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Stories of fate


花籠 4

花籠 4 (序曲) 16

 その夜、ジャスミンが夕食を終えた頃に不意にアカシアから呼び出しを受けた。彼が家を出るとき、母も李緒ももう寝る支度をしていたように見えた。ジャスミンはいつでも出かけられる用意はしてあったが、さすがに二人を置いて出掛けるのはちょっとイヤだな、という思いがあった。父の不在はいつものことでも、今回は、いつもと状況が違う。出来れば、面倒な依頼は他のメンバーに譲り、早々に切り上げて帰ってきたい気がしていた。
着いてみると、いつものその隠れ家に、アイリスの姿はなく、‘竹’の店に行くように指示を受け、ジャスミンは声をあげた。

「え? …俺、一人ぃ?」
「そうだ。」
「なんで?」
「用があるのはお前だけなんだろ。」
「ええ~?」

 いつになく渋るジャスミンに、アカシアは一瞬沈黙し、ついと視線をそらして告げた。

「アイが、行方をくらました。連絡が取れない。」
「…え?」

 思わぬ報告に、しかしジャスミンは表情を変えずに、すとんと声のトーンを落として聞いた。

「それって、アイちゃんが自分でいなくなったってこと?」
「ああ。」
「いつ?」
「牡丹を襲った犯人の目星がついたという情報がまわってきた後だ。」
「…敵討ち?」
「そんなことはせんだろう。しかも、相手は単なる頭のおかしい一般人らしい。」
「ま、ね。」

 ジャスミンはにこりと彼を見つめる。

「もっとヤバイことに首を突っ込んでそうだね。そもそも、牡丹がなんで狙われたんだろうね?」
「…お前もそう思うか?」

 にこり、とジャスミンは再度懐っこい笑顔を見せる。

「あの子は、実はハッカーやってたんでしょ? 恐らく、あの後も。何かヤバイ情報引っ掛けたのかもね。」

 そして、彼はちょっと暗い目をして呟く。

「俺が、李緒ちゃんの事件を調べてくれって頼んだりしたから、あれが引き金だったんだろうね。…悪かったな。あの子は、ずっとそんな行為、忘れていたのに…思い出させちゃったんだろうな。情報を覗くスリルを。」
「お前のせいじゃない。」
「俺のせいだよ。」

 ジャスミンは妙に深い憂いを湛えた瞳で微笑む。

「アイちゃんもそれを追ったのか。」
「分からん。だが、とにかくお前は‘竹’と連絡を取ってくれ。」
「うん、分かった。」

 答えた次の瞬間には、ジャスミンは扉から消えていた。ふわりと風が舞ったような気配だけを残して。

 ジャスミンが去った後、アカシアは彼がすでに受けていた独自の仕事先へ向かう。それは牡丹の病院だった。彼が何らかの情報を掴んでいるらしい。それが、牡丹が狙われたもう一つの理由と思われた。


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~ Comment ~


チームの4人が今は一人一人に・・・
総動員なのでしょうか。緊迫します。

ジャスミンは、身は軽くても、気はどうなのかな。
アカシアは何を見つけに行くのかな。

まだまだジグソーパズルはばらけていますね。


#1553[2012/02/07 19:38]  けい  URL 

けいさまへ

けいさん、

> チームの4人が今は一人一人に・・・

↑↑↑おおお、言われてみればそうだ!(何故、指摘されるまで気付かん!(--;)

> 総動員なのでしょうか。緊迫します。

↑↑↑ううむ、どうだろう?
あんまり緊迫感なく、えっ? 終わり? って言われたらどおしよおおお・・・

こういうミステリー/サスペンスものって描けないよぉぉぉぉっ
なんか、なんじゃこれ? って結果になりそうで、今から笑って誤魔化しておきます(^^;

牡丹ちゃんは、いろいろマズイ世界に手を出しちゃってるんですな~
#1561[2012/02/08 08:35]  fate  URL 














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