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Stories of fate


花籠 3

花籠 3 (会合) 18

 スミレは、何やら楽しそうに歩き去って行った二人を切ない瞳で見送っていた助手席の少女を見つめて、ふと疑問を抱く。この子は、いったい何を望んで、何を考えてあんなことを言い出し、そして、ここにいるのだろうか。

「おい、お前…」

 彼の声に、李緒ははっとする。

「ジャスミンに何の用があるんだ?」
「…いえ、…あの、すみません。…もう会えないって言われたのに。お別れを言われたのに、私は、どうしても会いたくて…」

 李緒の目にはあっという間に涙がにじむ。

「いつもいつも…ただ、それだけを考えてしまって…」

 涙を必死に堪えて李緒は俯く。ハンドルに腕を組み、前のめりに体重を預けたまま、スミレは眉をひそめる。

「なんだって、そいつに会いたいんだ?」
「約束を守ってくれたので。」
「約束?」

 李緒は頷く。そして、少し間を置いて今度は小さく首を振った。

「違う。…ただ、会いたいんです。会いたいんです。」

 両手で顔を覆って、李緒は涙を零した。

 逃げようとしないのは、会いたいと言えば会わせてくれると思っているからなんだろうか、とスミレはため息をつく。バカな女だ。特に彼ら4人はこうやって一般の人間に正体を知られてはいけない類のメンバーだ。どうしたって始末はつけなければならない。知られたのは彼らの失敗だったとしても、いちいち報告する必要はないだろう。

 ただ、その始末は奈緒のいないところで、彼女に知られないようにこっそりと行う必要がある。
 奈緒を泣かせたりしては、ローズの機嫌が悪くなるし、スミレも彼女を傷つけるような事態を望まなかった。この世界の非情さを、あまり早くから味わわせたくはなかった。

「お願いです…」

 李緒は嗚咽の下で囁くような小さな声で言った。細い肩を震わせて、まるで無防備なままで。儚く弱く、触れたら壊れそうなのに、その涙の静けさは、空間をまるごと支配するほどの一途な想いが旋律のように鳴り響いている。

「最後に、一目だけでも良いんです。彼に会わせてください。」


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ジャンル:[小説・文学] テーマ:[現代小説

~ Comment ~


ほらほら~~、泣いちゃったじゃん。。。

李緒ちゃん、ジャスミンに会いたいよね。
私も二人が再会したところを見たいよ。

スミレ殿、始末、とか、報告する必要はない、とか、こっそり行う、とか、そんな物騒な・・・

fateさん、貴方だけが頼り・・・
宜しく^^
#1259[2012/01/09 12:14]  けい  URL 

けいさまへ

けいさん、

> ほらほら~~、泣いちゃったじゃん。。。

↑↑↑なんか、李緒ちゃんのことは泣かしてばっかりいる罪深いfateです(・・;

> スミレ殿、始末、とか、報告する必要はない、とか、こっそり行う、とか、そんな物騒な・・・

↑↑↑このグループ(いつの間にグループが?(--;)では、アカシアの役目がスミレなんだろうなぁ。
一番常識ありそう…
でも、fate worldって暴走キャラで成り立っている世界だから(^^;
何気に暴走キャラが気に入っている子は彼らに守られている感あるかもな~
(どんだけいい加減???)
#1260[2012/01/09 14:30]  fate  URL 














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