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Stories of fate


花籠 4

花籠 4 (襲撃) 6

 しばらくうなだれている様子だった彼女は、不意に顔をあげ、すっと立ち上がった。ふわりとスカートの裾が揺れ、朝日を浴びた彼女の姿が白い彫像のようにその場で光を照り返す。

「ありがとう、アカシア。…連絡事項は分かったわ。私は今日はもう帰って良いわよね?」
「…お前も気をつけろ、アイ。相手がまだ不明だ。恐らく仕事とは関係ないと思うが、気をつけるに越したことはない。」

 扉に向かったアイリスは、小さく振り返って頷いた。

「私は大丈夫よ。それより、牡丹の容態もだけど、花篭から詳細の連絡が入ったらいつでも良いから教えて。」
「ああ。」

 アイリスを見送って、男二人には重い空気だけが残された。

「花篭が訓練を推奨しないのは、特技が特殊に片寄っているメンバーが、出来るだけ普通の生活を望んでいるからでもあるんだ。」

 アカシアはジャスミンにというよりは、独り言のように口を開く。それは、説明されなくてもジャスミンにも分かっていた。だから、彼はただ、うん、と相槌をうつ。

「だが…俺らのような仕事を請け負うメンバーは、今後、必須だな。今回は単なる通り魔かもしれない。しかし、仕事絡みで恨みを買う確率がぐんと高くなる。身を守る術は必要だ。」

 特にあの子は、とアカシアは思った。牡丹は我が身を守るよりも、‘蛇’を守ろうとして死ぬところだったのだ。その優しさが、今後、仕事に影響しないとは限らない。

「まぁ、アイリスは特に攻撃技は必要ないだろう。あいつの身体には至るところに毒針が仕込める。不用意にあいつに触れようものなら、下手な自殺を図るより致死率が高い。それに、いざってときの逃げっぷりは見事だ。」
「でも、基本の訓練だけでも受けた方が良いよ。せっかく親父も日本にいるんだしさぁ。」

 何気なくジャスミンは言い、ああ、と頷いたアカシアは、一瞬の間を置いて、彼の言葉に「え?」と硬直する。

「ななな、なにっ?? ‘黒椿’が日本にっ???」
「うん。」

 と、ジャスミンはにこりとリーダーを見上げる。

「いつから?」
「ええとぉ…」

 ジャスミンは眉をひそめる。

「桜が散る頃…? ああ、そうだ、李緒ちゃんのところから帰った朝だから、ほら、スミレが李緒ちゃんを連れてきたことがあったじゃん? その辺り。」
「えええっ? そんな前からずっとぉ?」

 ジャスミンは、うん、とにこにこと彼を見つめて微笑んだ。

 帰宅後、椿はほとんど家から出なかったし、恐らく所在を知っているのは花篭とスムリティ本部の幹部の数名のみであろう。一時期、目撃情報が出回ってしまった彼は、日本で仕事を請け負うことを休止し、花篭の旧友であり現在スムリティ幹部の悠馬の誘いで海外へその本拠地を移していた。現在は花篭と悠馬が立ち上げた訓練施設で、教官と、幹部の護衛をしている。

 今回、‘黒椿’は休暇を取って帰郷中で、自宅でのんびりしているのである。

 それ自体は珍しいことではない。もともと一年に一度くらいは彼も帰宅していた。それが今回は3月に帰ってきて以来、すでに2ヶ月が経過しているのである。

「何か…あったのか? いや、何かあるのか?」
「さあ?」

 ジャスミンは肩を竦める。

「もしかして、花篭が呼んだのかもね。」
「何も聞いてないのか?」
「話すような人じゃないよ、知ってるでしょ? 単に休暇なのかも知れないしね。」
「…なんだか、イヤな感じがするな…」

 アカシアは呟くように言った。

「このタイミング、か?」
「たまたまかもよぉ?」
「…なら、良いけどな。」

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


アイリス、ドッジボールうまいでしょ。
いつも最後にコートに残る一人になっていたのでは?
(また関係ないことを・・・すいません。)

牡丹、良い子だね。ただ、相棒の蛇たちとただ戯れて普通に生活するというのはもう出来ないのですかね。「仕事」で呼び出されたら行かなくては、なのでしょうか。アカシア、今後も牡丹を頼むよ。

椿も狙われている側なんですかね。
ホントに、これから何があるのか・・・
心の準備しときます。。。

あ、お話の書き上げ、おめでとうございます。
突っ込むところは、逝かさないで、なんだけど・・・
#1438[2012/01/28 08:11]  けい  URL 

けいさまへ

けいさん、

> アイリス、ドッジボールうまいでしょ。
> いつも最後にコートに残る一人になっていたのでは?
> (また関係ないことを・・・すいません。)

↑↑↑おおおおっ、そ、そうなのかっ
スゴイじゃん、アイリス!
なんか、こ生意気で、涼しげな顔で残っていそうですなっ(^^)

> 牡丹、良い子だね。ただ、相棒の蛇たちとただ戯れて普通に生活するというのはもう出来ないのですかね。「仕事」で呼び出されたら行かなくては、なのでしょうか。アカシア、今後も牡丹を頼むよ。

↑↑↑はい、大丈夫でしょう。(ほんとか?)
アカシアはほぼ雑用係になって皆の面倒みているので~(^^;

> あ、お話の書き上げ、おめでとうございます。
> 突っ込むところは、逝かさないで、なんだけど・・・

↑↑↑散々ヒトゴロシを予告しといてなんですが、実は…
ああ、まぁ、良いです(^^;
明後日以降、2~3話ずつの更新で進めればなぁ、と思うのですが、何分、加筆もまだやってるので微妙です(--;
でもでも、ありがとうございます。
読んでくださる方がいるとテンションあがります~(^^)
#1444[2012/01/28 09:40]  fate  URL 

この話は、まとめて読むとかなりおもしろいです♪
なんだろう、思った以上に響いてくるものがありますね。表情とかそういうところは完全に想像では補えませんが、でもなんか良いように解釈してしまいますw
更新速度すごいですよね!小織にも見習わせたいです。
#1446[2012/01/28 18:37]  結 麻月  URL  [Edit]

結 麻月さまへ

結 麻月さん、

うっひゃああああっ、そ、そんなっ
そうですか?
へへへへ、嬉しいです(^^)

> 表情とかそういうところは完全に想像では補えませんが、でもなんか良いように解釈してしまいますw

↑↑↑ううむ、なるほど。そういう描写をあんまり入れないからのぅ…
ちと気を付けてみたいと思います。ありがとうございます。が、ご想像で恐らく合ってます!!!

> 更新速度すごいですよね!小織にも見習わせたいです。

↑↑↑いえっ、それはちゃいまっせ。
fateは暇なんです。バリバリの営業マンにそれは無理っす。
出来れば、小織さんには出張の雑記記事なんかもお願いしたいなぁ! 生の外国って大変興味あります(^^)
#1451[2012/01/29 08:30]  fate  URL 

椿は、もう2カ月も、ほとんど外出せずに、可愛い奥さんとまったり・・・。
二人でまったり・・・。
いかんいかん、そんなことばかり想像しては。

けいさんの、
>アイリス、ドッジボールうまいでしょ。

に、爆笑。ナイスです。そんなん思うのはけいさんだけ~。

しかし、椿はきっと、奥さんとまったり♪するためだけに戻ってきたんじゃないようですね。
特別な任務か。

いや・・・ほんとにまったりする為なのか!
#1520[2012/02/04 14:40]  lime  URL  [Edit]

limeさまへ

limeさん、

ありがとうございます。
言われてみりゃ、そうだ。こいつらは2カ月も二人で何やってたんだろう…

> けいさんの、
> >アイリス、ドッジボールうまいでしょ。
>
> に、爆笑。ナイスです。そんなん思うのはけいさんだけ~。

↑↑↑ええ、はい。いえ、…はい。
実は、ちょっとびっくりしました(・・;
「…ほえええ?」
としばし固まっておりましたが、…そ、そうか。うまいのか…とfateもなんとなく納得いたしました。
見が軽いから、きっと最後まで生き残るタイプだったであろう…

> いや・・・ほんとにまったりする為なのか!

↑↑↑まぁ、…はははは。
外伝描いたときは、単にまったりするつもりでした。
それが‘4’に進んだ途端、実は…となっているこのいい加減さ(--;
#1522[2012/02/05 08:19]  fate  URL 














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