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Stories of fate


下化衆生 (R-18)

下化衆生 (雪の宿) 57

 息苦しさではっと目覚め、遼一の顔が目の前にあって、美久はぎょっとする。

「ん…っ!」

 蕩けるような深く甘いキスにふさがれ、美久は身動きすら出来ない。遼一の手は髪を内側から梳くように、ゆっくりと撫でている。
 美久の舌は好いように弄ばれ、いつの間にか溢れる唾液は唇の端から流れ落ち、美久の首筋を濡らしていた。気が遠くなりそうに頭の芯が痺れ、身体から力が抜けてくる。

「やっと目が覚めたの?」

 ようやく唇を解放して遼一は笑う。

「や…りょ…いち。イヤ…」

 お酒のせいなのか、温泉につかり過ぎたせいなのか、或いは部屋の暖房が強すぎるのかもしれない。美久は身体の中にこもった熱が疼いて再度意識が飛びそうだった。

「イヤ? 何が? …眠っちゃダメだよって言ったのに」
「だって、ここ、あったかくて、気持ちよくて」
「俺の傍があったかくて気持ち良かったって?」
「そんなこと言ってないっ」
「じゃあ、何?」
「温泉が…、ひゃ、ちょっとっ」

 遼一の唇が胸の頂に触れ、思わず彼の髪を掴んで美久は叫んだ。

「ダメ…っ、や、ぁぁぁっ」

 暴れる美久の腕を捕えて、遼一は乳首を乳輪ごと口に含んだ。舌先でくりくりと頂を弄ばれて、美久はアルコールと温泉の熱とで益々敏感になっていた身体が激しく反応する。

 解けて広がった髪の毛がつやつやと白いシーツの上に模様を描いて波打つ。白い、白い世界に埋められた愛憎。遠い、遠い、過去の残像。しっかりと結び合った手の中に、繋がった先に、二人は一瞬、眩暈を感じるほどの、息も吐けないほどの苦しい闇を共有した。

「…え?」

 と美久は、はっと目を開けた。
 心臓がドキドキと音を立てて、そして、吹雪が視界の一切を遮っているような心細い気持ちになった。

 そして、あまりにも静かな目で見下ろしている遼一の切ない視線と出会って、世界から音が消えてしまったような錯覚を得て言葉を無くした。

「遼一?」
「うん」

 遼一は、ただ頷いた。そこに、何の感情も読み取れないような不可思議な瞳をしたまま。

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

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