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Stories of fate


花籠 4

花籠 4 (終幕) 50

 庸は無事、手術が終わり、麻酔が効いて眠っていた。一命は取りとめたものの、彼も意識が戻るのか微妙な状態だった。何より、出血の量が多すぎた。搬送されてすぐに輸血が開始され、輸血を継続しながらの手術だった。

 『花籠』からの終結宣言を受けて、翌明け方に劉瀞はやっと庸の病院へ向かう。それまで息を潜めていた『スムリティ』関係者たちもそこでようやく日常を取り戻した。

 ‘アリョーシャ’の遺体と彼の部下は、向こうの組織の依頼で秘密裏に国外へ運び出され、その後の処理は向こう任せだった。不知火はたっぷりと依頼量を払い込んだだけで得るモノは何もなかった。それでも、この世間を騒がせた数々の事件に関与していたことが発覚するくらいなら、沈黙を守るしかない。

 金で雇われただけのヤクザ者や国外の残党も、指示系統が消えてからは鳴りを潜め、見合った利益がもう見込めないと知って、それぞれの世界に戻っていったらしい。

 多くの傷跡を残して、戦いは終わった。
 



 数日後、久しぶりに施設を訪れた劉瀞は、美咲が子ども達と遊んでいる様子を目を細めて見つめていた。中庭の芝生の上、女の子たちが草花を摘み、男の子たちはそこら中を駆け回っていた。当然、美咲は男の子と一緒に鬼ごっこをしている。

 ふと視線に気付いて、美咲は彼を振り返った。

「…劉瀞」
「元気そうだな」

 思わず駆け寄ってきた美咲を、周囲の目を気にせずにぎゅっと抱きしめて、彼は言った。
 二人を見て、男の子たちがはやしたてている。

「ちょ、ちょっと離してよ、劉瀞」

 腕の中でもがく美咲を更にきつく抱きすくめて、彼は唇を噛んだ。

「…お前が無事で、良かった」

 美咲は言葉を失って身動きを止めた。

「…何か、あったの? …弥生? 弥生は無事?」
「え?…ああ」

 やっと彼女の身体を解放して、劉瀞は笑った。

「弥生は大丈夫だ。けど、まだしばらくは戻らないよ。あっちはしばらく混乱が続いて、収束には時間がかかるだろうから…」

 劉瀞の弱々しい笑顔に、美咲は不安になった。

「どうしたの?」
「…いや、何でもない。大丈夫だよ」
「誰か…そういえば、庸は? 彼は?」

 劉瀞は切なそうな目をして、それには答えなかった。そしてふと青空を仰ぎ見る。え…? と美咲もその空を見上げた。
 そこに…?



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~ Comment ~


庸、良かった・・・
美咲ちゃんはやはり劉瀞のオアシス。

もう誰も欠けてはいけないですよ。
誰かが欠けることによって均衡が崩れるんですから。
バランス取り直すの大変でしょう。

これからは立て直しに集中できるように。
(それもなかなか大変そうだ)
#1887[2012/03/15 09:31]  けい  URL 

けいさまへ

けいさん、

> 庸、良かった・・・
> 美咲ちゃんはやはり劉瀞のオアシス。

↑↑↑おお、それって良い表現です!

> これからは立て直しに集中できるように。
> (それもなかなか大変そうだ)

↑↑↑少しは龍ちゃんも働いてもらわんと!
今後はしばらくハトリにこき使われることであろう!
弥生ちゃんはなかなか返してもらえないかもな~~~(^^;
はははは…
庄司が会いに行きゃ良いんだよ!(まぁ、本部へは行けないだろうから、どっかで待ち合わせるとかな!)
#1888[2012/03/15 10:23]  fate  URL 

少しずつ、花籠やスムリティに日常が戻って来ましたね。
奈緒ちゃんはまだ、予断を許さない感じですが。

庸はきっと大丈夫でしょう。
元気になるさ。
ね!

大元の黒幕がまだどっかで息をしてるようですが、
また良からぬ事をしでかすのでしょうか。
その時の為に、花籠はやっぱり必要なのかも・・・。
これも、龍一次第なのかもしれませんね。
#1889[2012/03/15 18:01]  lime  URL  [Edit]

limeさまへ

limeさん、

これで、この物語としては終結です。
一組織の力では精一杯だったんでは…って感じですね。もともと花籠も、ましてスムリティも攻撃用の組織ではなかったから。

犠牲はやはりどうしてもあったでしょう。
そんなウマクはいきませんでした。

今後を外伝で語るかはまだ不明です。
浮かんでいる光景はまだあるんだけど…

> これも、龍一次第なのかもしれませんね。

↑↑↑龍ちゃんは、今後、いろいろ動く必要あるでしょう。
少しは働けよ! って感じっすね(^^;
#1891[2012/03/16 07:02]  fate  URL 














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