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Stories of fate


花籠 3

花籠 3 (花の宴) 21

 スミレは少し揺れていた。

 この子は、自分の置かれた立場を分かっている気がした。だからこそ、さっき言ったのだ。「最後に」と。或いは命を賭けて「ジャスミンに会いたい」という願いを叶えたかったのだろうか。
 それは麻薬のような‘恋’の仕業なのか、もっと大きな意味があったのか。どこに辿り着くにしろ、そこに狂気の花が鮮やかに咲く様を、その結末を見てみたいような気がした。

「会わせてやるよ。」

 スミレは‘竹’に向かった。メンバーの所在を分かっているのは彼くらいだ。教えてはくれなくても、連絡は取れるだろう。

「え…っ?」

 それでも半分は信じていなかったのだろうか、李緒は驚いてスミレを見つめた。

「ほんとに…」
「本当だよ。」

 李緒はゆっくりと瞳が輝き出し、笑顔がぱああっと光った。それは傍で見ていてもくっきりと分かる変化で、スミレはそんな風にこの子を変えうるジャスミンに興味を抱く。

 会ったことはある。だが、顔を見たことがある程度で、話したこともほとんどない。訓練施設で何度か一緒だったかも知れないが、彼は父親が直接の師匠であるため、基礎訓練程度しか受講していなかったと思った。なんとなく印象にあるのは、まるで人間ではないような身の軽さだった。蝶が舞い飛ぶような、剣を使った舞を踊っているような見事な身のこなし。ぞっとする程美しい優雅で独特な動き。

 確かに彼は、伝説の‘黒椿’の血を引く、その名を継ぐに相応しい後継者であった。
 そんな彼が、こんな子どもに仕事を目撃されたのか?

 スミレは無言で運転を続けながら、遠い過去に思いを馳せていた。この組織に関わることになった、辛い過去の経緯を。

「あの…」

 不意に李緒の声で思考を破られる。

「…なんだ?」
「…あ…いえ、すみません…」

 李緒はどこか落ち着きをなくしていた。視線がさだまらずにフロントを見つめた次の瞬間には自分の手に視線を落としてみる、両手を握り締め、その指を何度も組みなおしてみたり。今まで、どれだけ不穏な空気の中にいてもまるで動じる様子はなかったのに、とスミレは不可解な生き物を眺めるように横目で彼女を観察する。

 もう会えないと言われた。そして、それを彼女も理解していた。
 それなのに、会いに行って、迷惑を掛けて良いのだろうか。
 嫌われてしまうかも知れない。
 会えるかも知れないと分かった途端、李緒は不安になってきた。

「あの…」
「なんだ?」

 多少イライラしてスミレは返事を返す。女という生き物はどうして、こう煮え切らないんだ? 言いたいことがあったらはっきり言え。
 声に苛立ちが混じっていることを感じたのだろう。はっとスミレの横顔を見つめて、李緒は言葉を紡ぐ勇気を失った。

「…いいえ。」

 迷惑だとはっきり言われたら。
 ずきん、と心臓が痛んだ。
 そこで、彼女の生きてきた意味は途切れてしまうかも知れない。

「おい、お前。」

 スミレは努めて静かに言う。

「お前が会いたいと言ったんだ。潔く会いに行け。そして、相手の返事を聞け。それがどんな答えであろうと、そうしないとお前はこの先、どこへも行けないんだろう?」

 何故、そんなことを言ってしまったのか。始末する筈の相手に。

 それはきっとここしばらく、ローズと奈緒を見てきたからだ。二人の絆を見つめてきたからだ。それまで、考えたこともない関係性を。

 そして。
 せめて、恋する相手の手で送ってやりたいと、どこかで考えてしまったのかも知れない。

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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


やきもき

今日はひとつアップされたんですね!この焦らされ感><
でも「始末」の方向性がちょっと変わってきたのでひとまず安心しています。いや、根本は変わってないようなので油断はしていませんが。

>それは麻薬のような‘恋’の仕業なのか、もっと大きな意味があったのか。
>そこに狂気の花が鮮やかに咲く様を、その結末を見てみたいような気がした。
この表現、すごく素敵ですね~。

そうそう、前のコメントにいただいた返信で……

>お仕事、お忙しそうですね~
>まだ夜中帰宅の生活でしょうか???
ブログに書いていたとおり、ただの風邪なのですが、もともと私、仕事はぜんぜん忙しくないんです。
「忙しくない」っていうのは、主観というよりは日本人的客観視なんですけど。
日本って、1日8時間も労働してるのに、残業してこそ普通、みたいな感じがあるじゃないですか。私はどうも心の底から同意できないんです><
夜中なんてもってのほか、普通に定時帰宅しているんですけど、疲労だけは一人前だよ(主に心的ストレス)というアピールをしたい!
……何言ってんだって感じですよね^^;わけわからないコメントすみません。
夜中帰宅を心配してくださったfateさんの優しさに申し訳なさを感じてしまって、私はそんなに頑張ってる人間じゃないんだーって言いたくなっただけでした。汗
#1285[2012/01/12 13:45]  たつひこ  URL 

リアルタイム・けい、です。ども~。

すみれ殿ー(もう、3連続でこれ)

李緒ちゃんの覚悟をお受け取りくだされ~~
とりあえずは’竹’で時間稼ぎですかね。(ホッ)

李緒ちゃんの緊張感が伝わります。
李緒ちゃんの「迎えに来る」を信じる想いを信じたい。。。
#1287[2012/01/12 13:47]  けい  URL 

Re: やきもき

たつひこさん、

おおお、そうですか。今は定時帰宅されていらっしゃるんですね!
それなら良いです~(^^)
いや、fateもおかしいと思いますよ。仕事は=人生ではないですから。仕事に遣り甲斐をがんがん感じて、生き甲斐の域にしている人もいますが、そういう人は本当にそのために生まれてきたんでしょう。でも、一般の方々は仕事以外に何か楽しみを持った方良いですよ。
そして、きちんと休養されて、遊ぶ。これ大事ですよね~

> 今日はひとつアップされたんですね!この焦らされ感><

↑↑↑ほほほほほ~
っていうか、こんなリアルタイムで追ってくださる方がいらっしゃると思ってなかったので、最後までを予約投稿して、現在‘4’を執筆中です。
これが、なかなか収拾がつかない事態に陥って進まないったら(--;

> >それは麻薬のような‘恋’の仕業なのか、もっと大きな意味があったのか。
> >そこに狂気の花が鮮やかに咲く様を、その結末を見てみたいような気がした。
> この表現、すごく素敵ですね~。

↑↑↑おおおおっ、ありがとうございます。
テンションあがります~
でも、fateはすぐに図にのりますので、お気を付けください…

#1289[2012/01/12 16:17]  fate  URL 

けいさまへ

リアルタイム・けいさん、

> すみれ殿ー(もう、3連続でこれ)

↑↑↑ほんとにねぇ。
fateは基本、女の子にそんなに酷いことはしないよ。でも、スミレはどうか分からんなぁ…

> 李緒ちゃんの緊張感が伝わります。
> 李緒ちゃんの「迎えに来る」を信じる想いを信じたい。。。

↑↑↑李緒ちゃんの緊張感って、ちょっと違くね? って方向にいってるんだよね。
良いのか?
殺されても会いたいのか?

なんて、脅してみたりして~(誰を?)
#1291[2012/01/12 16:29]  fate  URL 

いやあ、分かるなぁ、李緒ちゃんの気持ち。
(何度も言う)
本当に“この人”と思う人に出会えたら、殺されたって会いに行く。
うん。会いにいくよ~~!

そんな人に、会ってみたいなあ(夢見る少女か!)

スミレ、ちょっと李緒ちゃんの心を理解しつつあるのかな。良い奴!

>せめて、恋する相手の手で送ってやりたいと、どこかで考えてしまったのかも知れない。

うう。その結末は見たくないし、そんなことにはならないと思うけど、その美学、Goodです、スミレ!
#1365[2012/01/19 22:25]  lime  URL  [Edit]

limeさまへ

limeさん、

> そんな人に、会ってみたいなあ(夢見る少女か!)

↑↑↑そ、そうか。そんなモンか?
へへへへ~。描いてる割には、あんまり女の子の気持ちって理解してないかも(・・;
こういうのって、読者さまの方が楽にシンクロしてくれるので嬉しいです!
っていうか、これは、人物の勝手な行動で、実はfateも後を追っかけて描写を入れているだけだったりして~

> うう。その結末は見たくないし、そんなことにはならないと思うけど、その美学、Goodです、スミレ!

↑↑↑愛する相手に殺されるとか愛する人を殺すとか、ちょっと究極の美学ですね。
それも、いつかやってみたい…!
(が、恐らく言ってるだけであろう…)
#1367[2012/01/20 08:09]  fate  URL 














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