椿が率いる暗殺者集団は、今、訓練施設からどんどん卒業生を出し、ある程度の人数を確保できるまでに成長していた。劉瀞の護衛として傍に仕えている庸も、その中で訓練を受けた精鋭だった。
日本のみならず世界各国から人材を集め、この地で訓練して『花籠』に登録し、然るべき派遣先へ送る。仕事は殺しとは限らない。現在ではむしろ、優秀な護衛の要望が高まっている。
そのプロジェクトが花篭とスムリティ本部の一部の幹部とで秘かに進行していた。その情報はまだいくつかある支部にも秘密裏に進められているので、当然、劉瀞も知らないことである。
初めは椿とほんの数人のプロが呼び寄せられてアジアの奥地、この小さな離島での教育・訓練が開始された。椿は、スムリティ本部の幹部たちの護衛も兼ねていたため、当初はかなりの負担だった。お陰で、一年に一度程度しか家に帰れない期間が十年近く続き、そろそろキレそうになっていたところだ。
今では当然、教官は椿のような殺し屋だけではなく、あらゆるプロが常駐している。
そして、効率良く訓練生を手に入れるべく、花篭はスムリティの日本支部の劉瀞へ打診を始めた。本部からの強制的な指示ではなく、あくまで『花籠』からの依頼として受けてもらおうと対等な取り引きを申し出たのだ。
スムリティは本部と支部はそれほど緊密ではなく、それぞれ独自の路線をいっている。国の事情が様々なので、支部のトップに大抵のことは任されているのだ。つまり、トップに寄って、まったく違った組織の様相を呈している、と言っても過言ではない。
中東に行くと、どうもテロ集団に近い事態に陥っていたりもするし、貧しい国では、子ども達の保護というよりは、生活支援のような事業を主としている国もある。資金は本部である程度の援助をしているのだが、それぞれに利益をあげる事業を展開する必要がある。
日本支部は、ほぼ、子ども達の保護施設の色合いが強い。興している事業もそれほど裏の世界と関わりはない。まっとうな仕事を主として、子ども達の保護に全力を挙げているので、有事の際は『花籠』に頼る必要性が出てくる。スムリティの子ども達の中にも、体力・知力などの総合を判断され、日本で簡易的な訓練を施されて活躍している人材も何人かは存在している。しかし、その人選は劉瀞に一任されているのだ。そして、彼は子ども達を、出来ればあまりそういう世界に関わらせたくないと考えている。
花籠は登録制の何でも屋組織である。人材は多いほど良い。今、こうやって世界に手を伸ばし始めた龍一にとって、スムリティ日本支部の人材は魅力的だった。
花篭龍一。
しかし、この人物に直接会ったことのある人間はほぼ皆無だ。
大抵、電話やメールでやり取りがされ、花籠が派遣した人間と交渉し、契約を締結する。声色からだいたい40代くらいでは? という判断が出来るのみで、実はもっと若いかも知れないし、老人かも知れない。その容貌も人となりも実は誰も知らない。年齢も出身地も然り。恐らく日本人であろうことだけが辛うじて周知の事実である。
日本のみならず世界各国から人材を集め、この地で訓練して『花籠』に登録し、然るべき派遣先へ送る。仕事は殺しとは限らない。現在ではむしろ、優秀な護衛の要望が高まっている。
そのプロジェクトが花篭とスムリティ本部の一部の幹部とで秘かに進行していた。その情報はまだいくつかある支部にも秘密裏に進められているので、当然、劉瀞も知らないことである。
初めは椿とほんの数人のプロが呼び寄せられてアジアの奥地、この小さな離島での教育・訓練が開始された。椿は、スムリティ本部の幹部たちの護衛も兼ねていたため、当初はかなりの負担だった。お陰で、一年に一度程度しか家に帰れない期間が十年近く続き、そろそろキレそうになっていたところだ。
今では当然、教官は椿のような殺し屋だけではなく、あらゆるプロが常駐している。
そして、効率良く訓練生を手に入れるべく、花篭はスムリティの日本支部の劉瀞へ打診を始めた。本部からの強制的な指示ではなく、あくまで『花籠』からの依頼として受けてもらおうと対等な取り引きを申し出たのだ。
スムリティは本部と支部はそれほど緊密ではなく、それぞれ独自の路線をいっている。国の事情が様々なので、支部のトップに大抵のことは任されているのだ。つまり、トップに寄って、まったく違った組織の様相を呈している、と言っても過言ではない。
中東に行くと、どうもテロ集団に近い事態に陥っていたりもするし、貧しい国では、子ども達の保護というよりは、生活支援のような事業を主としている国もある。資金は本部である程度の援助をしているのだが、それぞれに利益をあげる事業を展開する必要がある。
日本支部は、ほぼ、子ども達の保護施設の色合いが強い。興している事業もそれほど裏の世界と関わりはない。まっとうな仕事を主として、子ども達の保護に全力を挙げているので、有事の際は『花籠』に頼る必要性が出てくる。スムリティの子ども達の中にも、体力・知力などの総合を判断され、日本で簡易的な訓練を施されて活躍している人材も何人かは存在している。しかし、その人選は劉瀞に一任されているのだ。そして、彼は子ども達を、出来ればあまりそういう世界に関わらせたくないと考えている。
花籠は登録制の何でも屋組織である。人材は多いほど良い。今、こうやって世界に手を伸ばし始めた龍一にとって、スムリティ日本支部の人材は魅力的だった。
花篭龍一。
しかし、この人物に直接会ったことのある人間はほぼ皆無だ。
大抵、電話やメールでやり取りがされ、花籠が派遣した人間と交渉し、契約を締結する。声色からだいたい40代くらいでは? という判断が出来るのみで、実はもっと若いかも知れないし、老人かも知れない。その容貌も人となりも実は誰も知らない。年齢も出身地も然り。恐らく日本人であろうことだけが辛うじて周知の事実である。
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紺碧の蒼

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真紅の闇

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黄泉の肖像

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『花籠』シリーズ・総まとめ編

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花籠

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花籠 2

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花籠 3

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花籠 4

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花籠 外伝集

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儘 (『花籠』外伝)

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ラートリ~夜の女神~

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光と闇の巣窟(R-18)

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蒼い月

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永遠の刹那

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Sunset syndrome

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陰影 1(R-18)

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陰影 2

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虚空の果ての青 第一部

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虚空の果ての青 第二部

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虚空の果ての青 第三部

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虚空の果ての青(R-18)

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アダムの息子たち(R-18)

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Horizon(R-18)

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スムリティ(R-18)

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月の軌跡(R-18)

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ローズガーデン(R-18)

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Sacrifice(R-18)

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下化衆生 (R-18)

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