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Stories of fate


花籠 4

花籠 4 (オーケストラの奏で) 35

 次々、メンバーからあがってくる情報を龍一と共有しながら、羽鳥はどんどん彼の指示を更に送り返していく。その、情報の管理を弥生は手伝っていた。弥生の部屋に端末が置かれ、羽鳥から引っ切り無しに情報が送られてくる。それを分類し、ファイリングし、外付けのハードディスクに落としていく。外部端子に落とした情報はどんどん削除されていく。決してインターネット上に情報が漏洩しないための苦肉の策だった。

 こうまでしても、‘竹’は襲撃された。どこからか情報が漏れていたのか、彼の油断があったのか。

 そして、店の跡地はもはや元型を留めていなかった。その日、東北の‘梅’が訪ねた筈だったが、彼女の行方も分からない。

「龍ちゃん、今、流れ込んでいる不穏分子はロシア系が一番少ない。でも、それは全権を一人に委嘱したからじゃないかと思う。あれだけの組織が、前回の『スムリティ』への報復以降、動きがないのも妙に気にかかる。きっと本国の地下で報告を待っているんじゃないかな。そして、一番、要員を使って動いているのはチャイニーズ。これは日本の昔の赤軍派のようなものと繋がっているからだよ。そこに取って代わって向こうに日本人協力者がいるらしい。…龍ちゃん、もう、一刻の猶予もないよ。まだフライングかも知れない。でも、あたしは7-3で北欧だと思う。チャイニーズやましてイタリー系じゃない。ジャスミンから直であがってきた李緒ちゃんの感じた‘氷’が気になる。…どう思う?」
「彼女の能力がどんなモノか、実はまだよく分かってないからな」

 龍一は‘竹’の捜索に出ているコスモスからの連絡を待ちながらも、少し考え込む。

「不知火で決まりだよ。‘検索’で引っ掛かってくるのも、あそこだけだし。今回、SETAグループは関与していないよ。あそこの動きって、恐らく内輪モメに過ぎないと思う。たとえ、海外から殺し屋を雇ったとして、あそこは今外へ目が向く状態じゃないんじゃないかな」
「ああ、それは‘松’もそう言ってたよ。ただ、…もしもそれが本当に‘アリョーシャ’なら、たかが日本企業のトップに不用意に姿を晒し匿ってもらっているとは考えにくいんだ」
「じゃあ、…チャイニーズだと思うの? あのハーフの殺し屋?」
「あいつは毒物使いだ。…今回の通り魔のような事件を、例え部下がいたとしても起こすようには思えない。しかも、やつは協力者を必要としない」
「龍ちゃん。ここで考えてても、もう意味ないよ。調べることは調べつくした。ローズからの報告はまだだけど、ここで確かめようよ」
「…不知火本社か?」
「まずは、そこ。それから、もう幾つか関連のホテルがある。白崎喬は外して良いと思う。あれは単に使われていただけだし。きっともう関わっていない」
「調べる場所が増えると椿に負担がかかる」
「調べるだけなら、コスモスにもアカシアにも協力を要請出来るよ」
「もし、当たりだった場合、彼らに太刀打ちは出来ない」
「でもっ! …じゃ、どうするの?」

「どこにいるのかの確証が欲しい。そして、本当に不知火と繋がりがあるという確証が欲しい」
「龍ちゃん!」
「…ああ、分かってる。このまま時間が延びれば、それだけ犠牲が増える」
「そうだよ。ここだって、いつ突き止められるか分からない。向こうは相当の人数で動いている。そこまで本気を出してきているんだよ。こっちも同じ気持ちで迎え撃たないと勝てないよ」
「…分かっているよ、羽鳥」
「椿を失うくらいなら、自分が逝こうと思ってるんでしょ」
「…」
「あたしのことも、少しは考えてよっ」
「お前のことを考えない訳はないだろう?」

 弱々しく笑う龍一に、羽鳥は唇を結んで睨み返し、ぷい、と横を向いた。

「椿に不知火本社に行ってもらう」
「羽鳥!」
「‘松’に伝えるよ」

 龍一は何かを言いかけ、しかし、そのまま口を閉じた。
 そして、龍一の瞳が暗く光った。

「わかった。椿に連絡を…」

 今回、二人のメンバーを失ったことが、彼には大きな傷となっていることは想像に難くない。羽鳥にもそれは分かっていた。こういう地位にいる人間には珍しく、彼は人材を人として大事にする人間だということも。自分を信頼して個人情報を預けてくれた相手を理不尽に奪われたということに、彼は相当の衝撃を受けているのだ。

 そして、‘竹’を失ったことは、彼にとって片翼を失ったに等しいほどのダメージだろう。3つの店の内、抱えるメンバーが一番多いのも、仕事の数が一番多いのも‘竹’だった。首都圏に位置するのだから当然と言えば当然で、そして、店主との付き合いや信頼も相当のものがあった筈だ。

 更に、‘梅’の所在不明。

 それまで、ほとんどのことを羽鳥や各店の店主に任せ、仕事の割り振りだけをして気ままに過ごしていた彼が、あの通り魔事件からほとんど眠れていないのを見ていた。狙われているのが自分だと知ったときも動じなかった彼が、メンバーが襲われたと知った瞬間、初めて怒りを露わにして「チクショー」と叫んだ。

 その声が、あれほど悲痛に響いたのは、気のせいではなかったのだ。
 そして、今回のこの事態である。

「龍ちゃん、自分で動こうとか考えないでね」

 ちらりと視線を流して、羽鳥は釘を刺す。

「後継を誰にしようか、なんてまだ早いからね」

 一瞬、動きを止めて羽鳥を見つめた龍一は、くくっと喉の奥で笑った。

「いや、そろそろ引退して子作りでもしようかな、と思ってさ」
「誰と?」

 冷ややかな羽鳥の言葉に、龍一は暗い笑いを宿した。

「冗談だよ」


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


龍ちゃんは動かないほうが良い。
椿や周りを信頼しているなら任せたほうが良い。

羽鳥、椿を動かそうとしている・・・やるなぁ~
ただのイケイケ姉ちゃんではないのですね。

龍ちゃん、ま、おいしいコーヒーでも。
うちのカフェのマスターを出張に出しましょか?
#1758[2012/02/29 16:06]  けい  URL 

けいさまへ

けいさん、

応援メッセージ? ありがとうございます。
fateとしてはこいつ、何もしな過ぎじゃろう!!
って思ってたんですが、まぁ、見えないところで何かはやってるんであろう(--;(ほんとか?)

> 龍ちゃん、ま、おいしいコーヒーでも。
> うちのカフェのマスターを出張に出しましょか?

↑↑↑是非、お願いしたいっす!
ああああ、マスターのおいしいコーヒーが飲みたい~~~
(いや、fateにじゃないって。)
#1765[2012/03/01 07:10]  fate  URL 

こういう龍ちゃんみたいな人の下で働けたら最高ですよね。
「一丁、頑張ったるか!」って部下のモチベーションがあがりますもん。

私がかつて勤めていた会社は、それはもう、社員を私物化して、奴隷や召使いのように扱っていましたからね。
まあ、それは特別な場合としても、
なかなかこういうリーダーはいないように思いますね。
#1806[2012/03/04 16:38]  ヒロハル  URL 

ヒロハルさまへ

ヒロハルさん、

> こういう龍ちゃんみたいな人の下で働けたら最高ですよね。
> 「一丁、頑張ったるか!」って部下のモチベーションがあがりますもん。

↑↑↑おお、そうっすか? それは龍ちゃん、喜びます(^^)
彼が『花籠』を立ち上げた理由のようなものが羽鳥の言葉に寄って出てきますが、彼もきっと居場所が欲しかったんでしょう。

> 私がかつて勤めていた会社は、それはもう、社員を私物化して、奴隷や召使いのように扱っていましたからね。

↑↑↑今後はそういう会社、経営者は淘汰されていきます。
時代も生き物です。
生き残るためには、自らの魂レベルを引きあげていかないと。
fateなんて真っ先に抹殺されるだろうから、次の時代では、こういうやつは抹殺されるんだぜ、と教訓にしていただきたいと切に願うのである(^^;

龍ちゃんは、特別偉い訳でも立派な人間でもなくって、むしろ、たった一つ、「‘ヒト’を愛している」だけです。基本、仕事にはフザケたやつで、すべてを周囲の優秀な人材に任せっきりで、本人は遊んでます(・・;
(今は珍しく指揮を取ってますが、それはやんなきゃならんからであって、必要ないとバックレます~)
#1809[2012/03/05 08:12]  fate  URL 














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