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Stories of fate


花籠 4

花籠 4 (奏でる旋律に乗せて) 25

 李緒を家に送り、ジャスミンは‘竹’に戻った。

「写真を撮ってきたか?」
「うん、ばっちり」

 データを店主に渡すと、彼はすぐにそれをパソコンに落とし込んで羽鳥に送信し、更に白崎の顔写真をプリントアウトした。

「これが、不知火グループの異端児か」

 店主がレジ脇に置かれたパソコンを操作している間に、勝手に店の奥の畳の部屋に上がりこんだジャスミンは、座り込んで足を伸ばしている。そこは店主が一般の常連客などを招きいれる空間だ。隅には座布団が積まれている。そこで近所の細かな情報を仕入れたり、拡散したりしているのだ。そして、その奥にある階段から二階が彼の生活空間だった。

「グループの異端児なんかに何の用があるのぉ? 俺、疲れちゃったよ」
「現在、不穏な動きのあるのが不知火グループとSETAグループ、どちらもそこそこ大きなグループ企業で…今回、殺し屋の手引きをしたのが、この二つのどちらか、或いは両方と我々は見ている。とりあえず首都圏に本社を置いている不知火に接触を試みて、もしかして白崎に接触してくる人物にターゲットがいるんじゃないかと思っただけだよ。彼は異端だから、もしかして、君の彼女は肝心な空気そのものは捕え切れてないかも知れないが、それはそれで仕方なかろうな。人選もギリギリだったし、まだデビュー戦だ」

 店主は、ジャスミンに折りたたみテーブルを出すように言って、珍しいことにお茶を淹れてきた。彼はメンバーとこんな風に時間を過ごすことはしない。ジャスミンは旧知の椿の息子という点で特別なのだ。しかし、仕事の振り分けに私情を挟むことはないし、基本的に彼への直接の連絡もしない。無用な接触は避けている。今夜はすでに夜半を過ぎ、人の目がないことに安心しているのだろう。

「ターゲットは誰?」
「まだ分からん。外国人であろうことは牡丹が予測している。そして、羽鳥もそれは拾い上げたらしい。…恐らく、旧ソビエト連邦の負の遺産。それと、アジアの地下組織。その辺だろう」
「…うへぇ、ロシアの殺し屋? アジアのマフィア?」
「人種の特定が出来れば、自ずと相手は特定されるんだがな」
「李緒ちゃんを、そんなのに接触させたくないなぁ」

 ジャスミンは、店主が入れてくれたお茶をすうっと喉に流し込む。

「ねぇ、町を歩いていて、すれ違ったりする確率あるの?」
「そんなに不用意に外へ出ることはないだろ。…だが、気を付けるに越したことはない。彼女を一人にしないようにした方が良いだろうな」
「…うん、そうだね」

 ジャスミンは何事かを考えていたが、ふいっと立ち上がった。

「じゃ、俺ぇ、帰るね」
「ああ、おやすみ」

 ジャスミンはひょい、という身のこなしで畳の部屋を下りて店の玄関へ向かい、外の闇を見つめた。

「ねぇ、スミレってそういえばあのとき、何で李緒ちゃんを見つけたんだっけ?」
「さあ、詳しいことは何も聞いとらんな。お前と連絡を取りたいと言われただけだったし」
「じゃあさ、そんとき、スミレは何の仕事してたんだっけ?」
「花篭からの依頼で、別組織の連中と会合を持った帰り際だったと思うが」
「その別組織って、確か親父がちょっと前までいたところだよねぇ?」
「…それが?」
「今回、何かそっちの絡みがあるのかなぁと思って」

 おっとりと柔らかい印象で誰でも騙されてしまうが、実はジャスミンは妙に勘が良い。李緒とは別の意味で相手の気を読む。そして、人物や事象を一瞬で把握する。それは女性特有の第六感に近いかも知れない。

 店主は無言でその背中を見つめた。

「もし、そうなら、あっちも何か協力してくれてるんだよねぇ? 牡丹が殺られそうになったり、李緒ちゃんが襲われそうになったり、けっこう被害が大きいよね? アイちゃんもそれ絡みで行方不明だし…、さすがに俺も防御一辺倒じゃいられなくなりそうだよ。攻撃は引き受けるけど、それ以外の協力は要請したって良いよねぇ?」

 ジャスミンは苛立ちを声に表したりはしない。だけど、青い怒りがゆらりと身体の奥にくすぶっているのが分かる。怒鳴ったり怒りを表情に表したりしない分、そして、その感情に自覚がない分、彼の冷たい炎はそれに触れるものを凍りつかせる。

「その通りだな、花篭には言っておくよ」

 うん、と背中で答えて、ジャスミンは闇に溶けて消えた。

 ‘竹’は羽鳥に連絡を入れ、灯りを消そうとしてふと窓の外に視線をやった。そのとき、何かが赤くちかりと光ったのが見えた。

 次の瞬間、店の中に衝撃音が響き、飛び込んできた何かが爆発した。一瞬で店の中は炎と煙に包まれた。


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~ Comment ~


ジャスミンと面識ありのけいです。

ってか、’竹’さん! どーなってるんですかっ!!

色々突っ込みたいけど、我慢します。

ジャスミンは良い子だ。KY(気を読む、の方)ですね。

ジャスミンの鋭さと身のこなしに今後の期待大です。

・・・ジャスミンが飲むのはジャスミン茶?

ちょとまて、みんな、そう思わなかった?

えー、みんなって誰ぇ~~・・・すいません。。。
#1667[2012/02/19 09:41]  けい  URL 

けいさまへ

けいさん、

‘竹’そうなんですよ。
今回、牡丹もそうだけど、…この世界、何が不幸を招くかって…
「仲間を想う優しさ」だったりしてます。(←ダメじゃん(--;)

> ・・・ジャスミンが飲むのはジャスミン茶?
> ちょとまて、みんな、そう思わなかった?
> えー、みんなって誰ぇ~~・・・すいません。。。

↑↑↑ぎゃあああああっ
…その内、けいさんが喜ぶ姿が目に見えるようです…

っていうか、安直過ぎるだろう、ジャスミン…

#1669[2012/02/20 07:01]  fate  URL 

おお~。
穏やかな時間だったと思ったら。
竹、大変じゃないですか。
ねらわれてたのか??宣戦布告?

さすがのジャスミンも、これは本気で怒るんじゃないでしょうか。

ちらっとジャスミンの口からスミレの名前が・・・。
ジャスミンとスミレやローズの絡みも出てくるんでしょうか。
それも楽しみです。
#1718[2012/02/24 23:52]  lime  URL  [Edit]

limeさまへ

limeさん、

そういえば、今、茫然としましたが、そうだった。
ジャスミンがいなくなってすぐなんだから、なんで彼が気付かなかった?

おおおう、ヤバいぞ~~~
いや、気付かなかったんです。
そういうことにしておいてください(--;

ジャスミンは、椿の息子なんで、いろいろ情報が集まり易いので、他メンバーのこともチラリとは知ってるんだけど、普通は他のメンバーってあんまり他の人間を気にしません。
知らない方が良いので。
なので、こういう反応ってジャス特有のもんす。

今回は、庄司とかがちらほら動き回る程度かなぁ。
#1721[2012/02/25 06:04]  fate  URL 

おいおいおいおい。
こりゃあ、かなり過激なことになってきたじゃないっすか。

ジャス、穏やかなでほわんとした雰囲気を持ちながら、なかなかのキレ者ですな。
その辺りのギャプがまたカッコいいです。

でも個人的に好きなのはやっぱり黒椿かな。
#1731[2012/02/26 15:39]  ヒロハル  URL 

ヒロハルさまへ

ヒロハルさん、

おおおおおう、黒椿ファン発見!!!
なんか、嬉しい(^^)
実は、けっこうfateも彼を気に入ってたりする。

はい~、ここから更に重くなります。
心の準備をしておいてくださいませ~~~
#1732[2012/02/26 17:51]  fate  URL 














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