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Stories of fate


下化衆生 (R-18)

下化衆生 (樹木は樹液を) 52

 ゆっくりシャワーを浴びてから、遼一はあどけないほど安心し切った顔をして熟睡している美久の横にそっと添い寝のようにもぐりこむ。

 人のいる気配が美久に柔らかな眠りを与えていたらしい。
 その、痩せてますます小柄になった身体をそっと抱いて、遼一は触れるだけの優しいキスをその唇に落とす。

「…りょ…いち…」

 不意に、美久は身じろぎし、言葉と共に涙が頬を伝う。
 目を覚ましたわけではない。その、無意識の深い寂しさ、深い想いにうたれる。

「美久ちゃん…」

 遼一は初めて、ぐっと胸を突かれたような感覚を得た。それまでの人生で初めて味わう感覚。誰かを愛しいと思う気持ち。

 その甘い想いと共に常に存在する、失うかも知れないという恐怖。それが、いつでも彼を駆り立てる。留めておくために、繋ぎとめておくために、相手を支配したいという欲望に火が点く。

 呪われた血の証。
 サディスティックなほど、相手を求める激しい想い。

 それに耐え切れずに何人もの女の子が彼から離れていった。今まで、彼のもとに留まった子は皆無だった。
 或いは、遼一自身、それまで彼のそばにいた誰のことも、本当に愛してはいなかったのではないかとも思う。
 遼一はそっと美久の涙を指でぬぐって、額に、頬に優しいキスを降らせた。

‘セックスは絶対ダメよ’

 菜月の声が響く。

 遼一はふっと笑みを浮かべたまま、美久の身体をただキスだけでそうっと愛撫する。その刺激は柔らかく優しく、深い眠りに落ちている美久はほとんど反応できない。まったく無抵抗の美久の、菜月のパジャマを借りているらしい淡い花柄の前ボタンのスウェットを、遼一はそっと唇を這わせながら脱がせていく。

 そして、最後の下着まですっかり外してしまうと、遼一は多少乱暴なほど強く美久の身体を抱きしめた。
 美久の身体をすっぽりと包み込むように。
 深く、その胸の中に。

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

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