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Stories of fate


下化衆生 (R-18)

下化衆生 (闇を探って) 44

「美久、明日、集まるんだけど来られる?」

 遼一が消えて一週間。菜月から携帯電話に連絡が入る。部屋に帰って、ぼうっとテレビを観ているときだった。

「え? …ああ、うん」

 答えながら、美久は、ふと卓上カレンダーに視線を移して、もう一週間が過ぎたことに驚いていた。

「亨が遼一に連絡つかないって言うんだけど…、今、そこにいるの?」
「…ううん。私も一週間会ってない。」
「え?」

 菜月が息を呑む気配が分かった。そして、菜月が亨に話しかける声がもれ聞こえてくる。

「美久も会ってないんだって、この一週間。…じゃあ、やっぱり…」

 やっぱり?
 菜月は何か心当たりがあるんだろうか?
 そうだ、何か分かるとしたら、同郷のこの二人だ。

「菜月? もしもし、何か知ってるの?」

 思わず美久が叫ぶと、不意に電話は亨に代わった。

「美久ちゃん? …大丈夫?」
「遼一は、どこ?」

 大丈夫? という亨の言葉に、美久は初めて自分が弱っていることを知った。何故、こんなに自分のことが分からなくなっているんだろう?

「…いや、僕もはっきりしたことは。たぶん、実家に戻っているんだと思うよ。今週の週末、僕と菜月もいろいろ打ち合わせで戻ることになってるから、確かめてきてあげるよ」
「私も行く」

 思わず言ってから、亨よりも、美久自身が唖然、とした。
 何、言ってるの?私…。

「…そうか、そうだね。うん、一緒に行く?」

 亨の慰めるような優しい声に、美久は慌てて首を振る。

「あ、ううん。ごめんなさい。やっぱり良い。…私もいろいろ忙しいし」

 二人はきっとお互いの両親や親戚に挨拶にまわったり、式場の下見とか、そういうことで帰るに違いないのに、そんなところについて行けるわけはなかった。

「良いんだよ、美久ちゃん。一緒に行ってみよう?」
「ううん、本当にごめんね。大丈夫」

 美久は言い、努めて明るい声で話題を変えた。

「明日は何時? 誰が集まれそうなの?」




 初詣に一緒に行こう、と遼一は言った。
 今でも、耳に残っている、彼の甘やかに低い声で。

 会いたいのか?
 実は、それすら明確には分からない。

 ただ、美久は無性に不安だった。寒かった。いや、寒い、気がするのだ。
 美久は、冬が嫌いだった。


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