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Stories of fate


花籠 4

花籠 4 (ピアノソロの調べ) 47

 椿をタクシーで家まで連れ帰って、出迎えた3人を見て、悠馬は目を瞬いた。

「どっちが奥さん?」

 いや、一度会っているのだから顔は知っていた。しかし、二人の女性の空気がそっくりだった。見た目、それほど年齢も分からなくて、一瞬、悠馬は本気で混乱したのだ。

 椿も一瞬、李緒の姿に驚いた。あれ? この子、どっかで会ったぞ? と。

「は、春樹さんっ、ど…どうしたの? 大丈夫?」

 悲鳴こそあげなかったが、青ざめて駆け寄ってきた女性と、背後で息を呑む女の子、そして、若かりし椿にそっくりな男。

「いや、ああ、お前もどっちがどっちなんだか、分からんなぁ…」

 悠馬の間抜けな言葉に椿はムッと苛立ち、ジャスミンは悠馬ににこりと挨拶して父の身体を一緒に支えた。

「お世話になったようで、悠馬さん」
「薫くん? 君もしばらく見ない内に、椿にそっくりになったなぁ。」

 その言葉に李緒も茫然と二人を見つめている。ジャスミンから聞いてはいた。しかし、本当に声も姿もそっくりで、あまりに驚いて、僅かに頭をさげただけで、彼女は挨拶の言葉すら忘れていた。

「春樹さん…」

 椿の血だらけ、傷だらけの姿に泣きそうな深雪に、悠馬は微笑んで答える。

「大丈夫ですよ、深雪さん。こいつはけっこう頑丈ですから」
「あ、ありがとうございました」

 慌てて深雪は彼に礼を述べる。

「深雪さんに話し掛けるなっ」
「父さん、ちょっと落ち着いて真っ直ぐ歩いてよ」

 おろおろしながらも、一階のリビングの扉を開け、李緒は深雪の傍らで救急箱の準備をする。

「李緒ちゃん、ありがとう。後は大丈夫、母さんがやるだろうから。悠馬さんにお茶でも用意してくれるかなぁ?」

 よいしょ、とソファに椿を座らせて、ジャスミンは包帯を抱えて立っている李緒にそう声を掛けた。彼女は心配そうに一同を見つめていたが、頷いてキッチンへ向かう。

 深雪があたふたと椿の怪我の具合を調べている傍で、ジャスミンは彼女の手まで血に染まるのことに眉をひそめた。

「父さん、まずはその血、洗い流してきなよぉ、手当てはその後で良いんじゃない?」

 ジャスミンに言われて、そうだな、と椿は立ち上がる。血塗れではあったが、実はほとんど‘アリョーシャ’の返り血だ。同じ手技を使うジャスミンには分かったのだろう。足元はかなり危なげだったが、動けないほどではないようだ。夫に付き添って深雪もバス・ルームの方へ消え、ジャスミンは改めて悠馬にお礼の言葉を述べた。

「ありがとうございました、悠馬さん。…終わった、んですよねぇ? 大分、ヤバかったんでしょ?」
「いや、椿は実力は充分だよ。俺は一瞬の隙を作ったに過ぎないからね」
「でも、それがなかったら恐らく父は今ここにいなかった」

 にこりと悠馬を見つめるジャスミンに、悠馬は、ふふふ、と笑った。

「君は妙に勘が良いね」
「そうですかぁ?」
「あの子は…あれかい? 椿の十数年前の仕事のあの子かい?」
「あれぇ? なんで知ってるんですかぁ?」
「羽鳥に聞いたんだよ」

 ああ、とジャスミンは微笑んだ。

「羽鳥って、小さな女の子だって、本当ですか?」
「いや、俺も会ったことないんだよ。ほぼメールのやり取りのみ。言葉遣いはともかく、異様に頭の回転は良いね。今、常に龍一の傍にいるのは彼女くらいだろう。そういえば、『スムリティ』から彼女に助手を一人雇ったって聞いたけど」
「助手?」
「まぁ、ていの良い羽鳥の遊び相手だろう。そこそこ使える子ではあるらしいけどね。それに、龍一は一石二鳥を狙ったんだろう。羽鳥の助手を得ることと、その子を『花籠』本部に保護して護ることと。彼女は総帥のお気に入りの幼なじみだそうだ。狙われる危険性は極めて高いらしい。あそこはなんだかんだ言って主要メンバーが必ず巡回するし、周囲の護りは完璧だ。ああ、それから―」

 ふと思い出したように悠馬は言った。

「『スムリティ』のあの子…なんて名前だっけ? 劉瀞の側近の若い子…ああ! そう庄司くん。彼が今回裏でいろいろ動いてくれたらしいよ」

 ジャスミンは、ふうん、と頷いた。彼の表情は読みづらい。それは、ジャスミン自身が自らの感情を捉えていないから、ということもある。

 悠馬は話題を変えてみる。

「君たち父子(おやこ)はしかし、女性の好みが恐ろしいくらい同じなんだな」
「そんなことないですよぉ。俺、そんなに好みってないし」

 途端にジャスミンに表情が生まれる。そうか、あの子の話題は彼にとって感情を生み出すほど幸せな存在なのか。

「じゃあ、寄ってくる子が似通っているのか…」

 さあ? と、それなのに、どうでも良さそうにジャスミンは肩を竦める。照れている訳ではないらしいことに、むしろ、悠馬は温かい気持ちになって微笑みを返した。椿のように守るべき家庭を持たない彼には、息子などという存在は不思議だ。それでも、旧友の幸せは見ていて良いものだと彼は思う。

 そこへ、李緒が紅茶を用意して持ってくる。深雪も李緒も、丁寧にお茶を淹れる。紅茶の専用のポットで茶葉を蒸らしてその場でカップに注ぐのだ。

「あ、悠馬さん紅茶で良かった?」
「俺は飲み物にこだわりなんてない。美人が淹れてくれるものは何でもOKだよ」
「…ああ、なるほど」
「何がなるほど?」

 にこり、とジャスミンは微笑んだ。

「父さんが悠馬さんを嫌う訳が分かった」
 

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~ Comment ~


悠馬は人の女にちょっかいを出す奴なんだ?
それは嫌われるでしょ。
悠馬、女神がお相手してあげるから、人のものはやめときなさい。(どうよ?)

深雪さんも椿がボロボロになって帰ってくるなんて、びっくりしたでしょうね。

でもこれで、終わった、んでしょうね、fateさん。
この幸せ家族の幸せが続きますように。

私もここで李緒ちゃんのいれる紅茶をすすらせていただきたい・・・^^
#1864[2012/03/12 19:51]  けい  URL 

けいさまへ

けいさん、

> 悠馬は人の女にちょっかいを出す奴なんだ?
> それは嫌われるでしょ。

↑↑↑いや、そういう訳ではないんじゃ…
どうだろう? 単に椿の反応が面白いからからかわれているだけ。しかも、単に悠馬は女性には優しいって男なんだと…思ってましたが、実はそういうやつだったんだろうか…(・・;
それはイカンでしょう!

> 悠馬、女神がお相手してあげるから、人のものはやめときなさい。(どうよ?)

↑↑↑女神さまだって、人妻では~~~

> 深雪さんも椿がボロボロになって帰ってくるなんて、びっくりしたでしょうね。
> でもこれで、終わった、んでしょうね、fateさん。
> この幸せ家族の幸せが続きますように。

↑↑↑今回の戦いは、ってことですが、終着したんだと思います。
まぁ、窮鼠猫を噛むってやつで、死に物狂いの集団にちょっかい出しちゃいけませんぜ。
と、いうことをきっと学んだであろう。

> 私もここで李緒ちゃんのいれる紅茶をすすらせていただきたい・・・^^

↑↑↑おおお、珍しく李緒ちゃんは素直で可愛いキャラなので、きっと、喜んで淹れてくれるであろう!!!
きっと、深雪さんが調合して李緒ちゃんがじっくり淹れてくれた紅茶はおいしいだろうぜぃ(^^)
#1868[2012/03/13 07:18]  fate  URL 

ここは、ヤバイ決闘をした後とは思えない平穏な時間がながれてますね。
この余裕が、彼らの強さなのかも。

しかし、椿、ここでようやく思い出したのかあ~~。李緒ちゃんのこと。
遅いぞ~~w

そうか、椿が春樹なんですね!
どこで登場するのかと思ったら。
なんか、春樹と薫がそろったのが、私的に楽しい(すいません^^)

彼らをつけ狙う黒幕も消え、花籠にも穏やかな時間が戻って来るんですよね。
怪我した人もみんな。・・・あ。

奈緒ちゃんは??

#1879[2012/03/14 09:49]  lime  URL  [Edit]

limeさまへ

limeさん、

椿や悠馬にとっては、それまでの仕事の続き程度なんだろうから、それほど動揺してないのかね。
そういう世界が日常ってどんななの?(^^;
なんだかんだで、李緒ちゃんも巻き込まれてしまいました。
はははは。

> そうか、椿が春樹なんですね!
> どこで登場するのかと思ったら。
> なんか、春樹と薫がそろったのが、私的に楽しい(すいません^^)

↑↑↑fateはずっと前から楽しかったのサ。
ふふふふ。
春樹くんと薫さんの絡み、なんだか妙にいろいろ楽しかった!!!
こっちの春樹と薫はなんと! 父子なんで~~~

> 奈緒ちゃんは??

↑↑↑よくぞ、思い出してくださいました。
はい、最後まで彼女は引っ張ります。
#1880[2012/03/14 11:57]  fate  URL 

ほぇ~~~~~>w<
とりあえずよかったぁ。
まだ犠牲者だす気かと本気で心配になりましたよ>w<
あったかい帰れる場所かぁ。
そんな場所があるから正気を保っていられるのかもしれないね。
あとは安心して読めそうだ^^
#1927[2012/03/21 11:18]  あび  URL 

あびさまへ 3

あびさん、

> まだ犠牲者だす気かと本気で心配になりましたよ>w<

↑↑↑ふふふふ。
実はちょっと考えたのだが、後処理が面倒になってやめました。
っていうより、fate自身が耐えられなかった。はははは…

ジャスミンと李緒ちゃんが出てくるとfateもほっとします。
なんとなく、この空間はあったかそうだ。
弥生ちゃんもそんな空気抱いているかな。

描き終えて最後に思ったのが、実は、これって、主人公は、奈緒ちゃんと李緒ちゃんだったのか…という感慨でした(^^;
(そ、…そうだったのか???)
#1930[2012/03/21 11:42]  fate  URL 














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