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Stories of fate


花籠 4

花籠 4 (序曲) 20

 龍一の周囲には各店の店主(50~60代、松は100歳くらい)の他に、コンピューター管理の羽鳥(性別・年齢不詳)と今は『スムリティ』に籍を置いている悠馬(男性・40歳前後)、そして情報収集のプロ(人数・構成不明)が控えている。

 他に、椿と恐らく他に数名、暗殺のプロが待機している状態だ。そして、それを把握しているのが龍一本人だけで、彼は情報をパソコン管理をしない偏屈なので、むしろ、情報漏えいし難い。

 もしかして、龍一は日本国籍すら持っていないのかも知れない。

 そうなると、政府も把握出来ないし、個人としての認識・識別も不可能、税金の支払いなどから追うことも無理だろう。

 彼は古から続く奇妙な日本独特の一族。その末裔。しかし、それを知っているのも恐らく数人の店主、それから創設に関わったごく一部のメンバーのみであろう。





 ‘梅’にスミレから緊急の連絡が入ったのはローズが発って数時間後のことだった。

 そして、同時に、‘梅’が傍聴していたローズ達の隠れ家で事件が起こっていた。侵入者が仕掛けにはまって怪我を負ったらしい。少なくとも数人の声が聞こえていた。彼らは何か罠を仕掛けようとして、逆にローズの罠にはまったようだ。プロにしてはお粗末だ。相手はよほどなめてかかっているのか、捨て駒なのか。

 しかし、その盗聴自体が罠である可能性もある。仕掛けの存在も、盗聴器の存在も見抜いていた別の人物がいたら。ローズの罠にはまったバカの他に、それをカムフラージュに使って更に巧妙な仕掛けを施していったかも知れなかった。当分、あの隠れ家は使えない。いや、処分した方が良いのかも知れない。

 ここ数十年、否、ここに店を構えてからほとんど出歩いたことのなかった店主が突然、店を閉めて、鍵を掛けた。

「出かけるよ、チェリー」
「え、えっ?」

 店の奥で必死に何かを誤魔化そうとするかのように在庫生理に没頭していた奈緒は、表のシャッターを閉める音に、幾分、疑問は感じていた。しかし、店を閉めていたとは思わなかった。
 それでも、奈緒は一瞬の後には覚悟を決めた瞳で彼女を見上げた。

「行きます」

 ふっと笑みを見せて店主は小さなバッグを彼女に手渡す。

「これはドラえもんのポケットだ、困ったときには開けてみな」
「はい」

 余計な質問も詮索もせずに奈緒は微笑んだ。どこへ? とも何故? とも聞かなかった。ローズが今どこでどうしているのか、真っ先に知りたいことはそれであろう。しかし、今現在手の届かない場所にいる彼の状況を知ることは、奈緒にとって冷静さを失うことになりかねないことを、双方とも分かっていた。

 二人はこっそりと裏口から外へ出て、裏にあるいつも閉まったままの倉庫のような建物の扉の前に立った。

「ああ、運転するなんて何十年ぶりかね」
「…えええっ?」

 懐かしそうに目を細めて、店主は取り出した鍵で扉を開けて中へ入る。真っ暗な倉庫の中は何も見えない。外で待つように言われていた奈緒がそこに立っていると、内側からがちゃがちゃと鍵を外す音が聞こえてきて、扉の脇のシャッターがガラガラと上がってきた。そして。そこには見るからにボロボロのレトロな造りの乗用車が一台まだ冬眠から覚めやらない様相で鎮座してあった。

「だ…大丈夫、なんですか?」
「まぁ、動かしてみれば、身体が覚えているだろ?」

 あっけらかんと店主は笑うが、奈緒は、初めて彼女に対して不安を抱いた。やり方さえ知っていれば自分が運転した方が断然良い。早急に運転免許を取得する策を講じてもらおう、と。

 中は埃だらけでエンジンがかかるのか不安だったが、整備はされていたのかも知れない。少し怪しい音がしたものの、エンジンは軽快な音を立てて動き出した。

 そして、彼女の運転は意外に上手かった。ここ最近では、奈緒はスミレが運転している車にしか乗ったことがなかったが、彼ほどではないにしてもそれほどハラハラするような展開にはならずに車は一路、南を目指した。ただ、高速を飛ばす彼女のスピードは半端じゃなくて、カメラのあるスピード取締り地点を正確に把握していて、それ以外は奈緒が言葉を失うほどの速さで走り抜けた。

「…あの、何か…そんなに急ぐ理由でも…」

 次々追い抜いていく車の列を横目で眺めながら、奈緒はドキドキしっ放しだった。

「ああ、まぁね。スミレが待ってるよ」
「スミレ…ですか、はい」

 ちらりと奈緒に視線を流して店主は笑った。

「残念そうだね」
「あ、そんなことは。…ただ―」

 ローズはどうしているんだろう? と奈緒は思う。なんだか、ずっと胸騒ぎのようなものを感じる。彼が呼んでいるような気がする。今、そばに行かなければきっと後悔するような…

 それきり二人は黙った。
 不意に途中で‘梅’は高速を下りた。そして、町を走りぬけ、仙台駅へ滑り込む。

「さぁ、今度は新幹線に乗るよ」
「…はい」

 明らかに駐車場ではない道路脇に車を停めて、二人は走るように構内へ向かう。慌てて切符を買ってホームへ出ると、すぐに新幹線がホームに入って来た。えええっ? と驚くようなギリギリの分刻みの勝負だったらしい。高速をあんなに飛ばした意味がやっと分かった。 

 座席に就いてほっとしたとき、不意に奈緒は思い出す。

「あ、あの車は…」
「ああ、然るべき処置をしてくれる人物に頼んでおいたから大丈夫だよ。店まで届けてくれるだろうよ」
「そうなんですか」

 ほっとして奈緒は外の景色を眺める。車窓に映る車内の人々の中に、不意にローズの顔が浮かび上がった気がしてどきりとする。

 ローズ…?

 彼の顔が蒼白に、苦痛に歪んでいる気がして、奈緒はいても立ってもいられない気分に陥る。横を見ると、店主は携帯電話を操作して、誰かと連絡を取っているようだった。

 その横顔がいつもより厳しい表情に見えて、奈緒はなんだか、益々暗澹とした気分になっていた。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


そういえば、「チェリー・・・」って、言っていましたよね。ね。何が・・・

スミレはローズの事を把握しているのでしょうか。

ヴィンテージ・カーで高速をブンブンとはカッコ良い~~
でも、そのかっこよさとは裏腹に、事態は急を要している様子・・・?

奈緒ちゃん、何が起きてもしっかりね(祈)
ドラえもんのポケットも預かったし・・・

龍ちゃん一族の歴史を知りたい・・・
#1615[2012/02/13 20:01]  けい  URL 

けいさまへ

けいさん、

> そういえば、「チェリー・・・」って、言っていましたよね。ね。何が・・・

↑↑↑恐らく、その瞬間に、奈緒ちゃんがその場に間に合っていた…のかな?
或いは、幻を見たのか?
結局、ギリギリの状態で救いを求めた相手が奈緒ちゃんだったんであろう。
ああああ、言葉にしたら、ああ、だから…という現実が見えた。
求められたから。
これ以上語るとヤバイんで、ちょっと静かに静かに…

> ドラえもんのポケットも預かったし・・・

↑↑↑これ、恐ろしいことに、この時点では何が入っているのかfateも知らなかった!!!
良いのか、そんなことでっ!!!

> 龍ちゃん一族の歴史を知りたい・・・

↑↑↑ぎゃああああああっ
また、そんな反則発言を~~~~
何にも考えてね~~~(^^;
(少しは考えろよ(--;)
ううう、では、外伝を立ち上げてみます…
#1619[2012/02/14 09:07]  fate  URL 

奈緒ちゃん……完全にローズ病ですね。笑。

私も龍ちゃん一族の歴史を知りたい一人です。
末裔か……いい響き。
#1695[2012/02/22 13:23]  ヒロハル  URL 

ヒロハルさまへ

ヒロハルさん、

> 奈緒ちゃん……完全にローズ病ですね。笑。

↑↑↑なにっ、そんな新たな病が蔓延しているのかっ???
それで、地球が滅ぶ…
うおおおおおっ!!!

な、訳ないけど、奈緒ちゃんは今後大変なんです。はい。

し~~~~っ
ヒロハルさんっ
それを口にしちゃ、いけません!
あんなこと↑言っときながら、まだ龍ちゃんの一族の外伝なんて影も形もないんだから!
女神さまに聞こえるだろっ
#1698[2012/02/22 15:05]  fate  URL 

聞こえたっ^^

女神は歴史物好きだったりする^^
#1701[2012/02/22 17:54]  けい  URL 

けいさまへ

けいさん、

ぎゃああああっ
だから、ヒロハルさん、静かに、って言ったのに~~~
(いや、ヒロハルさんのせいじゃね~し…)
#1706[2012/02/23 08:21]  fate  URL 

奇妙な日本独自の一族(@w@
すごい気になるな。

いままでただの仕事をふるだけの存在だった松竹梅の店主まで動き出しましたね。
ううーん・・・・なんか動きがあわただしくなってきました! これ、時間おいたらついてけなくなりますね>w< 悔しいけど今日はここまで>w<
#1792[2012/03/03 13:35]  あび  URL 

あびさまへ

あびさん、

> 奇妙な日本独自の一族(@w@
> すごい気になるな。

↑↑↑はい、いろんな方々に突っ込まれまくっておりますが、実はfateにも把握出来ておりません(--;
いったい、どんな怪しい一族やら…

なんだか、一気にあわただしくなって、一気に不穏な空気に巻き込まれていきます。
でも、いや、実際たいしたことはやってないんですけどね(^^;
#1798[2012/03/04 09:37]  fate  URL 














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