FC2ブログ

Stories of fate


下化衆生 (R-18)

下化衆生 (瀬田家) 77

 月が変わって3月。まだ、時折、寒い風が吹く春先、遼一は美久を連れて里帰りをする。
 いろいろ心配事があって、遼一は梶原にも同行を頼んでいた。そして、同じ時期、衣装合わせなどでやはり帰郷していた亨と菜月の実家の近くのホテルに宿をとった。

 菜月や亨の家は街中に程近かったのに対して、遼一の家屋敷は周囲を見渡せる高台の上にあった。その屋敷に至るには一本道しかなく、途中、切り立った崖の上を通らないといけない。見晴らしは良いが、何故、好き好んでそんなところに住み続けるのか疑問を抱くほどだ。

 遼一の父は、母が亡くなって1年後に事故でこの世を去っていた。
 父の死を悲しんだ記憶がない。いや、彼を嫌っていたつもりはなかった。しかし、嫌悪を抱いていたことを亡くなった瞬間に知った。

 自らを見ているようで、遼一は、父を呪いたいほど憎んでいたと知った。
 母よりも、家を選び、祖母に従った弱い男を。

 父を失って、祖父が再びグループを率いた。そして、更に祖父が亡き後、祖母が総帥を引き継いでいる。しかし、もう、祖母も年だ。

 祖母が引退を表明し、遼一は指名を辞退して現在に至っているのだ。瀬田家恒例の年始の祝賀パーティで、新総帥誕生と、遼一の婚約発表をもくろんでいた祖母の思惑は打ち砕かれ、遼一は東京に残った。

 遼一が大学進学と共に家を出てから、再三にわたり現総帥である祖母から戻ってくるようにとのコンタクトがあったが、遼一は頑として受け入れずに昨年末に至るまで、一度たりと帰郷しなかった。

 今回、姉が、義妹に会いたいと遣いをよこしたので、姉に美久を会わせるために戻ったにすぎない。美久にとって最大の味方となり得るのは彼女以外になかったから。

 梶原とホテルで別れ、遼一は美久を連れて、迎えを寄越すという申し出を断ってタクシーで家に戻った。


関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png 紺碧の蒼
もくじ  3kaku_s_L.png 真紅の闇
もくじ  3kaku_s_L.png 黄泉の肖像
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 2
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 3
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 4
もくじ  3kaku_s_L.png 花籠 外伝集
もくじ  3kaku_s_L.png 蒼い月
もくじ  3kaku_s_L.png 永遠の刹那
もくじ  3kaku_s_L.png Sunset syndrome
もくじ  3kaku_s_L.png 陰影 2
もくじ  3kaku_s_L.png Horizon(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png Sacrifice(R-18)
もくじ  3kaku_s_L.png 閑話休題
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←下化衆生 (ジョーカー) 76    →下化衆生 (瀬田家) 78
*Edit TB(0) | CO(0)
ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~















管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←下化衆生 (ジョーカー) 76    →下化衆生 (瀬田家) 78