。
あっちの龍ちゃんはきっと羽鳥だけだろう。

庸の過去が一番辛いかも。っていうか本当は、ジャスミン以外、だいたいは傷を負ってここに辿り着いているから、ノーテンキなのはやつだけさ(--;
#1912[2012/03/19 18:43]  fate  URL 














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