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Stories of fate


下化衆生 (R-18)

下化衆生 (甘美なる闇の中へ) 2

 美久の中の‘遼一’は、そういう存在ではなかった。人物評としても、抱くイメージとしても、そして、対人関係の対象としても。

 彼は、常に皆を公平に平等に大切にする人だったし、美久も、友人として彼を好きだった。そして、頼れる相手として尊敬もしていた、と思う。あまり、彼を意識したことがなかったので、分からないが、少なくとも、美久を今こんな風に陵辱するような男ではない。筈だった。

 美久の叫びに、相手はどこか躊躇したのだろうか。ふっと動きを止めて気配すら消してしまった。

 縛られた両手首が、もがいたせいでうっ血しているような気がする。縛られた部分も痛みがあり、足首に至っては金属の感触だ。もがく度に鎖の擦れ合うような音が響く。ぞくりと背筋が粟立った。

「…り…りょ…いち?」

 恐る恐る美久は声を掛けてみる。ここにいるのが、本当に彼女が思っている人物なのか分からない。その恐怖と心細さで美久は泣きそうだった。
 しばらく待ってみたが、相手は答える気がなさそうだ。

「りょ…」
「そうだよ。」

 突然、耳元に息がかかる。ぎょっとして美久は身体を強張らせた。

「どうしてここにいるのか、覚えてないの?」

 むしろ、憐れむような声だった。

「…え…と…」

 微かな頭痛を思い出し、美久は一番ありそうなことを答える。

「飲んでた…の?」
「らしいね。」
「…あ、そう…。その、ええと…いつもの店で?」

 言い掛けて、いつものメンバーの顔を思い浮かべようとして、不意に割り込んできた顔に、美久ははっとした。

「あ…っ」

 思い出した。何故、こんな事態に至ったのかを。

 遼一は美久の目をふさいでいたアイマスクをそっと外した。突如、光に触れた美久の瞳は、一瞬眩しさにくらんだ。ゆっくりと目を開けると目の前にまぎれもなく遼一の顔があった。

 不思議に妖しさをたたえ、ぞっとするほど冷えた瞳で美久を見下ろしている。

「言ったでしょう? 俺を怒らせるからだよ。」

 にこっと遼一は言い、美久は、その声と裏腹な遼一の冷たい瞳に、全身がぞうっと凍りつくのを感じた。


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[恋愛:エロス:官能小説

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